コラム
【超速報】比較推奨販売に関するパブリックコメントを読む⑥_「おまかせします」と言われたら

「プロにお任せします」。現場で最も多く聞く言葉だと思います。パブコメにも、この類型を正面から扱うよう求める意見が寄せられました。
今回はその類型への回答を整理します。
- 扱う論点
- 「専門家に任せたい」旨の発言によって、意向把握・確認や必要な情報提供が当然に不要となるものではないこと
- 委ねる意向がある場合に、なお把握すべき事項(加入目的、保険料の許容範囲、特に重視する事項、避けたい事項)
- 複数の保険契約について説明した結果、顧客が「有意な差がないので代理店に任せる」と述べた場合
- 意向・理由・説明内容を事後的に確認できる態勢の整備が求められること
目次
1 「専門家に任せたい」旨の発言によって、意向把握・確認や必要な情報提供が当然に不要となるものではないこと
| №256 |
| Q 意向把握義務における当初意向を把握できた顧客に対して、監督指針Ⅱ-4-2-9(5)①B.(a)第1段落に沿って当該顧客の意向を確認した際に、「全て貴社にお任せする」という反応を示す顧客(かかる顧客は意向が不明確な顧客と理解している。)は、ごく少数ながら存在する。その際、監督指針Ⅱ-4-2-9(5)①B.(b)に沿って、顧客が特に重視すると考えられる事項を例示するなどして、可能な限り顧客の意向を把握することに努めるが、それでもなお、顧客から、例えば「とにかく貴社にお任せするので、何らか具体的な提案をしてほしい」などという反応が示される場合(かかる顧客は意向が不明確な顧客と理解している。)が、さらにごく少数ながら存在する。 その場合、意向把握義務における当初意向以上に監督指針Ⅱ-4-2-9(5)①B.(a)第1段落に定める顧客の意向に沿った保険契約を選別できないので、監督指針Ⅱ-4-29(5)①B.(a)第2段落に定める特定の保険契約を推奨せざるを得ないという理解でよいか。 なお、顧客の意向が不明確な場合であっても、顧客が特に重視すると考えられる事項の例示を工夫するなどして、できる限り顧客の意向に沿って保険契約を選別できるよ う努めることは、当然の前提と理解している。 |
| A 顧客が「全て任せる」、「具体的な提案をしてほしい」などと述べた場合であっても、その意思表示のみをもって、乗合代理店が任意に特定の保険会社又は特定の保険契約を選別し、提示・推奨することは適切ではありません。 当該意思表示がされたことを踏まえつつ、保障(補償)内容、保険料水準、特約等、顧客が重視し得る事項を確認するなど、可能な限り意向の形成を促し、又は意向の明確化に努めた上で、把握した顧客の意向に沿って、合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由等に基づき、保険契約を選別し、提示・推奨することが重要です。 その上で、顧客の意向や募集実態に応じて、Ⅱ-4-2-9(5)①A.に基づき複数の保険契約を比較説明すること、又は同①B.に基づき「二以上の比較可能な同種の保険契約」の中から顧客の意向に沿って保険契約を選別し、提示・推奨することが考えられます。 上記の対応等をしたものの明確な意向がなお確認できない場合に、顧客の意向に沿って保険契約を選別し、提示・推奨するためには、顧客の理解度や負担にも配慮しつつ、それまでに把握した顧客の当初意向、顧客属性、加入目的、既加入契約、保険料水準、必要と考えられる保障(補償)内容等を踏まえて、顧客の最善の利益を勘案し、合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由等に基づき、保険契約を提示・推奨することが考えられます。 ただし、手数料水準、販売目標、保険会社からの便宜供与等の代理店側の都合により、特定の保険会社又は特定の保険契約へ誘導することは適切ではありません。また、意向把握、例示、提示・推奨の理由、顧客への説明内容等について、事後的に確認・検証できるよう記録することが重要です。 |
「全て任せる」という意思表示がされたことを踏まえつつ、保障(補償)内容、保険料水準、特約等、顧客が重視し得る事項を確認するなど、可能な限り意向の形成を促し、又は意向の明確化に努めた上で、把握した顧客の意向に沿って、合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由等に基づき、保険契約を選別し、提示・推奨することが重要とされました。
任せる、というのは意向ではなく、意思表示とされています(参考:募集人への信頼と、保険商品への意向は切り分けて考える)
2 委ねる意向がある場合に、なお把握すべき事項(加入目的、保険料の許容範囲、特に重視する事項、避けたい事項)
| №264 |
| Q 「代理店にお任せする」、「募集人のおすすめでよい」と言われた場合も、決められたプロセスに則り、顧客の意向を確認し、例外なく推奨販売を行う必要があるのか。重視するポイントの選択肢に、代理店のおすすめ・お任せなどの項目を含め、これを選択された場合は、推奨の理由・根拠を明示したとしても保険業法施行規則第227条の2第3項第4号ロの趣旨に反するのか。 |
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A 顧客が「代理店に任せる」、「募集人のおすすめでよい」と述べた場合であっても、その意思表示のみをもって、乗合代理店が任意に特定の保険会社又は特定の保険契約を選別し、提示・推奨することは適切ではありません。 当該意思表示がされたことを踏まえつつ、保障(補償)内容、保険料水準、特約等、顧客が重視し得る事項を確認するなど、可能な限り意向の形成を促し、又は意向の明確化に努めた上で、把握した顧客の意向に沿って、合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由等に基づき、保険契約を選別し、提示・推奨することが重要です。 |
「代理店に任せる」、「募集人のおすすめでよい」と述べた場合でも以下の事項を確認します。
- 保障(補償)内容
- 保険料水準
- 特約等
- 顧客が重視し得る事項
注意点としては、以下の事項を「重視する事項」の選択肢に含めるのを避けたほうが良いということです。
- 保険募集人の主観的又は属人的な判断に基づき「代理店のおすすめ」、「お任せ」等を設けて特定の保険契約へ誘導すること
3 複数の保険契約について説明した結果、顧客が「有意な差がないので代理店に任せる」と述べた場合
| №266 |
| Q 顧客の意向に沿って複数の保険契約について丁寧に比較説明したのち、「それぞれの商品の商品特性や保険料水準に有意な差がないので代理店に任せる」という意向の顧客には、保険募集人の判断で特定の保険契約に絞り込み、その理由と商品の内容を説明して推奨できるという理解でよいか。 その際、例えば、当該代理店店舗で最も多くの顧客に選択されている販売実績の多い商品に絞り込んで、その優位性を説明しつつ推奨することはさしつかえないか。 |
| A 複数の保険契約について説明した結果、顧客が「有意な差がないので代理店に任せる」と述べた場合であっても、その意思表示のみをもって、乗合代理店が任意に特定の保険会社又は特定の保険契約を選別し、提示・推奨することは適切ではありません。 当該意思表示がされたことを踏まえつつ、既に把握した顧客の意向、保障(補償)内容、保険料水準等との関係で、合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由等に基づき説明する必要があります。 販売実績は、販売方針、手数料水準、保険会社からの便宜供与、過去の推奨方法等の影響を受け得るため、それのみを主たる理由として特定の保険契約を推奨することは適切ではありません。 特に、乗合代理店が販売実績等の情報を用いて特定の保険契約を推奨する場合において、当該情報が、例えば、従前、保険業法施行規則第227条の2第3項第4号ハに基づき、乗合代理店の店舗ごとに異なる保険会社の保険契約を取り扱っていたことを前提として、特定の保険契約を推奨するような資料や数値に基づくものであるときは、結果として、恣意的な選別・推奨と評価されるおそれが高いことに留意する必要があります。販売実績を用いる場合には、集計期間、対象契約、対象顧客、件数、集計方法・評価方法等の合理性を適切に判断した上で、そ れらを明確にし、顧客に誤認を与えず、恣意的な誘導とならないよう、事後的に確認・検証できる態勢を整備することも重要です。 |
ある程度意向を確認したうえで、「有意な差がないので代理店に任せる」と述べた場合であっても、その意思表示のみをもって特定の商品を提示することはできません。
既に把握した顧客の意向、保障(補償)内容、保険料水準等との関係で、合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由等に基づき説明する必要があります。
なお、販売実績は、これまでのハ方式における実績を使用する場合は、恣意的な選別と評価される可能性が高いとされている点も注目です。
4 意向・理由・説明内容を事後的に確認できる態勢の整備が求められること
| №267 |
| Q 比較推奨販売における「事前の顧客意向確認」の義務化について、保険商品、特に医療保険など第三分野の専門性・複雑性を踏まえると、画一的な運用には課題がある。実務では多くの顧客が事前に明確な意向を持たず、専門家による情報提供を受けて初めて自らのニーズを形成するのが実態であり、形式的な意向確認を強制すると、かえって顧客本位に反する結果となりかねない。このため、商品特性に応じて、専門家が情報提供を行いながら顧客の意向形成を支援するプロセスや、全体像を示した上で段階的に選択肢を絞り込む「アウトライン提示型 販売」を明確に容認し、その過程を合理的に記録・検証する柔軟な運用を求める。こうした整理により、形式主義を排しつつ、顧客理解に基づく真の意向形成と実効性ある顧客保護、現場実務との整合を両立させることができる。 |
| A 乗合代理店が比較推奨販売を行う場合には、顧客の意向を適切に把握した上で、当該意向に沿って保険契約を選別し、提示・推奨する必要があります。一方で、例えば、医療保険等の商品特性に照らし、顧客の意向が当初から明確でない場合には、保険募集人が、顧客の属性等を踏まえて、想定されるリスクや保険が果たす役割等を説明した上で、顧客が重視し得る事項を確認するなど、可能な限り意向の形成を促し、又は意向の明確化に努めた上で、把握した顧客の意向に沿って、合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由等に基づき、保険契約を選別し、提示・推奨することが重要です。 ただし、意向形成支援や選択肢の提示を名目として、比較推奨販売の対象を狭める目的で顧客の意向を恣意的に誘導したり、手数料水準、販売目標、保険会社からの便宜供与等の代理店側の都合により、特定の保険会社又は特定の保険契約へ誘導することは適切ではありません。 また、意向把握・意向形成支援の過程、提示・推奨の理由、顧客への説明内容等について、事後的に確認・検証できるよう記録・管理することも重要です。 |
事後的な検証ができるようにする必要がありますが、その内容は以下のとおりです。
- 意向把握
- 意向形成支援の過程(例示)
- 提示・推奨の理由
- 顧客への説明内容等
として、意向形成支援の過程(ほかの部分では例示)について、詳細な記録を残すことが重要となってきます。
執筆者プロフィール

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株式会社Hokanグループ 専門役員グループCPAO
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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