コラム

2026年10月15日
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金融庁・国交省「代理店業務品質評価制度」運用是正要請について

日本経済新聞は、金融庁と国土交通省が日本損害保険協会に対し、「代理店業務品質評価制度」の運用改善を要請したと報じました。
7月には片山金融相が実態調査に着手し、損保による代理店契約の見直し・解除の動きを「非常に遺憾」と述べていました(日経7月3日)。

10月13日付の要請文は、その調査結果を踏まえたものです。

要請文は、別紙で7項目を求めています。以下、特に重要な③⑥⑦を解説します。

別紙③――支援は保険会社自身の義務

③は代理店への適切な助言・支援を求め、※で次のように述べています。

保険会社には、代理店の管理・指導・監督義務があり、このような義務を履行する上で必要な支援を求める趣旨。

保険業法283条により、所属保険会社は代理店が募集で顧客に加えた損害を賠償する責任を負い、委託に相当の注意を払い損害防止に努めなければ免責されません。監督指針II-4-2-1(4)も次のとおり求めています。

保険会社においては、保険募集に関する法令等の遵守、保険契約に関する知識、内部事務管理態勢の整備(顧客情報の適正な管理を含む。)等について、社内規則等に定めて、特定保険募集人の育成、資質の向上を図るための措置を講じるなど、適切な教育・管理・指導を行っているか。

監督指針が求めるのは「育成、資質の向上」です。代理店自身の体制整備(保険業法294条の3)も「規模や業務特性に応じて」扱うとされています(監督指針II-4-2-9(10))。一律の水準を課しながら支援を欠くことは、この枠組みと整合しません。

別紙⑥――取引目標は双方合意が前提

⑥の※には、次の一文があります。

なお、保険会社と代理店間で取引件数等の目標を定めるといった場合には、丁寧な対話の上で双方合意を前提とすること。

この一文が重要なのは、次の3点からです。

  1. 品質と量のすり替えを防ぐ。 一方的な件数目標の未達を理由に関係を見直せば、それは品質評価ではなく量による選別です。監督指針II-4-2-14も、代理店手数料について「『規模・増収率』に偏ることなく、『業務品質』を重視」するよう求めています。
  2. 優越的地位の濫用を手続面で防ぐ。 自賠責証明書の発行権限を付与する損保と小規模代理店との交渉力の差は大きく、一方的な目標と解除の示唆は独占禁止法上の問題となり得ます。合意の過程を求めることで、決め方の段階で歯止めをかけています。
  3. 不適切募集の誘因を断つ。 押し付けられた目標は、顧客の意向よりも件数を優先させる圧力になります。

目標設定自体を禁じるものではありません。しかし「押し付け」ではなく「合意」であることを求めた点に、この一文の意味があります。

別紙⑦――育てることが評価される仕組みへ

経営陣及び本社は、代理店の業務品質向上に向けた取組を促進するため、例えば、代理店の業務品質向上が認められた場合には、営業支社及び役職員の業績評価に適切に反映させる等、営業現場における適切なインセンティブの醸成を図ること。

①〜⑥が禁止・確認事項であるのに対し、⑦は損保のインセンティブ設計そのものに踏み込んでいます。担当者が増収や効率だけで評価されれば、手間のかかる小規模代理店は「整理」の対象になりがちです。⑦は、代理店を育てることを社内の業績として報いることで、この構造を逆転させようとするものです。

なお、⑦の対象は損保の営業支社・役職員の評価であり、代理店手数料そのものではありません。ただ、前述の監督指針II-4-2-14と併せて読めば、品質向上は手数料と社内評価の双方で報われることが想定されていると考えられます。

おわりに

代理店の品質を高める責任は、その代理店を通じてお客様と接している以上、委託した保険会社にもあります。③⑥⑦は、その責任を一方的な目標や解除の示唆をすることは今後方向転換が求められます。

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社Hokanグループ 専門役員グループCPAO
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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