コラム

2026年8月10日
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【速報】2026年保険モニタリングレポートを読む④

保険会社の3線管理態勢のモニタリングテーマとして、①企業内代理店の管理、②外部委託先の管理、③生命保険会社の営業職員管理の三つが取り上げられました。

https://www.fsa.go.jp/news/r8/hoken/20260806/01.pdf

三つのテーマはいずれも、管理の「射程」そのものが広がっていることが読み取れます
企業内代理店では自立へ、外部委託先ではサプライチェーン全体へ、営業職員では募集行為の外側へ。以下、順に見ていきます。

1.企業内代理店——評価軸としての「自立」

概要資料(9頁)は、以下のとおり述べます。

企業内代理店は、その特性を踏まえた適切な管理・監督が重要。損害保険会社では、コンプライアンスや内部統制の強化に向けた取組が進められている一方、その実効性向上や業務品質管理の高度化、自立的な業務運営に向けた人材育成・教育支援に課題。 加えて、業務品質評価の充実、特定契約比率規制への対応、監査・点検態勢の高度化にも改善の余地

本文(50頁)は、以下のとおり。

一部の企業内代理店では、実務運営に当たり損害保険会社による支援への依存が見られることから、自立的な業務運営に向けた人材育成や教育支援の強化が課題となっている。

2026年保険モニタリングレポート50p https://www.fsa.go.jp/news/r8/hoken/20260806/02.pdf

「依存」という語が、当局の公表文書に置かれているのは見落とせません。

 

企業内代理店の定義は、明確ではない。

そもそも企業内代理店とは何か。有識者会議報告書(2024年6月25日)は、こう述べていました。

企業内代理店は、損害保険会社の代理店である一方、顧客企業と密接な人的・資本的関係を有しており、その立場が不明確である

多くの国内企業において、こうした保険代理店が設置されていると見られるが、その役割や規模、組織形態は多様であり、各損害保険会社での定義も区々となっており、その分類・整理が統一されていない。(脚注21)

有識者会議報告書 17p

損保WG報告書(2024年12月25日)では、業務内容を含めた記述をしています。

企業内代理店は、保険業以外の事業を営む企業と人的・資本的に密接な関係を有する保険代理店であり、主に同企業を含むグループ企業向けの火災保険や賠償責任保険等の保険契約や、企業グループの福利厚生の一環として、グループ企業の従業員に係る保険契約を取り扱っているとされている。

損保WG報告書 16p

同報告書の実態調査によれば、大手損害保険会社4社が「企業内代理店」として認識している委託先は9,530社。

ただし別紙は、この数字に「各社間で定義は異なっている」と注記していますので、母集団の輪郭が共有されないまま、その管理の実効性が問われている点が気になります。

そのため、まず代理店側において確認すべきは、自社が所属保険会社からどの基準で「企業内代理店」と認識されているかであす。

定義が各社区々である以上、複数社に乗り合っていれば、社によって扱いが異なり得るのも注意が必要です。

 

「あるべき姿」は2年前に示されていた

有識者会議報告書は、以下のように述べていました。

企業内代理店は、保険代理店としての実務能力を高めるとともに、グループ企業内マーケットへの依存をやめ、自立した保険代理店として、保険仲立人や他の保険代理店と公正な競争を行っていけるようになることが重要であり、これが保険代理店としてのあるべき姿である。

有識者会議報告書 17p

損害保険会社による適切な指導・監督によっても、実務能力の向上が図られず、自立も見込めない企業内代理店に対しては、代理店委託の是非を検証することを含め、(略)対応を検討するべきである。

有識者会議報告書 18p

今回の「支援への依存」という指摘は、この提言が2年を経て、損害保険会社の3線管理態勢に対する検証項目として立ち現れたものと読めますが、ここにねじれがあるように思えます。
「人材育成・教育支援」は損害保険会社が提供するもので、その目的は支援からの脱却です。

しかし、支援を受けている実感がある代理店ほど、その支援が止まったときに業務が回るかを点検する意味は大きくなります。

誰が何を代行しているかを業務単位で棚卸しすることが出発点になります。

2.外部委託先——「委託先管理」から「サードパーティリスク管理」へ

委託先への確認手法の高度化、実地確認の実施態勢の整備、再委託先を含む多段階の委託先管理、サードパーティリスク管理の対象範囲や対応態勢について更なる検討の余地が認められた。
2026年保険モニタリングレポート50p https://www.fsa.go.jp/news/r8/hoken/20260806/02.pdf

「委託先管理」と「サードパーティリスク管理(TPRM)」は同義ではありません。前者は業務委託契約を起点とするが、後者は契約形態を問わず、自社にサービスを提供するすべての外部主体を対象としています。

この点は、金融庁が2026年4月3日に公表した委託調査報告書(デロイト トーマツ サイバー合同会社作成)が詳しく述べています。米国・EU・英国の大手銀行・保険会社を対象とした調査で、レポートも脚注48(29頁)でこれを参照している。同報告書は、原則としてすべてのサードパーティを管理対象とし、リスクベースで軽重を付けるのが海外の主流だとしたうえで、「重要なサードパーティ」として定義されている先は「各社いずれもサードパーティの母集団全体の1%10%程度、サードパーティ数では数十社数百社程度」であったと報告しています。

そして保険代理店にとって重要なのは、同報告書が保険業界固有の論点として代理店・ブローカーを扱っている点です。

そのうえで、契約者情報にアクセスする代理店・ブローカーについては、脅威インテリジェンスによるモニタリングの対象に含めたり、「TPRMの管理対象範囲を代理店にも拡張している事例」もあったとし、本邦保険会社への示唆として、「TPRMの取り組みを部分的に代理店・ブローカーの管理にも拡大するハイブリッド型の管理は一案」と述べています。

つまり保険代理店は、募集管理態勢の枠組みで評価される主体であると同時に、保険会社の情報リスク管理の枠組みにおける「サードパーティ」としても評価されうる立場ということです。

なお本文は、

外部委託先に対する確認・管理については、委託先・保険会社双方の負担や実効性の観点も踏まえ、業界横断的な取組の検討も重要な課題となっている。

2026年保険モニタリングレポート50p https://www.fsa.go.jp/news/r8/hoken/20260806/02.pdf

として、確認する保険会社と、複数社から同様の確認を受ける委託先の双方に負担が生じることから、業界横断的な取組の検討にも言及しています。

上記調査報告書も、海外では業界共通の質問票テンプレートや評価結果を共有する枠組みが利用されていることを紹介しており、この方向は既に具体像を持っているといえるでしょう。

 

3.営業職員——管理の射程は「募集行為」の外へ

3線管理の章(51頁)は、営業職員の活動管理、高リスク職員への対応、再発防止策、不適切な募集行為に着目したモニタリングについて「取組状況に差異が見られた」とします。

この指摘は、レポートの他の箇所と合わせて読むと輪郭がはっきりしてきます。

「Ⅳ.1.営業職員管理態勢の高度化」(32頁)は、生命保険協会の「着眼点」に基づく取組が一定程度浸透していると評価したうえで、

不適正事象の類型が多様化・複雑化していることを踏まえると、これまでの取組のみでは十分とは言えず、不適正事象の予兆検知及び未然防止に係る取組の一層の高度化が求められる状況にある。

2026年保険モニタリングレポート32p https://www.fsa.go.jp/news/r8/hoken/20260806/02.pdf

「予兆検知」という語が使われており、事後の処分と再発防止から、事象が起きる前の兆候の把握へ、という移動(フォワードルッキング)が見て取れます。

さらにすでに速報で述べた通り、「Ⅴ.2.最近の不祥事案への対応」(48〜49頁)は、営業社員等による不適切な金銭の取扱い事案について、次のように整理しています。

こうした事案について、形式的に保険業務外の行為として整理するのではなく、生命保険会社の営業活動を通じて構築された顧客との関係性を背景として発生したものとして捉え、内部管理態勢や牽制機能の強化、不適切な行為の未然防止・早期発見に向けた取組の充実が重要である。

2026年保険モニタリングレポート48~49p https://www.fsa.go.jp/news/r8/hoken/20260806/02.pdf

これは管理の射程に関する記載です。 保険募集の外側で起きた金銭事故であっても、その関係性が営業活動によって形成されたものである以上、管理の対象から外さないとされています。

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社Hokanグループ 専門役員グループCPAO
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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