コラム

2026年10月28日
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損保協会「自己点検チェックシート(2027年度版)」改訂案を読む

2026年10月、日本損害保険協会(損保協会)は「自己点検チェックシート(2027年度版)」の改訂案を公表し、意見公募を開始しました。確定は2027年2月中が目処とされています。

改訂案の大半は設問の統合や字句修正ですが、注目すべき改訂が二つあります。

一つは、2028年3月1日施行の改正内閣府令・監督指針を踏まえた比較推奨販売の設問(No.007)の全面刷新。

もう一つは社会保険料の適切な負担を問う設問の追加です。

改訂案の全体像

自己点検チェックシートは、損保協会の代理店業務品質評価制度において、代理店の体制整備を支え、代理店と保険会社の対話のツールとして「保険会社による代理店指導等を補完する」ものと位置づけられています。毎年度作成され、2027年度版の改訂骨子は次の三つです。

骨子

内容

(1) 法令等改正を踏まえた見直し

比較説明・推奨販売に係る施行規則・監督指針改正(2028年3月1日施行)への対応

(2) 回答傾向を踏まえた設問の統合

各点検項目の「業務規程等の策定」と「募集人の教育・指導・管理」を一問に統合

(3) わかりやすさ向上

Excelの計算設定、募集人ID、選択肢の説明など入力時の説明を拡充

(2)の統合は、両設問の回答傾向(選択肢の割合・組合せ)が類似していたことが理由とされています。

この結果、一般代理店の設問数は最大20問減って139問になります。

統合後は「業務規程等を策定のうえ、募集人の教育・管理・指導を行っている」という一問になります。

規程はあるが研修をしていない、という状態はこれまで部分的に評価され得ましたが、統合後は一問として「できていない」側に寄る可能性があります。

https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2026/pdf/2610_chirashi_03.pdf

規程と教育を一体のものとして運用できているかを、改めて確認しておくとよいでしょう。

なお、点検項目の削減等の見直しに向けた考え方として、損保協会は「①関連する設問との統合(点検項目の削減)」「②設問内容の見直し(点検項目の高度化)」「③設問自体の廃止(点検項目の削除)」の三つの手法を示し、代理店・損保会社の負担感に十分配慮するとしています。
今回は主に①が使われ、比較推奨については②の高度化が行われた、と整理できます。

比較推奨販売の設問はどう変わったか

比較推奨販売の設問(No.2027-007)は、統合ではなく中身ごと書き換えられています。現行は「何をしてはいけないか」を並べた構成でしたが、改訂案は改正後の規制の流れ、つまり明示→比較説明→選別・推奨→記録・検証→改善の順に組み直されています。

https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2026/pdf/2610_chirashi_03.pdf

 

現行(2026年度版)

改訂案(2027年度版)

①

誠実かつ公正に「商品を推奨」

誠実かつ公正に「比較推奨販売を行っている」

②

意向に沿って選別する場合、客観的な基準や理由を説明

あらかじめ取扱保険会社を明示したうえで、判断材料となる情報を提供

③

自店独自の方針で提案する場合、基準や理由を説明

比較説明では比較項目・内容を適切に説明し、判断に必要な情報を包括的に提供。特定商品を推奨する際は比較対象商品の特徴と推奨商品の優位性の根拠を説明

④

比較可能な商品を提案する場合、比較事項を偏りなく説明

意向に沿って選別・推奨する場合、事前に意向を確認し、推奨商品の概要、選別・推奨の基準と理由を説明。合理的かつ具体的な基準に基づき推奨し、求めに応じて他の商品も説明

⑤

誤認のおそれのある表示・説明をしない

記録・証跡の保存期間等を社内規則で定め、適切性を効率的・効果的に確認・検証

⑥

実質的に手数料水準の高い商品へ誘導しない

確認・検証結果を踏まえ、販売方法を見直し・改善

⑦

業務規程等を策定

(削除。⑤で社内規則等による定めを問う形に)

⑧

募集人の教育・管理・指導

⑦として存置

あわせて、一覧シートの「主な着眼点」も改訂されています。現行の「顧客の意向に沿って商品の推奨を行い、かつ、推奨理由や比較内容等を適切に説明しているか」から、改訂案では「顧客が自身の意向に沿った商品を選択できるよう、比較するすべての商品の比較事項を偏りなくわかりやすく説明しているか」と、比較説明そのものの質に軸足が移っています。

基礎情報入力シートのNo.11(推奨販売・比較説明に関する形態)にも、改正府令・監督指針が2028年3月1日から施行・適用される旨の注記と、金融庁の公表ページへのリンクが加えられています。

施行前の点検にどう向き合うか

2027年度版のチェックシートは、2028年3月の施行より前に使われます。損保協会は改訂の趣旨説明で、乗合代理店は改正後の内閣府令の施行日・監督指針の適用日を「待つことなく、可能な限り速やかに体制整備を行い、比較推奨販売を適切に実施されることが望ましい」とする金融庁の考え方を引用しています。

施行前だから未対応で構わない、とは整理されていない点に注意が必要です。2027年度の自己点検は、施行に向けた準備状況を保険会社と対話する場として使われると考えておくのが現実的でしょう。

社会保険料の設問が加わった

https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2026/pdf/2610_chirashi_03.pdf

何が変わったか

「適切な業務(会社)運営」の設問(一般代理店用No.2027-031、自賠責のみ代理店用No.2027-J15)の②が、次のように改められます。

②各法人の根拠法を遵守し、以下を適切に行っている。 ・決算報告書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)を作成している。 ・給与・報酬等の支払いに関し、適切に社会保険料を負担している。

備考欄は「評価指針改正を踏まえた修正」です。決算書の作成という会社法上の基本動作と並べて、社会保険料の負担が「法人として当然守るべきこと」に位置づけられた形です。自賠責のみ取扱代理店も対象である点も見落とせません。

なぜ社会保険なのか

保険代理店と社会保険の問題は、2014年改正前後の委託型募集人の適正化以来の論点です。使用人である募集人の歩合部分を「外交員報酬」として事業所得扱いで支払い、標準報酬から外すといった運用は、社会保険料の圧縮につながります。この点については、契約件数等の実績に応じて代理店が使用人に支払う報酬も標準報酬の対象に含まれる、という整理が通達(平成29年3月28日、年管管発0328第5号・金監632号)で示されているとされています。

https://www.seiho.or.jp/activity/quality/agents/pdf/agency_2.pdf

設問の文言が「給与」だけでなく「給与・報酬等」となっているのは、こうした固定給以外の支払いも対象であることを意識したものと読めます。

生保協会の点検項目との差

生命保険協会の「募集代理店共通自己点検表(一般代理店)」(2026年2月25日版)は、社会保険について既にかなり具体的な確認事項を置いています。たとえば、採用直後からの加入、標準報酬の算定期間(4〜6月)に限って意図的に給与を低く設定しないこと、意図的に社会保険の対象外期間を設けないこと、役務の対価を募集人に直接支払うことで労使双方の社会保険料が圧縮されていないこと、などです。

これと比べると、損保協会の改訂案は一行の確認にとどまります。ただ、生損保を兼業する代理店にとっては、実質的に同じ水準の点検を求められていると考えておくほうが安全でしょう。損保側の一行は、生保側の具体的な確認事項を満たしていれば自然に「はい」と答えられる、という関係にあると整理できます。

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社Hokanグループ 専門役員グループCPAO
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。

 

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