コラム
【速報⑥(パブコメ№100~136)】令和7年8月28日公表 「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について を読む

7 Ⅱ-4-2-12 部分④ (1)② 過度の便宜供与に係る判断基準 (ア~イ(ウ)まで)(№100~136)
② 過度の便宜供与に係る判断基準
保険会社が保険代理店等に対して行う便宜供与に関し、過度なものであるか否かについては、以下に基づき判断する。
ア. 自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引する便宜供与保険代理店等に対する便宜供与のうち、以下のいずれかの要素を含むものについては、特に顧客の適切な商品選択の機会を阻害するおそれが高いことから、過度の便宜供与に該当する。
(ア) 便宜供与の実績に応じて、当該保険代理店や保険募集人である保険代理店の役員又は使用人において保険契約数や保険引受シェアの調整が行われる場合
(イ) 保険代理店等から保険会社に対し、物品等の販売数量の目標設定や購入数量の割当て等が行われる場合
イ. 実質的に自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するもの
上記ア.のほか、保険代理店等に対する便宜供与が過度なものであるか否かについては、当該便宜供与の趣旨・目的のほか、価格・数量・頻度・期間及びその負担者等を総合的に勘案しつつ、当該便宜供与によって生じ得る弊害の内容・程度を考慮し、社会通念に照らして妥当であるかによって判断する。
なお、判断は個別具体的に行われるべきであるが、例えば、以下の行為については、実質的に自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するものとして、過度の便宜供与に該当し得る。
(ア) 保険会社の役職員が、保険代理店等から、他の保険会社の購入実績との比較を提示されるなど黙示の圧力を受けたことを背景として、自社の役職員に対し、数量等の報告やとりまとめを伴う物品の購入をあっせんする行為
(イ) 保険代理店等が主催するイベント等において、保険会社の役職員等が保険業と関連性の低い役務を提供する形で参加・協力する行為
(ウ) 保険代理店等が主催するイベント等において、保険会社の役職員等が休日等の業務時間外に参加・協力する行為
(1)総論
- 保険会社から保険代理店に対して、お客様の希望や、保険代理店の廃業等の理由により、新規顧客等の情報や保険契約を保険代理店に提供・移管する場合でも、「実質的に自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するもの」に該当しないか検討する必要がある(№101、102)
- 保険会社と保険代理店において共同で保険募集を行う場合で、保険代理店の業務の内容や比率に見合わない過大な代理店手数料を支払うことは過度の便宜供与になる(№103)
- 過度の便宜供与に該当し得る具体的行為は、保険代理店に対して何らかの便益を享受させるものであれば足り、保険代理店に経済的利益を生じさせるか否かにかかわらない(№104)
- 便宜供与が過度なものであるか否かの判断に当たっては、保険代理店側の「過度である」との認識は不要であり、本指針に記載の考慮要素および社会通念に照らして客観的に判断される(№117)
- 保険会社と保険代理店等の間で行われる懇親や物品の贈答が該当し、負担者等のいずれかが保険営業に関与しておらずとも、負担者等の立場や組織内の意思決定に与える影響力等も含め総合的に勘案すべきである(№121)
(2)具体的なケース
№113
Q.保険代理店向けの研修等の宿泊費を保険会社が負担することは、それが社会通念から見て過度なものである場合は、「実質的に自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するもの」に該当しうるが、その判断は個別具体的に行われるべきものであり、たとえば遠方から参加が必要となる者など、研修等へ参加するためには宿泊が必要となる場合に、社会通念上相当な範囲で保険会社が宿泊費を負担することが直ちに「実質的に自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するもの」に該当するものとはならない、との理解で良いか。
A.御指摘のような事例については、Ⅱ-4-2-12(1)②イ.に基づき個別具体的に判断される必要があると考えます。また、その判断に当たっては、宿泊費を負担することの必要性や負担額の程度等によっては、「本来は保険代理店等が負担すべき費用を保険会社が負担する行為」に該当することにも留意しつつ、顧客の適切な商品選択の機会を阻害するものでないか、検討する必要があると考えます。
宿泊費の負担については、その目的が研修への参加であっても、検討を省略することはできないことが明確になりました。
№118
Q.保険会社が、保険代理店の企画するイベントやセミナーへ協賛する際、例えば、イベントへの協賛により、保険会社はセミナー枠や展示ブースを割り当てられるという対価を得ることができ、また協賛額に応じて、イベント冊子や代理店のホームページでの告知も実施することができる枠組みとすることが考えられる。
この場合、当該イベントやセミナーにおいて、保険会社が自社の保険商品の優先的な取り扱いを誘引することなく自社の広報や情報宣伝活動を行うことは、イ.に規定される各行為に該当しないという理解で良いか。また、「ライフサポート」や「相続」を中心とした情報提供を行い、保険の商品性やサービスを理解していただくような、参加者の金融リテラシー向上等を目的としたイベントへの協賛は、社会貢献活動の一環であると見做せ、②イ.に規定される各行為に該当しないという理解で良いか。A.今般の監督指針改正は、保険会社から保険代理店等に対する便宜供与が過度なものとなっていないか、Ⅱ-4-2-12(1)②に掲げる判断基準に照らして判断するとともに、顧客の適切な商品選択の機会が阻害されていないかについて、内部監査や取締役会等における評価・対応の検討を行い、顧客の適切な商品選択の機会が阻害されていると認められる場合には、適切な措置を講じること等を求めるものです。御質問の事例の趣旨・態様が明らかではありませんが、協賛に伴って協賛金を支出する場合については、同イ.(オ)のように過度の便宜供与に該当し得るものとして、顧客の適切な商品選択の機会を阻害するものとなっていないか、検討する必要があると考えます。
協賛に伴って協賛金を支出する場合は、イベントやセミナーの目的が社会貢献活動の一環と言えても、過度の便宜供与に該当しうる可能性が指摘され、慎重な検討が求められています。
№123
Q.保険代理店は、顧客と直接的な接点をもち、顧客と保険会社を繋ぐ重要な役割を担っている。保険代理店がこの役割を十分に果たし、顧客本位に資するサービスを継続的かつ効果的に提供していくためには、顧客との接点確保のための活動を十分に行うとともに、そのための態勢整備およびその高度化が必要になる。
他方、保険会社自身も、自社の顧客に対し、保険代理店を通じて顧客本位のサ-ビスを提供するために顧客との接点を確保するとともに、それに必要となる自社の態勢整備及び委託先の管理監督義務に基づく保険代理店の態勢整備を行う責任がある。保険代理店を通じて実施する顧客との接点確保の活動やそのために必要となる保険代理店の態勢整備は、個々の内容ごとに、保険会社と保険代理店との間で、顧客本位に資するサ-ビスを継続的かつ効果的に提供していくために、役割や責任を合理的に定めて実施されるものである。
このような保険代理店の態勢整備の実態を踏まえると、改正監督指針案 II-4-2-12(1)①に定める態勢が整備されている場合には、同 II-4-2-12(1)②イ.(ア)から(オ)の例示は、保険会社が、上記の役割や責任に基づき費用を負担する、又は役務を提供する行為について、一律に当該例示に当たる行為として規制するものではないと理解しているが、相違ないか。A.Ⅱ-4-2-12(1)②イ. (ア)から(オ)に例示した行為についても、過度の便宜供与に該当するか否かは、個別具体的に判断される必要があると考えます。
このため、保険会社・保険代理店間の合意や、Ⅱ-4-2-12(1)①に定める態勢整備の状況にかかわらず、当該便宜供与の趣旨・目的のほか、価格・数量・頻度・期間及びその負担者等を総合的に勘案しつつ、当該便宜供与によって生じ得る弊害の内容・程度を考慮し、社会通念に照らして妥当であるかによって判断される必要があると考えます。
保険会社が保険代理店に求める態勢整備の内容や、態勢整備の状況にかかわらず、便宜供与に関して過度の便宜供与に当たらないかを検証することとが明確化されています。
№132
Q.Ⅱ-4-2-12 (1)②イ. (イ)、 (ウ)の 「保険代理店等が主催するイベント等」には、保険代理店等が主催はしないものの、スポンサーを務めるイベントが含まれるという理解でよいか。また、「参加・協力する行為」には、協賛が含まれるという理解でよいか。
A.貴見のとおりです。
なお、協賛に伴って協賛金を支出する場合には、Ⅱ-4-2-12(1)②イ.(オ)に基づき、役務としての実態があるか、また保険会社若しくは保険代理店等において対価性の検証が困難なものでないかを検討する必要があると考えます。
保険代理店等が主催するイベント等に「保険代理店等が主催はしないものの、スポンサーを務めるイベントが含まれる」ことが示されました。
▼【速報⑦】令和7年8月28日公表 「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について を読む
https://hkn.jp/column/49
執筆者プロフィール

- 株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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