コラム
【超速報】比較推奨販売に関するパブリックコメントを読む⑨_推奨理由をどう書くか — 合理的かつ一定の具体性

推奨販売を実施するにあたり、その説明には合理的かつ一定の具体性が求められています。
「『比較可能な同種の保険契約』の中から、顧客の意向に沿って一又は二以上の保険契約を選別し、顧客に示す行為は『提示』とし、さらに、その中から、保険募集人が特定の保険契約を勧める場合を『推奨』としており、いずれの場合であっても合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由等を説明する必要があります。なお、特定の保険契約を『推奨』する場合について、保険募集人の恣意的な判断が介在する程度が高まることから、顧客の最善の利益を勘案し、代理店都合によらない合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由等の説明が特に重要であることを明確化したものです。」(回答№60(5))
「A社は事故対応がいいので推奨しました」。これは合理的な理由でしょうか。
パブコメには、まさにこの点に関連する問いが複数寄せられました。回答は慎重ですが、方向ははっきりしています。
評価が主観にとどまり、検証できない理由は合理性や具体性に欠けるものとなります。
では何を説明しなければならないのでしょうか。どう説明したらいいのでしょうか。証跡をどこまで残す必要があるのでしょうか。
- 扱う論点
- 「合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由等」【監督指針II-4-2-9(5)①B.(a)】とはなにか
- 保険会社の総合力(営業体制、人材、事故対応、商品開発力)を推奨理由にできるか—客観的・定量的な評価が困難であり、代理店の都合による恣意的な選別となり得る場合には理由として適切ではないとされたこと
- 説明の粒度—顧客が簡潔な説明を希望する場合、希望の優先順位づけ
- 比較表の作成は必須か。募集文書制度との関係(作成主体は所属保険会社等が委託契約に基づき実務上定めるものであり、法令等において一律に定める性格のものではない)
- 証跡—金融庁として一律の様式や保存期間を定めるものではなく、検証可能な形で適切に管理することが重要とされたこと。社内規則に定めるべき事項
目次
- 1 「合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由等」【監督指針II-4-2-9(5)①B.(a)】とは何か
- 2 保険会社の総合力(営業体制、人材、事故対応、商品開発力)を推奨理由にできるか——客観的・定量的な評価が困難であり、代理店の都合による恣意的な選別となり得る場合には理由として適切ではないとされたこと
- 3 説明の粒度——顧客が簡素な説明を希望する場合の説明の仕方、顧客の希望の優先順位づけ
- 4 比較表の作成は必須か。募集文書制度との関係(作成主体は所属保険会社等が委託契約に基づき実務上定めるものであり、法令等において一律に定める性格のものではない)
- 5 証跡——金融庁として一律の様式や保存期間を定めるものではなく、検証可能な形で適切に管理することが重要とされたこと。社内規則に定めるべき事項
1 「合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由等」【監督指針II-4-2-9(5)①B.(a)】とは何か
| №481 |
| Q 「合理的かつ一定の具体性を有する」とは、商品特性等について「合理的かつ一定の具体性」を有している必要があると考えてよいか。例えば、「人気のある商品である」等という説明ではなく、保障(補償)内容、保険料、保障(補償)期間、付帯サービス等の点で合理的かつ一定の具体性が必要という意味と考えてよいか。 |
| A貴見のとおりです。 「合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由」とは、単に「人気商品である」や「販売実績が多い」等の抽象的な説明では足りず、顧客が重視する事項との関係で、保障(補償)内容、保障(補償)期間、特約等の商品特性や保険料水準を踏まえた合理的かつ具体的な説明であり、顧客の比較判断に資する事項である必要があります。 |
顧客が重視する事項との関係で、保障(補償)内容、保障(補償)期間、特約等の商品特性や保険料水準を踏まえた合理的かつ具体的な説明であり、顧客の比較判断に資する事項である必要があります。
そして、「顧客の意向に沿って特定の保険商品を提示・推奨する際には、主たる基準や理由等として、顧客の意向に沿う保障(補償)内容等の商品特性や保険料水準といった保険商品に直接関係する事項を説明する必要があります。
また、顧客が事故対応件数や販売実績等の商品特性と直結しない事項についても重視する場合には、保険商品に直接関係する事項とあわせて、提示・推奨理由とすることは否定されませんが、これらの事項は顧客意向との関係で合理性・具体性を有し、顧客の比較判断に資する客観的事項である必要があります。いずれにせよ、これらの事項は商品特性と直結せず、恣意的な推奨につながるおそれがある点に留意が必要です。」(№393)から、「主たる理由」=商品特性・保険料水準/「従たる理由」=商品特性と直結しない事項(条件付きで可)という二層構造が読み取れます。
なお、ランキングの扱い方については以下が非常に重要です。
№447
「顧客が「売れ筋」、「ランキング上位」、「当該代理店における販売量の多さ」等の商品特性と直結しない事項についても重視する場合には、保険商品に直接関係する事項とあわせて、提示・推奨理由とすることは否定されませんが、これらの事項は顧客意向との関係で合理性・具体性を有し、顧客の比較判断に資する客観的事項である必要があります。いずれにせよ、これらの事項は商品特性と直結せず、恣意的な推奨につながるおそれがある点に留意が必要です。
加えて、提示・推奨の基準や理由等に係る数値・資料の根拠について、例えば、同号ハに基づいて乗合代理店の店舗ごとに異なる保険会社の保険契約を取り扱っていたことを前提として、特定の保険契約を推奨するような資料等に基づく場合など、結果として、恣意的な選別とならないよう、収集期間、対象、件数、集計・評価方法等を明らかにするなど、合理性を適切に判断すべきです。なお、外部評価機関による資料を用いるなど、乗合代理店において、当該資料の合理性や具体性を検証することが困難であるおそれが高い場合、調査主体、調査対象、調査時期、評価項目、サンプル数、集計方法等により結果が異なり得るため、当該資料の性質や限界を踏まえ、顧客に誤認を与えないようこれらについて説明する必要があります。
販売実績についてはハ方式に基づいた時代のものについて資料として恣意的な選別との疑義が呈されています。
2 保険会社の総合力(営業体制、人材、事故対応、商品開発力)を推奨理由にできるか——客観的・定量的な評価が困難であり、代理店の都合による恣意的な選別となり得る場合には理由として適切ではないとされたこと
№235
「損害保険会社における営業態勢、人材、事故対応、商品開発力等の差異について、必ずしも全てが客観的かつ定量的に評価できるものではなく、客観的かつ合理的な根拠に基づかず、乗合代理店の都合による恣意的な特定の保険契約の選別となりうる場合においては、選別の理由や基準として適切ではありません。 」
特に、「事故対応が良い会社がよい」という意向が出された場合については、主観的な説明ではなく、客観的な説明が求められます。
№74
「 「事故対応が良い会社」といった意向については、保険募集人の主観的評価に基づいて説明するのではなく、商品特性や保険料水準について説明するとともに、事故受付時間、ロードサービス、事故後のサポート内容等、合理性・具体性を有し、顧客の比較判断に資する事項に即して説明する必要があります。」
その他、適切ではないものとされた例として以下のものがあります。
No.412
「保険代理店への便宜供与、資本関係、取引関係、手数料水準、『当社の経営方針による』、『当社独自の基準による』などといった、顧客の意向や利益と直接関係しない代理店の都合を提示・推奨理由とすることは適切ではありません。」
№77 請求実務への精通
「特定の保険会社の事務に精通していることなど代理店側の都合や、募集人の主観的又は属人的判断に基づく事項を基準や理由等とすることは、不適切な提示・推奨に該当し得るため適切でないと考えます。」No.415
「顧客の意向を踏まえず、「当該保険会社の営業職員等であること」を理由として、自社商品のみを提示・推奨することは適切ではありません。」
3 説明の粒度——顧客が簡素な説明を希望する場合の説明の仕方、顧客の希望の優先順位づけ
| №1 |
| Q 実務上、短時間での説明を希望する顧客も多い中で、比較推奨販売に係る手続きが形式的に長時間化すると、顧客の利便性や満足度を損なうおそれがある。そのため、顧客のニーズに応じて、説明内容や対応方法を柔軟に選択できる運用とする仕組みを整備いただきたい。 |
| A 今般の改正の趣旨は保険業法に基づく意向把握を前提として、顧客の意向等に照らし適切な商品選択の機会を確保する点にあります。 「簡潔な説明」が何を指しているか明らかではありませんが、顧客の意向に整合的な形で、当該保険契約を選別・推奨する理由が合理的に説明できること、また、顧客の理解と納得を得られる実効的な募集が行われていることが重要であると考えています。 |
| №233 |
| Q 顧客本位の対応が重要であることは理解しているが、実務上、保険会社間で商品内容や特約、保険料に大きな差がないケースが多く、その違いを時間をかけて説明することが必ずしも顧客のニーズに合致しているかは検証が必要である。多くの顧客は短時間で要点を押さえた説明や提案を望んでおり、画一的ではなく、個々の顧客に応じた説明が求められる。また、比較推奨対応による業務負担や慢性的な人手不足を背景に、取扱保険会社数の削減も検討せざるを得ず、その結果、顧客の選択肢が狭まるおそれがあるのではないか。 |
| A 貴重なご意見として承ります。 比較推奨販売に係る体制整備については、顧客の最善の利益を勘案しつつ、顧客の適切な商品選択の機会を確保するため、乗合代理店の規模や業務特性等に応じて、自社の募集実務や募集形態等を踏まえた適切な比較推奨販売が実施されるよう実効的な体制が整備されることが重要であり、監督指針は、一律かつ画一的な対応や、規模・業務特性等に照らして過度な実務上の負担を求める趣旨ではありません。 また、保険募集人(乗合代理店)には、法令に基づき、自らの所属保険会社等の保険商品について、顧客の最善の利益を勘案しつつ、公正な保険募集を行うことが求められています。そのため、保険契約者等の保護の観点から、自らの規模や業務特性に見合った体制整備を図ることが必要と考えます。顧客が簡素な説明を希望する場合には、顧客の意向に照らして適切と認められる範囲で、提案・推奨する保険契約の概要について、保険会社が作成したパンフレット等を用いて説明し、必要に応じて保障(補償)内容や保険料水準等の要点を補足する対応も考えられます。いずれにせよ、顧客の意向に整合的な形で、当該保険契約を選別・推奨する理由が合理的に説明できること、また、顧客の理解と納得を得られる実効的な募集が行われていることが重要であると考えています。 |
顧客から説明方法について、「簡潔な説明」や「短時間での説明」を求められた場合には、顧客の意向に照らして適切な範囲で、保険会社の作成したパンフレットを活用することができます。
また、ほかに顧客の意向が複数ある場合、意向に優先順位がある場合については以下の回答が重要です。
| №432 |
| Q 顧客が複数の意向(低廉な保険料水準、幅広い補償範囲、優れたアフターフォロー体制等)を示した場合、当該複数の意向の中で顧客が最も優先する意向に基づいて保険契約を選別し推奨することも認められるとの理解でよいか。 |
| A 顧客が複数の意向を示した場合には、顧客が特に重視する事項や優先順位を確認した上で、当該意向に沿って保険契約を選別し、提示・推奨することは考えられますが、顧客の優先順位を確 認する過程で、特定の保険契約へ誘導するよう恣意的に意向を形成又は解釈することは適切ではありません。特定の保険契約を選別し、提示・推奨するに当たっては、顧客が重視する事項を踏まえつつ、推奨する保険契約が、当該事項にどのように対応しているかという観点から、保障(補償)内容等の商品特性や保険料水準等等に基づいて主たる基準や理由等を説明することが基本となります。 |
| №85 |
| Q 改正後の比較推奨においては、見積結果の前に、比較対象商品を選別することが求められているが、その選別基準として実務上もっとも一般的かつ合理的なのが、顧客が「価格を重視するか」、「補償内容を重視するか」といった価値判断である。価格重視・補償重視といった優先順位の確認は、「顧客の意向把握」に含まれるとの理解でよいか。 |
| A 貴見のとおり、価格重視・保障(補償)内容重視といった優先順位の確認は、顧客の意向把握に含まれ得ます。ただし、これらの確認のみで常に十分というものではなく、顧客のリスク認識、必要な補償内容、保険金額、保険期間、特約、免責、保険料負担の許容度等を踏まえ、顧客の意向を具体化することが重要です。 なお、顧客が保険料水準を重視する場合であっても、保険料の多寡のみで直ちに選別・提案するのではなく、可能な限り同一又は近似の条件で比較することが望ましく、保障(補償)内容等の差異、保 険料に影響する要素を分かりやすく説明するなど適切に対応する必要があります。 また、比較軸や選別理由については、事後的に確認・検証できるよう、乗合代理店の業務実態に応じて適切に記録することも重要です。 |
複数の意向がある場合に、その順位を確認することも顧客の意向把握に含まれることが明らかになりました。
なお、優先順位の高い事項の意向の確認だけでは不十分であることも明確にされ、顧客のリスク認識、必要な補償内容、保険金額、保険期間、特約、免責、保険料負担の許容度等を踏まえ、顧客の意向を具体化することが重要です。
比較軸や選別理由については、事後的に確認・検証できるよう、乗合代理店の業務実態に応じて適切に記録することが求められます。
また、最終的に意向を複数確認しても絞り切れなかった場合、イ方式(比較説明の実施)を明示しています。
No.77
「比較推奨販売における情報提供のみで適切な選択に至らない場合は、無理に特定の保険契約へ絞らず、比較説明や複数の保険契約の提示、追加の意向確認等により、顧客の適切な商品選択の機会を確保することが求められます。」
4 比較表の作成は必須か。募集文書制度との関係(作成主体は所属保険会社等が委託契約に基づき実務上定めるものであり、法令等において一律に定める性格のものではない)
| №240 |
| Q 比較表の位置づけについては、「「平成26年改正保険業法(2年以内施行)に係る政府令・監督指針案」に対するパブリックコメント結果等について」における「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」で一定の考え方が示されているにもかかわらず、実務上、保険会社との関係において、比較表の作成や顧客への提示自体を認めてもらえない場合がある。 保険会社が、保険募集人に対する教育・指導・管理を通じて適切な比較推奨販売を確保すべき立場にあることは理解しているが、比較表の内容について保険会社と合意が得られれば、比較表の作成および顧客への提示は認められるとの理解でよいか。 |
| A 「「平成26年改正保険業法(2年以内施行)に係る政府令・監督指針案」に対するパブリックコメント結果等について」における「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」No.406~ 411においても、顧客に分かりやすい説明を行うための説明補助資料として、比較推奨販売の際に比較表を活用すること自体は否定されていません。 監督指針においては、比較表の作成や記載項目を一律に義務付けるものではなく、比較表の内容や使い方が不適切となり、誤認を招くおそれがないかについて、保険会社が募集管理態勢の一環として確認・指導する責任があることを前提としています。したがって、比較表の商品説明に関わる内容については、各保険会社と十分に協議・合意がなされた上で、顧客の意向や商品の特性を踏まえた適切なものとして作成できると代理店が判断した場合には、比較表を作成し、顧客への説明に用いること自体が否定されるものではありません。 |
比較推奨販売のためとはいえ、比較表を代理店限りで作成するのはリスクがあります。パブリックコメント上で、「各保険会社と十分に協議・合意がなされたうえで」とされました。
5 証跡——金融庁として一律の様式や保存期間を定めるものではなく、検証可能な形で適切に管理することが重要とされたこと。社内規則に定めるべき事項
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保存内容
「顧客の主な意向、意向把握の方法、比較・選別の対象範囲、提示・推奨した保険契約、提示・推奨の基準や理由、顧客への説明内容の概要等を記録することが考えられます。当該募集が顧客の意向に沿って合理的に行われたかを、事後的に確認できる程度の記録・証跡が必要です。ただし、顧客との全ての発言、応答、反応や、乗合代理店の詳細な判断過程を網羅的に記録することを一律に求めるものではありませんが、顧客の意向が変化した場合など、最終的な提示・推奨又は申込内容との関係を説明する上で重要な事情は、必要な範囲で記録することが望ましいと考えます。」
媒体・様式
「保存媒体・保存形式については、紙媒体に限りません。電子データ、システム入力記録、音声データ、録画データ等を用いることも考えられます。また、顧客の署名・押印付き書面を一律に求めるものではありません。事後的に客観的な確認・検証が可能な方法で保存されていれば足りるものと考えます。」
プルダウン方式への言及(実務設計上、地味に重要)
「記録システム等におけるプルダウン方式による記録も活用し得ます。ただし、選択肢のみでは顧客意向や推奨理由との関係を十分に確認できない場合には、必要に応じて補足記録を行うことが重要です。」
確認・検証の方法
「確認・検証方法については、全件確認を一律に求めるものではありません。……サンプリングや重点確認を含むリスクベースの方法により、効率的かつ実効的に確認・検証することが考えられます。」
保存期間
「法令等に特段の定めがある場合を除き、一律の期間を求めるものではありません。各乗合代理店において、契約の性質、保険期間、募集形態、苦情・紛争対応、顧客保護、個人情報保護、事後検証の必要性等を踏まえ、合理的な保存期間を社内規則等で定め、適切に運用することが重要です。」
執筆者プロフィール

2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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