コラム

2026年8月5日
Twitter Facebook LINE

過度の便宜供与の防止、改正監督指針の適用から、もうすぐ1年

改正監督指針の適用から、もうすぐ1年です

2025年8月28日、過度の便宜供与の防止などを盛り込んだ「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正が適用されました。そろそろ1年を迎えます。

監督指針では、保険会社と保険代理店の双方に、過度の便宜供与を防止するための態勢整備が求められています。代理店側にも、判断基準に関する社内規則等の策定、役職員への教育・管理・指導、便宜供与が比較推奨販売に与えた影響の確認・検証、経営陣による評価と対応などが示されました。

生保・損保の両業界でもガイドラインが整備されました

監督指針の適用後、業界団体でも実務への落とし込みが進められました。

生命保険協会は、2025年9月16日に「保険代理店等に対する便宜供与及び出向に関するガイドライン」を策定しました。生命保険会社が代理店等に対して行う便宜供与や出向について、基本的な考え方や留意点を整理し、各社が態勢整備を行う際の参考とするものです。

日本損害保険協会も、2025年9月に「損害保険会社による便宜供与適正化ガイドライン」を策定しました。その後、実際の運用状況を踏まえ、2026年3月版への改定を行い、同年4月1日にその内容を公表しています。

つまり、この1年間で、監督指針という共通の枠組みに加え、生保・損保それぞれの業務や商慣行を踏まえたガイドラインも整ってきました。

各社では、これらを参考に、協賛金、広告費、募集文書の印刷費、研修支援、業務上の支援などについて、社内規程や判断基準を策定してきたと思います。申請・承認手続を整え、便宜供与の管理台帳を作成した方も多いでしょう。

ここまでの1年は、まず規程を作り、運用を始める期間だったといえます。

その社内規程は、実際の案件で使えていますか

そろそろ確認したいのは、作成した社内規程が実際の案件で機能しているかという点です。

協賛金や業務支援について、誰がどの基準で判断しているでしょうか。判断理由は記録されているでしょうか。部署によって判断が分かれた事例や、規程だけでは結論を出しにくかった事例はなかったでしょうか。

また、監督指針が求めているのは、受入れ時の判断に加え、その後の確認・検証です。2025年8月28日に公表されたパブリックコメントでは、比較推奨販売への影響を確認・検証する対象は「便宜供与一般」であることが示されています。当初は過度に当たらないと判断したものについても、その後の販売状況や推奨状況への影響を確認することになります。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/01.pdf

社内規程を作成したものの、検証方法までは決まっていないという会社もあるでしょう。便宜供与前後の販売状況を確認するのか、一定の案件を抽出して推奨理由を確認するのか、現場へのヒアリングを行うのか。自社の規模や業務特性に応じた方法を検討する時期に入っています。

実務上の影響も見え始めています

2026年6月11日に開催された金融庁と日本損害保険協会との意見交換会では、代理店から「損害保険会社から過度な態勢整備を求められている」「業務品質を理由として突然、委託契約を打ち切ると言われた」といった声が寄せられていることが紹介されました。

また、金融庁と財務局が2026年1月以降に行った全国の代理店ヒアリングでは、過度の便宜供与に該当することを理由として、損害保険会社から必要な教育や情報提供が十分に行われず、顧客対応に支障が生じているとの声も確認されています。

こうした実務上の影響を踏まえ、損保協会の改定ガイドラインでは、過度の便宜供与の防止と、代理店に対する日常的な教育・管理・指導とを区別して判断・検証する必要性が明確にされました。損害保険会社には、過度の便宜供与を防止しながら、代理店が体制整備義務を履行するために必要な教育・管理・指導を行うことも求められています。

https://www.fsa.go.jp/common/ronten/202606/05.pdf

過度の便宜供与を避けようとして、必要な商品情報や募集実務の教育まで控えていないでしょうか。反対に、代理店の規模や業務特性を十分に確認せず、画一的な態勢整備を求めていないでしょうか。

こうした境界の問題は、実際に運用を始めて初めて見えてくるものです。

「何が分からないか」を確認するところから

適用から1年を迎えるに当たり、まずはこれまでの運用を振り返ってみることが大切です。

規程のどの部分が曖昧なのか、どのような記録が足りないのか、どの方法で検証すればよいのか、必要な教育と便宜供与の境界をどのように整理するのか。運用を続けてきたからこそ、こうした論点が具体的に見えてきます。

何が分からないのかが分かってくるのは、ここからです。

8月28日を一つの区切りとして、社内規程が現場の実態に合っているか、便宜供与の影響に関する検証を始めているか、必要な教育や情報提供が維持されているかを、一度確認してみてはいかがでしょうか。

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長

2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
Twitter Facebook LINE
1分でわかる
hokan®︎の資料はこちら!

コラム一覧