コラム

2026年10月1日
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【速報】金融審議会視聴メモ① 再保険キャプティブ制度、事務局案の骨格と3つの論点

第1回の位置づけ

10月1日、金融審議会「保険制度ワーキング・グループ」第1回が開かれ、再保険キャプティブ制度の創設が議論されました。委員からは事務局の方向性に基本的に賛成する意見が相次ぎ、反対意見は出ませんでした。
本メモでは、事務局案とヒアリングの内容を整理します。

同WGは、8月31日の金融審議会総会で、再保険キャプティブ制度の創設と生命保険のセーフティネット制度の在り方について諮問を受けて設置されました。7月21日閣議決定の日本成長戦略等は、再保険キャプティブ制度創設のための法案を次期通常国会に提出する方向で検討を進めるとしており(資料3-1 p.8)、WGはそれを見据えた検討の場です。

事務局案の骨格

事務局案は、再保険キャプティブを「損害保険会社の一類型」としつつ、元受保険会社を相手方に自社グループのリスクのみを引き受ける特性に合わせて、規制を項目ごとに最適化するものです(p.25)。現状、国内で同じ業務を行うには通常の損害保険業免許が必要で負担が重く、日本企業は米国ハワイ州などに設立しています。

あわせて事務局は、次の3点について意見を求めました(p.27)。税制優遇と元受キャプティブを切り離し、まず再保険キャプティブの規制設計に議論を集中させる狙いと読めます。

名護市要望から何が変わったか

2004年、沖縄県名護市の金融特区での要望に対し、金融庁は「認めることは困難」と回答しました(p.16)。キャプティブが破綻すれば出再した元受保険会社の健全性が損なわれ、影響が全国の契約者に及ぶこと、英独仏にも制度がないことが理由でした。今回は、少なくとも次の点で状況が異なります。

  • 日本企業系キャプティブは累計181社で、2002年当時(26社)の約7倍(資料6 p.4・12)

 

  • 英国が制度化を進め、2027年半ばの施行を予定(資料3-1 p.23)

  • CFC税制の2018年改正等により、税目的でドミサイルを選ぶ意味が薄れた(p.19)

ただし、元受保険会社の健全性という当時の懸念は今も残ります。これが討議の主要論点になりました。

海外制度と英国案

ハワイ、アイルランド、シンガポールでは、最低資本金の水準が日本より大幅に低く、契約者もグループ内に限られるなど、総じて簡素な規制です(p.21–22)。

英国案は再保険に加えて元受も対象とし、一定のグループ外企業も契約者に含める点で、日本の事務局案より範囲が広い設計です(p.23)。

事務局は、元受キャプティブは実例がなく、海外直接付保規制との整合性など論点が多いとして、将来課題としました(p.24)。

ヒアリング

  • 日本損害保険協会(資料4):元受損保を「協業のパートナー」と位置づけ、プロフィットセンター目的の設立を防ぐ制度設計を求めました。財務の健全性、ガバナンスと専門人材、アンダーライティング情報の透明性を重視しています。

  • 三菱重工業(資料5):賠償責任保険でキャパシティ不足が広がり、2026年4月にハワイに再保険キャプティブを設立しました。年約1万件の付保証明発行のため元受契約の維持が必要だったとし、グループ内の保有ビークルであることを踏まえた規制緩和と、元受との役割分担の明確化を提言しています。
  • フォーサイトリスクマネジメント(資料6):国内制度は「必要であり、時機を得ている」とし、キャプティブを「通常の保険会社の小型版」ではなく、企業財務に組み込まれた特別目的のリスク管理会社として規律すべきと提言しました。

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社Hokanグループ 専門役員グループCPAO
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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