コラム

2026年1月15日
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「企業のリスクマネジメントの高度化に向けた検討会」を追う①

保険業法改正とあわせて、企業(保険契約者)側のリスクマネジメント能力の向上についての議論が進んでいます。

今回は、1/13に公表された「「企業のリスクマネジメントの高度化に向けた検討会」(第1回)議事要旨及び資料」(https://www.fsa.go.jp/singi/riskmanagement/siryou/20251210.html)を読みます。

1 事務局資料

本検討会の趣旨とリスクマネジメントの高度化が求められる背景がまとめられています。

https://www.fsa.go.jp/singi/riskmanagement/siryou/20251210/01.pdf

 

2 損保協会資料

損保協会からは、業界共通のリスクマネージャー育成講座の立ち上げや新しい資格制度の発展などについて損保業界における取り組みが報告されています。

https://www.fsa.go.jp/singi/riskmanagement/siryou/20251210/02.pdf

 

3 各社からの報告

コカ・コーラ、旭化成、BCGからの報告資料が掲載されています。特に旭化成の企業から見た日本の損害保険市場に関する見え方は非常に参考になります。

企業側からすると、日本の保険会社のキャパシティ縮小は大変ショッキングな出来事であり、今後も海外にキャパシティを確保に行く流れがうかがえます。

https://www.fsa.go.jp/singi/riskmanagement/siryou/20251210/04.pdf

意見交換でも以下のようにまとめられています。

  • (保険キャパシティと代替リスクファイナンス)
    • 直近2~3年で保険キャパシティは大幅に縮小している。また日本の保険料水準は海外より依然低廉であり、日本企業は更なる保険料上昇を覚悟する必要がある。
    • こうした状況に日本企業が対応するためには、リスク移転及び保有手段の多様化が必要であり、海外直接付保やキャプティブ活用のための規制緩和も検討するべきではないか。
    • さらに、保険に限らず、キャットボンドなど他のリスクファイナンス手法の検討も重要である。
    • しかし、こうした日本企業の動きに対し、保険会社の協力姿勢には濃淡があり、全面的な支援を得ることは課題となっている。

 

また、BCGの報告はリスクファイナンス市場の創出、新しいプレイヤーの参入を促すものと思われます。

https://www.fsa.go.jp/singi/riskmanagement/siryou/20251210/05.pdf

 

4 意見交換

以下の部分が(特に政府による啓蒙活動とある点など)今後の当局側の問題意識として感じられます。

  • (日本企業のリスクマネジメントの現状と課題)
    • 日本企業は、リスクの把握・評価・分析が企業文化として十分に成熟していないと指摘されることがある。
    • また、工場の老朽化や熟練工の減少による人材不足が事故増加を招き、その結果、保険料が高騰している。
    • さらに、企業から損害保険会社へ正確なリスク情報が提供されていないことや、保険購入が総務部で事務的に扱われるケースが多いことも問題である。
  • (人材育成と企業文化改革)
    • リスクマネジメントは本来企業の成長投資とは両輪の関係にあるが、専門人材の配置は欧米企業に比べて進んでおらず、特に、国内外においてグローバルに活動している企業においては専任者の設置や学習機会の提供、更なる人材流動化が必要である。
    • また、政府による啓蒙活動を通じて「リスク管理=経営管理」という認識を浸透させることも重要である。
    • さらに、リスクマネジメントの高度化には経営層への動機付けやインセンティブが必要である。
    • 加えて、日本では利益保険への加入率が低いものの、経営コミットメントに関する利益保険や事業継続を目的とする保険など、目的に応じた保険活用を広めることも重要である。
  • https://www.fsa.go.jp/singi/riskmanagement/siryou/20251210.html

今後、経営管理の大きな課題としてリスク管理が位置付けられることで、各企業に求められる保険の購買行動に変容があるかもしれません。

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長

2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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