コラム

2025年9月1日
Twitter Facebook LINE

【速報④パブコメ(№67~№80)】令和7年8月28日公表 「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について を読む

5 Ⅱ-4-2-12 部分①(№50~№76)(後半)

Ⅱ-4-2-12 保険代理店等に対する便宜供与
(1) 過度の便宜供与の防止
保険会社が、保険代理店等に対して便宜供与を行い、その見返りとして保険募集人が当該保険会社の保険商品を優先的に推奨することによって、顧客の適切な商品選択の機会が阻害されるおそれがある。
このため、保険会社は、以下のとおり、保険代理店等に対する過度の便宜供与を防止する必要がある。
(注1) 保険代理店等とは、保険代理店のほか、保険募集人である保険代理店の役員又は使用人や、その他保険会社による便宜供与が、特定の保険代理店における顧客の適切な商品選択の機会を阻害し得ることとなる相手方(具体的には、保険代理店と人的又は資本的に密接な関係を有する者(親会社等)や保険代理店の主要な取引先を含む)をいう(以下、Ⅱ-4-2-12 において同じ)。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/02.pdf

(2) 相手方の考え方、密接な関係を有する者など 65、72、74

  • (注1)について、「保険代理店等とは、(中略)その他保険会社による便宜供与が、特定の保険代理店における顧客の適切な商品選択の機会を阻害し得ることとなる相手方 (中略)をいう (以下Ⅱ-4-2-12 において同じ)。」に修正(№65)。なお、この相手方には保険代理店の意思決定を左右し得る相手方を広く含む(№72)
  • (注1)における「親会社等」の「等」には、保険代理店の親会社、子会社、関連会社、親会社の子会社(兄弟会社)や、保険代理店を関連会社とする者などが含まれる(№74)

(3)相手方について、主要な取引先 69、71、76

  • 保険代理店等である広告媒体社(例えば新聞社やテレビ局)へ広告費を直接支払うのではなく、間に保険代理店等ではない広告代理店を経由して支払いを指示されるケ-スがある。保険会社から保険代理店等へ間接的に金銭等が支払われる場合も、Ⅱ-4-2-12 (1)②に照らして過度の便宜供与に該当するのであれば、これを防止する必要がある(№69)
  • 「保険代理店の主要な取引先」とは、取引量等によって機械的に定まるものではなく、個別具体的に判断される必要がありますが、例えば、メーカーに役務の対価としての実態がない、又は保険会社若しくは保険代理店等において対価性の検証が困難である金銭を支払うことにより、兼業代理店である販売店での保険販売のシェアに影響を及ぼすような場合が該当する(№71)

№76

Q.(注 1)の 「保険代理店の主要な取引先」には、当該保険代理店が取り扱う保険契約の契約者だけでなく、兼業代理店においては、保険代理店以外の事業の取引先も含むという理解でよいか。また、「保険代理店の主要な取引先」への該当性について、判断基準があればご教示いただきたい。

A.Ⅱ-4-2-12(1)の(注1)については、「保険代理店等とは、(中略)その他保険会社による便宜供与が、特定の保険代理店における顧客の適切な商品選択の機会を阻害し得ることとなる相手方 (中略)をいう (以下Ⅱ-4-2-12 において同じ)。」に修正いたします。なお、「保険代理店の主要な取引先」とは、「保険会社による便宜供与が、特定の保険代理店における顧客の適切な商品選択の機会を阻害しうる相手方」の例示であるところ、個別の便宜供与に応じて、顧客の適切な商品選択の機会を阻害し得る相手方であるか否かについて、判断する必要がありますが、御指摘のような当該保険代理店が取り扱う保険契約者のほか、保険代理店以外の事業の取引先も該当し得ると考えます。 

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/01.pdf

「保険代理店の主要な取引先」に「当該保険代理店が取り扱う保険契約者のほか、保険代理店以外の事業の取引先も該当し得ると考えます。 」とされました。保険代理店のほうで、取り扱う保険契約者も含めて「主要な取引先」を自ら検討してとりまとめて、取り扱っているすべての保険会社に連絡をすることが必要となるものと思われます。

(4)体制整備について 75

№75

Q.(注1)には 「具体的には、保険代理店と人的又は資本的に密接な関係を有する者(親会社等)や保険代理店の主要な取引先を含む」とあるが、例えば、生命保険会社が行う他社との取引や、他社への経済的利益の提供(金銭に限られず、物品・不動産の提供・貸与、労務の提供を含む)のうち、代理店への営業や営業推進を担う部署が関与するものについて、過度の便宜供与に該当するか否かを確認する態勢を整備する(ただし、代理店への営業や営業推進を担う部署が関与していない取引において、他の部署が代理店等への過度の便宜供与を行っている実態が確認された場合は、それ以降、当該他の部署が関与するものも過度の便宜供与に該当するか否かを確認する態勢を整備する必要がある)、という考え方は取り得るとの理解でよいか。

A.Ⅱ-4-2-12(1)の(注1)については、「保険代理店等とは、(中略)その他保険会社による便宜供与が、特定の保険代理店における顧客の適切な商品選択の機会を阻害し得ることとなる相手方 (中略)をいう (以下Ⅱ-4-2-12 において同じ)。」に修正いたします。なお、過度の便宜供与の相手方を「保険代理店等」とした上で、その範囲に「その他保険会社による便宜供与が、特定の保険代理店における顧客の適切な商品選択の機会を阻害しうることとなる相手方その他保険会社による便宜供与が、特定の保険代理店に対する便宜供与として機能する相手方」を含む趣旨は、保険代理店を含む保険募集人に対して直接便宜供与を行うものでなくとも、規制の趣旨が妥当するため、これを防止する点にあります。
したがって、潜脱の危険性が高い類型、具体的には保険代理店への営業や営業推進を担う部署が関与する、他社との取引等について、過度の便宜供与に該当するか否かを確認する態勢を整備しつつ、潜脱の危険性が低い、これら以外の部署が過度の便宜供与を行っている実態が確認された場合には、それ以降、当該他の部署が関与する他社との取引等についても過度の便宜供与を確認する態勢を整備することも認められるものと考えます。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/01.pdf

過度の便宜供与を防止する態勢整備において、具体的な回答です。

保険会社が行う経済活動のうち、すべてを監視するのではなく、特に「保険代理店への営業や営業推進を担う部署が関与する、他社との取引等について、過度の便宜供与に該当するか否かを確認する態勢を整備」しつつ、「これら以外の部署が過度の便宜供与を行っている実態が確認された場合には、それ以降、当該他の部署が関与する他社との取引等についても過度の便宜供与を確認する態勢を整備することも認められる」という段階的な態勢整備が認められるものと明記されました。

6 Ⅱ-4-2-12 部分②(№77~№80)

Ⅱ-4-2-12 保険代理店等に対する便宜供与
(1) 過度の便宜供与の防止
保険会社が、保険代理店等に対して便宜供与を行い、その見返りとして保険募集人が当該保険会社の保険商品を優先的に推奨することによって、顧客の適切な商品選択の機会が阻害されるおそれがある。
このため、保険会社は、以下のとおり、保険代理店等に対する過度の便宜供与を防止する必要がある。
(注2) 便宜供与の相手方が、一の保険会社等に専属する保険代理店であっても、当該保険代理店の専属を維持する目的等をもって、過度の便宜供与を行うことがないよう、適切な措置を講じる必要がある。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/02.pdf

特に№79が重要です。

№79

Q.保険代理店は、商法上の代理商であり、競業禁止義務を負っているため、保険会社が許可しない限り、他の保険会社の業務を取り扱うことができない。また、生命保険募集人は原則として一つの保険会社に専属することが定められており、保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして政令に定める場合に限って、例外として二以上の保険会社に所属することが認められるものと理解している。そのため、保険代理店が二以上の保険会社に所属することを許可するかどうかは保険会社の裁量に委ねられていることが原則であると理解している。したがって、保険代理店の専属が維持されること自体は保険業法の趣旨や規律に沿うものであることからすれば、II-4-2-12(1)(注 2)の記載は、「保険契約者等の保護に欠けるおそれがない一の保険会社等に専属する保険代理店が、他の保険会社の商品を取り扱いたいと考えている場合において、保険会社が過度の便宜供与をすることでそれを引き留める行為を防止する」、という趣旨で定められているものであり、「保険会社が一の保険会社等に専属する保険代理店の態勢整備を進める目的で費用を負担する、又は役務を提供する行為を否定するものではない」、と理解しているが、相違ないか。 

A.Ⅱ-4-2-12(1) の(注2)は、専属代理店においても、意向把握・確認義務や情報提供義務を履行し、顧客の適切な商品選択の機会を確保する必要があることや、当該保険代理店の専属を維持する目的を持って過度の便宜供与が行われる等、保険会社の健全かつ適切な業務の運営を阻害することを踏まえ、適切な措置を講じることを求めるものです。
したがって、「保険会社が一の保険会社等に専属する保険代理店の態勢整備を進める目的で費用を負担する、又は役務を提供する行為」についても、保険代理店に対する過度の便宜供与として機能しないよう、適切な措置を講じる必要があると考えます。なお、保険業法においては、生命保険募集人が二以上の保険会社に所属することが認められるか否かについては、保険業法第 282条第 3 項、保険業法施行令第 40 条及び平成十年大蔵省告示第二百二十八号(保険業法施行令第四十条第一号等の規定に基づき、生命保険募集人に係る制限が適用されない場合等を定める件)によって判断されるべきものであり、保険会社の裁量に委ねられているものではないと考えます。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/01.pdf

「保険会社が一の保険会社等に専属する保険代理店の態勢整備を進める目的で費用を負担する、又は役務を提供する行為」についても、「保険代理店に対する過度の便宜供与として機能しないよう、適切な措置を講じる必要がある」とされました。

これは「一の保険会社等に専属する保険代理店」に対するもので「当該保険代理店の専属を維持する目的」ではなく、「態勢整備を進める目的」であっても、「当該目的が異なるという説明のみでは、過度の便宜供与に該当しないということはできない」ことが明記されたものと解されます。

▼【速報⑤】令和7年8月28日公表 「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について を読む
https://hkn.jp/column/47

 

執筆者プロフィール

中村 譲

中村 譲
株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長

2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
Twitter Facebook LINE
1分でわかる
hokan®︎の資料はこちら!

コラム一覧