コラム

2025年9月1日
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【速報③パブコメ(№50~№66)】令和7年8月28日公表 「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について を読む

5 Ⅱ-4-2-12 部分①(№50~№76)

Ⅱ-4-2-12 保険代理店等に対する便宜供与
(1) 過度の便宜供与の防止
保険会社が、保険代理店等に対して便宜供与を行い、その見返りとして保険募集人が当該保険会社の保険商品を優先的に推奨することによって、顧客の適切な商品選択の機会が阻害されるおそれがある。
このため、保険会社は、以下のとおり、保険代理店等に対する過度の便宜供与を防止する必要がある。
(注1) 保険代理店等とは、保険代理店のほか、保険募集人である保険代理店の役員又は使用人や、その他保険会社による便宜供与が、特定の保険代理店における顧客の適切な商品選択の機会を阻害し得ることとなる相手方(具体的には、保険代理店と人的又は資本的に密接な関係を有する者(親会社等)や保険代理店の主要な取引先を含む)をいう(以下、Ⅱ-4-2-12 において同じ)。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/02.pdf

特に(注1)の解釈がポイントとなる部分です。ここでは以下のとおり分けて整理を試みます。

  • 便宜供与の考え方など
  • 相手方について、密接な関係を有する者
  • 相手方について、主要な取引先 
  • 体制整備について 

(1) 便宜供与の考え方など

  • 「便宜供与」には、第 2 回有識者会議の事務局説明資料P.8 「便宜供与の主な形態・事例」において、①~⑥の分類で記載されているすべての事例が含まれる(№50)
  • 保険仲立人においても、過度の便宜供与の防止の規制について必要に応じて、それぞれに準じた適切な措置を講じることが求められる(№52)
  • 過度の便宜供与の解消措置を講じることにより、債務不履行責任や顧客保護上の問題が生じるなど、やむを得ない事情がある場合には、可能な限り速やかに解消へ向けた適切な対応が行われている限りにおいて、公表日時点で解消措置が完了していなくても直ちに問題視されるものではないが、公表日時点で態勢整備が不十分な場合は、今回の改正の趣旨に鑑み、各社において、速やかに態勢整備に取り組む必要がある(№57)
    • ⇒「解消に向けて取り組んでいることが合理的に説明できるものであれば、許容されるか」との質問に対する回答であり、これは、合理的な説明では足りず、「債務不履行責任や顧客保護上の問題が生じるなど、やむを得ない事情がある場合であることの説明」が必要であるとの回答と解されます。
  • 「保険会社が、保険代理店等に対して便宜供与を行い、その見返りとして保険募集人が当該保険会社の保険商品を優先的に推奨することによって」とあるが、推奨の主体が「保険代理店」ではなく「保険募集人」とされているのは、保険代理店のみならず、保険代理店の役員・使用人についても、「当該保険会社の保険商品を優先的に推奨する」主体となることが想定される(№64)
    • ⇒代理店全体として保険商品を優先的に推奨しなければよいというわけではなく、代理店の役員・使用人が優先的に推奨をすることも規制の対象である(換言すれば、代理店全体の施策として推奨しなければよい、という解釈は許されない)との回答と解されます。
  • 保険会社が人的又は資本的に密接な関係を有する者(企業グル-プ)や主要な取引先に同様の行為をさせた場合も実質的に保険会社が主体となって、過度の便宜供与を行っていると評価され得る(№66)
    • 行為の主体についても実質的な判断がなされるということが明確化されました。

№59

Q.ある保険会社Aからは自賠責保険に加え自賠責保険以外の保険商品の募集等を受託し、別の保険会社Bからは自賠責保険の募集等のみを受託している保険代理店について、保険会社Aは過度の便宜供与の防止に取り組む必要があるが、保険会社Bは過度の便宜供与の防止に取り組むことは特段求められないという理解でよいか。

A.御質問のような事例の場合は、保険会社Bについても、保険会社の健全かつ適切な業務の運営を阻害するおそれのある過度の便宜供与を防止する必要があると考えます。
また、当該保険代理店に対し、自社保険商品の募集を委託し、優先的な取り扱いを誘引する目的をもって過度の便宜供与を行うことがあり得るところ、このような場合については、Ⅱ-4-2-12 に基づいて過度の便宜供与を防止する必要があると考えます。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/01.pdf

この回答によれば、「保険会社の健全かつ適切な業務の運営を阻害するおそれのある過度の便宜供与を防止する必要」という観点で、代理店チャネルを活用するおよそすべての保険会社が過度の便宜供与の防止に取り組む必要があるということになるのではないでしょうか。

№63

Q.「募集関連行為従事者への支払手数料」についても、「便宜供与」に関する規制の対象となる理解で良いか。具体的には、 保険会社が募集関連行為従事者に、送客を依頼し、その送客に対して手数料を支払うケ-スにおいて、本手数料が一般的な代理店手数料の水準を上回る場合には、過度の便宜供与に該当する理解で良いか。
なお、「募集関連行為従事者への支払手数料の設定について、 慎重な対応を行っているか。 (注)例えば、 保険募集人が、 高額な紹介料やインセンティブ報酬を払って募集関連行為従事者から見込み客の紹介を受ける場合、 一般的にそのような報酬体系は募集関連行為従事者が本来行うことができない具体的な保険商品の推奨・説明を行う蓋然性を高めると考えられることに留意する。」 「(注 2)ただし、例えば、 以下の行為については、 保険募集に該当し得ることに留意する必要がある。 ア 業として特定の保険会社の商品(群)のみを見込み客に対して積極的に紹介して、保険会社又は保険募集人などから報酬を得る行為」について、今回の改正案と密接に関わる内容であり、 今回の改正趣旨を踏まえた「募集関連行為」に関する具体的な示唆を示す必要があると考える。 

A.御指摘のような事例については、Ⅱ-4-2-12(1) (注1)に照らし、募集関連行為従事者が、特定の保険代理店における顧客の適切な商品選択の機会を阻害し得ることとなる相手方に該当する可能性があることを踏まえ、保険代理店等に対する過度の便宜供与に該当するものではないか、適切に判断・検証される必要があると考えます。
また、募集関連行為従事者に対する金銭の支払いについては、Ⅱ-4-2-1(2)にも留意する必要があります。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/01.pdf

募集関連行為従事者も、「特定の保険代理店における顧客の適切な商品選択の機会を阻害し得ることとなる相手方に該当する可能性があることを踏まえ、保険代理店等に対する過度の便宜供与に該当する」か検証が必要と明確にされました。

▼【速報④】令和7年8月28日公表 「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について を読む
https://hkn.jp/column/46

 

執筆者プロフィール

中村 譲

中村 譲
株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長

2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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