コラム
【法律のプロが解説】2024年事務年度金融行政方針「実績と作業計画」が公表されました
執筆者プロフィール
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株式会社hokan 法務・コンプライアンス室長/弁護士
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。
都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。
平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。
これまでに「金融機関の法務対策6000講(共著)」「ペット保険の法的課題(慶應大学保険学会)」「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情2024.9.17)」を執筆し、日経新聞(2024.9.4朝刊金融経済面)にもコメントが掲載。
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先日速報を出した金融審議会(WG)の開催直後に金融行政方針の肝となる「実績と作業計画」(https://www.fsa.go.jp/news/r6/20240830/resultsandplans.pdf)が公表されました。特に保険業界を中心に読むべきポイントとして、作業計画を確認したいと思います。
出典:実績と作業計画(https://www.fsa.go.jp/news/r6/20240830/resultsandplans.pdf)
目次
Ⅰ.金融のメカニズムを通じて持続的な経済成長に貢献する
1.資産運用立国に向けた着実な進展等
(2)金融商品の販売会社等における顧客本位の業務運営の確保
【本事務年度の作業計画】
- 「金融事業者リスト」及び「共通 KPI」を公表する(2024 年9月、2025 年2月予定)。「金融事業者リスト」については、「顧客本位の業務運営に関する原則」にプロダクトガバナンスに関する補充原則を追加する改訂案のパブリックコメント(2024 年7月実施)の結果を踏まえて、同リストの見直しを検討する。
- 各金融機関が公表している「顧客本位の業務運営に関する原則」に基づく取組方針に関して、営業現場への浸透状況や実践状況等の観点から、金融機関と対話を行う。
- 外貨建保険の販売等については、直近の苦情発生状況等を注視しつつ、生命保険会社等を対象に、長期の契約継続を前提としたアフターフォローなど、顧客本位の取組みの進捗状況について確認する。
- 外貨建一時払保険や仕組債の販売勧誘・顧客管理等に係る業界規則等への金融機関の対応状況を確認するとともに、外貨建債券や外国株式を含む幅広いリスク性金融商品について、経営陣の関与も含め、プロダクトガバナンス態勢、販売・管理態勢、報酬・業績評価体系について検証する。
- 最善利益勘案義務に係る関係政府令・監督指針等の改正については、パブリックコメントの結果等を踏まえ、施行に向けて対応を進める。
引用元:実績と作業計画 3頁(https://www.fsa.go.jp/news/r6/20240830/resultsandplans.pdf)
【読むべきポイント】
資産運用立国に向けた進展として、外貨建保険にフォーカスが当てられています。特に「生命保険会社等を対象に、長期の契約継続を前提としたアフターフォローなど、顧客本位の取組みの進捗状況について確認する。」とされており、加えて、「プロダクトガバナンス態勢、販売・管理態勢」も見られることとなっていることから、保険会社および保険代理店双方において、アフターフォローに力を入れることが求められます。
II.金融システムの安定・信頼と質の高い金融機能を確保する
2.業態別の課題への対応 (4)保険会社 ① 保険市場の信頼の回復と健全な発展に向けて
【本事務年度の作業計画】
- 保険金不正請求事案及び保険料調整行為事案について、業務改善命令に基づき各社が提出した業務
- 「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」の報告書等を踏まえ、保険会社に対し、顧客本位の業務運営を徹底し、保険市場における健全な競争環境の構築を実現するために、以下の点について、今後、必要な調査・分析を行った上で、監督指針の改正及び業界ガイドラインの策定・改正等を進める。
① 第三者による代理店の業務品質の評価の枠組みの検討
② 保険会社による代理店に対する指導等の実効性の確保
③ 代理店手数料ポイント制度15の適切性確保
④ 保険会社による自社商品の優先的な取り扱いを誘引する便宜供与の解消
⑤ 乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保
⑥ 共同保険のビジネス慣行の適正化
⑦ 企業内代理店の実務能力の向上や自立の支援等
- 保険市場の信頼の確保と健全な発展を図るために、金融審議会において、大規模乗合代理店に対する厳格な規制や保険仲立人の活用促進、企業向け保険市場における火災保険の赤字状況、企業向け保険市場における保険契約者等への不適切な便宜供与の解消等の論点について、具体的な対応を検討する。
引用元:実績と作業計画 60頁(https://www.fsa.go.jp/news/r6/20240830/resultsandplans.pdf)
【読むべきポイント】
監督指針の改正及び業界ガイドラインの策定・改正での対応部分と、金融審議会での対応部分が明確に記載されています。監督指針の改正及び業界ガイドラインの策定・改正では、下記の7点が対象であり、すでに損保協会では第三者評議会の設立や評価指針の骨子案が公表されています。(関連記事はこちら)
① 第三者による代理店の業務品質の評価の枠組みの検討
② 保険会社による代理店に対する指導等の実効性の確保
③ 代理店手数料ポイント制度の適切性確保
④ 保険会社による自社商品の優先的な取り扱いを誘引する便宜供与の解消
⑤ 乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保
⑥ 共同保険のビジネス慣行の適正化
⑦ 企業内代理店の実務能力の向上や自立の支援等
金融審議会では、法改正も視野に入れた検討であり、以下の事項が検討されます。(第一回WGの議論の模様についてはこちらの記事を参照)
- 大規模乗合代理店に対する厳格な規制
- 保険仲立人の活用促進
- 企業向け保険市場における火災保険の赤字状況
- 企業向け保険市場における保険契約者等への不適切な便宜供与の解消等
②保険業界における課題 保険業界における顧客本位の業務運営
【本事務年度の作業計画】
- 保険本来の趣旨を逸脱するような商品開発や募集活動を防止する観点から、引き続き、国税庁と意見交換会等を通して連携を図る。
- 保険代理店ヒアリングの実施や個別の監督事例の共有等を通じて、財務局との連携を一層強化しつつ、保険代理店に対する監督を行う。
- 代理店業務品質評価検討ワーキング・グループへのオブザーバー参加等を通じて、生命保険協会の代理店業務品質評価に関する運営の動向を注視しつつ、同ワーキング・グループでの議論を踏まえ、各生命保険会社に対して代理店管理の高度化に向けた取組を促す。
- 営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢に関し、発見された課題について、生命保険協会における継続的なフォローアップや各社の取組状況を通じて、確認する。
引用元:実績と作業計画 62頁(https://www.fsa.go.jp/news/r6/20240830/resultsandplans.pdf)
【読むべきポイント】
昨年実施された保険代理店のヒアリングが今年も実施されます。また、今年も継続的に生命保険協会の代理店業務品質評価が重要視されています。
ビジネスモデル
【本事務年度の作業計画】
持続可能なビジネスモデル構築に向け、各社の内部管理態勢の高度化も含め、保険会社との対話を実施する。その際、生命保険会社とは、非保険領域のビジネスモデルを含めた経営戦略やデジタル戦略をテーマとし、損害保険会社とは、自動車保険の損害サービス等の事業環境の変化を踏まえた中長期的な課題へのリスク管理の取組み等をテーマとし、対話を行う。
引用元:実績と作業計画 62頁(https://www.fsa.go.jp/news/r6/20240830/resultsandplans.pdf)
【読むべきポイント】
ビジネスモデルについて生損保で異なるアジェンダが設定されることが予定されています。
- 生命保険会社
- 非保険領域のビジネスモデルを含めた経営戦略やデジタル戦略
- 損害保険会社
- 自動車保険の損害サービス等の事業環境の変化を踏まえた中長期的な課題へのリスク管理の取組み