コラム
【超速報】比較推奨販売に関するパブリックコメントを読む⑦_意向を「推定する」ことと、重視事項を「例示する」ことは別物

代理店による初動段階における「顧客の意向(重視する点)の推定」が一定程度認められるべき—そう考えて設計を始めた代理店も多いのではないでしょうか。
回答を読むと、問題視して警戒しているのは、意向を「把握した形」をつくりながら、実質は結論から逆算している運用です。
そして、監督指針改正案Ⅱ-4-2-9(5) ①B(a)に以下の追記がされました【№307】。

意向把握、意向の推定について今一度確認が必要です。
- 扱う論点
- Ⅱ-4-2-9(5) ①B(a)の注3が加筆されたこと
- 意向推定型【II-4-2-2(3)③ア(注2)】との性質の違い。例示を行ったことのみをもって意向推定を行ったと評価されるものではないこと
- 意向把握ツールの標準化・定型化は選択肢の一つとされる一方、ツールの利用結果のみをもって適切な意向把握を履行したとみなせるかは個別具体的に判断されること
- 前契約と同一の保険会社を希望する意向の扱い(過去の契約内容のみからの推定は不可)
目次
1 Ⅱ-4-2-9(5) ①B(a)の注3が加筆されたこと
| №307 |
| 「意向の推定」が「代理店による誘導」とならないようにすべきであると認識しているが、「誘導」に該当する具体例を示していただきたい。 |
| ご指摘のとおり、「意向の推定」が保険募集人による特定の保険契約への誘導とならないよう留意することは重要です。 個別具体的な事例を提示することは困難ですが、例えば、特定の保険契約の提案を前提として当該契約に適合するよう意向を推定する場合や、形式的に意向推定の手法を用いながら実質的に特定の保険契約の選別・推奨を行う場合には、一般的には、誘導又は比較推奨販売規制の潜脱に該当し得ます。 意向推定の方法は、例えば、保険会社の営業職員が顧客の自宅や職場などを訪問し、当初は潜在化している顧客の意向を顧客属性や生活環境等に基づき推定した上で、どのような意向を推定して個別プランを設計したのか、当該プランが当該意向とどのように対応しているのか等を説明しつつ、顧客との双方向的なやり取りを通じて、意向の明確化やその変化への対応を図る保険募集の場面に用いられることを想定したものです。 乗合代理店において意向推定の方法を用いるとした場合には、複数の保険契約の中から選別・推奨が行われることとなるため、意向推定の合理性・妥当性が推奨販売の適切性に直結し得ることとなります。乗合代理店が当該方法を用いる場合には、こうした観点を十分に踏まえ、推定の確度を含め、その合理性・妥当性の確保について特に慎重な検討・判断が求められるとともに、その後の保険募集の過程において、顧客の意向を丁寧かつ明確に確認し、その結果に基づく適切な選別・推奨を行う必要があります。 乗合代理店においては、このように比較推奨販売に係る規定の趣旨・目的に沿った対応を行うことが重要であり、この点を明確化するために、「顧客の意向を把握することには、Ⅱ-4-2-2(3)①ア.(注2)のとおり、例えば、顧客属性や生活環境等に基づき推定するといった方法が含まれるが、当該方法を用いて、比較推奨販売に係る規定の趣旨・目的に反する対応が行われないよう留意する。」との記載を追記いたします。 |
№302が意向推定型の趣旨をやや具体的に書いています。「なお、意向推定の方法は、例えば、保険会社の営業職員が、第一分野又は第三分野の保険契約について、当初は潜在化している顧客の意向を顧客属性や生活環境等に基づき推定した上で、対面で顧客と双方向的なやり取りを通じて意向を説明・明確化しつつ、その変化にも対応する保険募集の場面に用いられることを想定したものです。特に、乗合代理店において意向推定の方法を用いるとした場合には、推定した顧客の意向に基づき、複数の保険契約の中から選別・推奨が行われることとなるため、意向推定の合理性・妥当性が推奨販売(同号ロ)の適切性に直結し得ることとなります。乗合代理店が当該方法を用いる場合には、こうした観点を十分に踏まえ、推定の確度を含め、その合理性・妥当性の確保について特に慎重な検討・判断が求められるとともに、その後の保険募集の過程において、顧客の意向を丁寧かつ明確に確認し、その結果に基づく適切な選別・推奨を行う必要があります。」
監督指針にわざわざ注3として追記されたことから、乗合代理店においては、意向推定の確度は相当に高める必要がありますし、その後の募集過程で意向を丁寧かつ明確に確認することが求められています。
なお、№307は、 「意向の推定」が「誘導」に転化する典型(特定契約を前提として、これに適合するよう意向を推定する場合/形式的に意向推定の手法を用いながら実質的に特定契約の選別・推奨を行う場合)も例示しています。
2 意向推定型【II-4-2-2(3)③ア(注2)】との性質の違い。例示を行ったことのみをもって意向推定を行ったと評価されるものではないこと
| №308 |
| Q 顧客が特に重視すると考えられる事項を例示すると同時に、例示した事項を顧客の意向と推定して保険会社・商品を選別・推奨することは、監督指針Ⅱ-4-2-2(3)①ア.(注2)に記載される意向を推定する方法(意向推定型)として認められるとの理解でよいか。 |
| A 顧客が特に重視すると考えられる事項を例示する行為は、顧客の意向が不明確な場合に、その意向の形成を促すための手法として位置付けられるものです。 したがって、当該例示を行ったことのみをもって、Ⅱ-4-22(3)①ア.(注2)に定める意向の推定(把握)を行ったものと評価されるものではありません。 また、当該例示に基づき特定の保険契約を選別・推奨する場合には、当該推奨があらかじめ特定の保険契約の選別・推奨を企図した上で、これに適合するように意向を推定するものとなっていないか、顧客の主体的な意向の形成を経たものとなっているか、保険募集人による恣意的な誘導となっていないかに留意し、適切に対応する必要があります。 |
顧客が特に重視すると考えられる事項を例示する行為は、意向推定を行ったものとは評価されないことが確認されました。
| №645 |
| Q 職域内及び共通した属性を持つ個人の集った集団等、特定環境下での団体扱商品を案内する場合、福利厚生制度などを鑑みた推定意向を入り口とした団体扱商品の案内を行った上で、その他の商品を希望するか確認することを想定しているが、監督指針Ⅱ-4-2-9 (5) ①B.(b)「顧客の意向が不明確な場合であっても、保険契約の選別に当たっては、例えば、顧客が特に重視すると考えられる事項を例示するなど、可能な限り顧客の意向を把握」に適応しているという理解でよいか。 なお、「その他の商品を希望する」と回答があった場合には、改めて個別に意向把握の上、比較推奨・商品選定を行う想定でいる。 |
| A Ⅱ-4-2-2(3)①ア.(注2)に記載される意向を推定する方法(意向推定型)は、例えば既契約者など、保険募集人が把握している顧客属性や生活環境等に基づき、推定の確度に十分留意しつつ、合理性・妥当性のある推定をもって意向把握を行う方法です。一方、Ⅱ-4-2-9(5)①B.(b)の「顧客が特に重視すると考えられる事項を例示する」行為は、保険募集人が顧客の意向把握を行ったものの顧客の意向が不明確な場合において、顧客が特に重視すると考えられる事項を例示することを通じ、顧客の意向形成を促すといった態様を「可能な限り顧客の意向を把握するための方法」の一つとして例示したものです。したがって、両者は趣旨を異にするほか、保険契約者等の保護の観点から、意向推定は慎重に行われる必要があることから、団体や集団に対して意向推定の方法を用いた意向把握を行ったことのみをもって、顧客意向に沿うものとしてⅡ-4-2-9(5)①B.(b)を満たすと一律に判断されることは適当ではありません。その適切性については個別具体的に判断される必要があり、合理性・妥当性に欠ける意向推定が行われた場合には、意向把握・確認義務や情報提供義務が適切に履行されたことにはならない点に留意が必要となります。 |
意向推定と重要事項の例示の違いについて改めて述べたうえで、「保険契約者等の保護の観点から、意向推定は慎重に行われる必要があることから、団体や集団に対して意向推定の方法を用いた意向把握を行ったことのみをもって、顧客意向に沿うものとしてⅡ-4-2-9(5)①B.(b)を満たすと一律に判断されることは適当ではありません」とされました。
3 意向把握ツールの標準化・定型化は選択肢の一つとされる一方、ツールの利用結果のみをもって適切な意向把握を履行したとみなせるかは個別具体的に判断されること
| №313 |
| Q 保険商品の円滑な比較を行うために、「顧客が特に重視すると考えられる事項」を一定程度定型化(標準化)したツールを活用し、その回答結果をもって適切な意向把握プロセスを履行したとみなすことは可能か。 |
| A 貴見のようなツールを活用して意向把握を行う手法も選択肢の一つと考えられますが、顧客の意向は多様であることを踏まえ、保険業法第294条の2に基づく意向把握・確認義務が適切に履行されたか否かについては、Ⅱ-4-2-2(3)に照らして、個別具体的に判断される必要があります。 |
意向把握のため、特に重視すると考えられる事項を一定程度標準化したツールの活用も選択肢の一つとされました。ただ、顧客の意向は多様であることから、顧客とのコミュニケーションにおいて意向把握に漏れがないかは繰り返し検証がなされる必要があるでしょう。
| №465 |
| Q 顧客が特に重視すると考えられる事項を例示する際、保険募集人個人の主観や想像力に依存するのではなく、保険代理店として一定の客観的な選定基準(フローチャート等)を策定し、組織的に運用することを正当な業務プロセスとして認めることを明文化又は解釈として容認することを求める。 改正案では「顧客が重視する事項を例示」することが求められているが、これを個々の保険募集人の「想像力」に委ねた場合、担当者の価値観によって判断が分かれ、結果として「抽象的で不透明な説明」や「属人的な恣意性」を招くリスクがある。保険代理店が顧客のライフステージやニーズに応じた「標準的な推奨ロジック(フローチャート等)」をあらかじめ策定し、それに沿って意向を確認することは、保険業法第300条第1項第1号および第6号が禁じる「恣意的な誘導」を排除し、どの保険募集人が対応しても均質な「顧客本位の業務運営」を実現するために極めて有効である。組織的な基準策定が「恣意性」とみなされるのではなく、適正なプロセスであるという指針を明確にすべきである。 |
| A 顧客が特に重視すると考えられる事項を例示する際に、保険募集人ごとの属人的・恣意的な対応を防止するため、乗合代理店として、顧客属性、ライフステージ、リスク特性、取扱商品等を踏まえた確認項目や募集フロー、フローチャート等を社内規則等に定め、組織的に運用することは望ましい対応の1つと考えられます。 ただし、当該フローチャート等は、顧客の意向を適切に把握・確認するためのものであり、顧客の意向に先立って特定の保険会社又は特定の保険契約へ誘導することは適切ではありません。 また、フローチャート等を用いる場合であっても、各保険募集人においては、形式的・画一的なヒアリングにとどまらず、顧客の具体的な意向、理解度、属性、リスク状況等を踏まえ、必要に応じて追加確認を行うなど適切に意向把握をする必要があります。その上で、具体的な意向に沿って比較推奨販売を行う場合、Ⅱ-4-2-9(5)①に照らし、比較事項や提示・推奨する基準や理由等を適切に説明する必要があります。各代理店においては、当該フロー等の内容、運用状況、記録・検証方法、保険募集人への教育・管理・指導を整備し、恣意的な商品選別とならないよう留意することが重要です。 |
顧客が特に重視すると考えられる事項を例示する際に、保険募集人ごとの属人的・恣意的な対応を防止するため、乗合代理店として、顧客属性、ライフステージ、リスク特性、取扱商品等を踏まえた確認項目や募集フロー、フローチャート等を社内規則等に定め、組織的に運用することは望ましい対応の1つとされました。準備として非常に重要な項目です。
4 前契約と同一の保険会社を希望する意向の扱い(過去の契約内容のみからの推定は不可)
| №310 |
| Q 顧客が新たに保険契約に加入する際、顧客が他に加入する保険契約の引受保険会社と同一にすることを特に重視すると考えて、顧客が加入する他の保険契約の引受保険会社を選別・推奨することも認められるとの理解でよいか。 |
| A 顧客が過去の契約と同一の保険会社又は保険契約での加入を重視する意向を有する場合には、その意向に基づき当該保険契約を選別・推奨することは否定されるものではありません。 一方で、保険契約に係る顧客の意向は契約ごとに異なり得ることから、過去の契約内容や他の契約状況のみをもってこれを推定するのではなく、当該契約に係る具体的な意向を適切に確認した上で対応することが必要です。 また、Ⅱ-4-2-9(5)に照らして、顧客の意向を把握するに当たり、事前に顧客が重視する事項を丁寧かつ明確に確認し、当該意向に沿って選別・推奨することが求められるものと考えられます。 |
過去の契約内容や他の契約状況のみをもってこれを推定するのではなく、当該契約に係る具体的な意向を適切に確認した上で対応することが必要とされました。
執筆者プロフィール

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株式会社Hokanグループ 専門役員グループCPAO
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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