コラム

2026年4月13日
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【速報】再保険等の活用、リスク管理の高度化に関して、監督指針改正案が公表されました

4月8日、金融庁から各保険会社におけるリスク管理の高度化を促すとともに、既存の監督指針に規定されている考え方の明確化を図るための監督指針改正案が公表されました。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20260408/20260408.html

1 前提として、2025年保険モニタリングレポートとの関係

今回の改正案には、保険モニタリングレポート(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250704/02.pdf)の以下の部分(12p以下)が再保険の利用が活発化する中、リスク管理の高度化が求められる背景について整理されていて、改正案を読むにあたって理解の助けになります。

③ 生命再保険取引に関するモニタリング

生命保険会社において、長期間続いた低金利環境によって、保険負債の保有コストの増加および過去契約における採算性の悪化等が発生した。このような状況下で、収益変動を抑え、資本効率を向上させるため、生命再保険の利用が活発化している。

こうした中で、伝統的に再保険によって移転されていたバイオメトリック・リスク(死亡・長寿等)だけでなく、運用リスクも移転する「資産集約型再保険(Asset-Intensive Reinsurance, AIR)」の利用が拡大している。また、昨今は、PEファンドが設立した再保険会社が積極的にAIR取引に参画する等、その市場規模はより拡大してきており、金利上昇局面においてもこの傾向が継続することが予想される。

このような背景もあり、足元、日本においても、生命保険会社によるオフショア市場への再保険取引、特に、資産集約型再保険の取引への関心が高まっている。 また、国際的にも、資産集約型再保険については、カウンターパーティリスクや集中リスク等が指摘されるとともに、特に資産運用会社を同一グループ内に持つ再保険会社への出再に関しては、その資産運用会社が掲げる利益目標が再保険会社のリスクアペタイトに影響を及ぼしうるという、潜在的な利益相反リスクも指摘されている

今般の生命再保険取引が増加傾向にあることを鑑みれば、生命保険会社による再保険取引に対するリスク管理への期待はより高まっている。金融庁は、これらの国際的議論の状況や再保険取引の増加を踏まえつつ、生命保険会社による再保険取引の実態や各生命保険会社におけるリスク管理状況等を把握するため、2024 事務年度においては、全生命保険会社を対象に再保険取引の活用状況に関するアンケート調査を実施した。 

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250704/02.pdf

また、生命再保険取引のリスクについても以下の通り述べられています。

生命再保険取引は、生命保険会社にとって強力な財務戦略、リスク管理のツールとなり得る一方で、保険販売の推進等を目的に保険商品の予定利率向上を企図して実施する社もある。しかしながら、生命再保険取引については、カウンターパーティリスクや集中リスクを孕んでおり、その取引量が増加すればそれに比例してそのリスクも増加するものである。そのような中、生命再保険取引の実施にあたっては、保険会社において、適切な内部管理体制を構築し、再保険のリスク・リターンを自ら分析し、それらがリスク管理部門等の第二線及び第三線において評価され、最終的に各生命保険会社のリスクアペタイトに応じて、その合理性が適切に機関決定されることが重要である。また、再保険取引に伴うカウンターパーティリスク等のリスク管理の更なる高度化が求められる。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250704/02.pdf

2 保険契約を再保険に付した場合の責任準備金の不積立てについて

保険契約を再保険に付した場合に、当該再保険を付した部分に相当する責任準備金を積み立てないことができるとされていますが、この取扱いの可否は、当該再保険契約がリスクを将来にわたって確実に移転する性質のものであるかどうかや、当該再保険契約に係る再保険金等の回収の蓋然性が高いかどうかに着目することとされています。

今回の改正では、この点について、形式面だけでなく、実質的な判断を求めるものです。

具体的には、

・保険事故発生率悪化時等に出再者が実質的な補てん義務を負い、リスクが出再者に戻る構造が生じていないか。 

・受再者の裁量により、一定時点又は一定事象発生時に、再保険契約の一部または全部の終了・リキャプチャー(再保険契約を解約し、関連する資産を回収した上で、以後のリスクを自己保有することをいう。以下同じ。)が生じ得る構造となっていないか。 

など、再保険契約の具体的な内容まで監督する内容となっています。

3 Ⅱ-3 統合的リスク管理態勢 Ⅱ-3-3-3 ストレステスト 

ストレステストは、「感応度テスト等を含むストレステスト(想定される将来の不利益が生じた場合の影響に関する分析)及びリバース・ストレステスト(経営危機に至る可能性が高いシナリオを特定し、そのようなリスクをコントロールすべく必要な方策を準備するためのストレステスト)」のことをいい、保険会社において市場の動向等も勘案しつつ、財務内容及び保有するリスクの状況に応じたストレステストを自主的に実施することが求められています。

今回の改正では、資産集約型再保険(主として年金・長期貯蓄性保険等の資産運用収益への依存度が高い保険契約について、

「当該保険負債とこれに対応する資産に係るリスクを再保険者へ移転し、再保険者が資産運用リスクと保険引受リスクを包括的に負担する再保険形態)において、取引規模や期間を勘案しリスクが大きい資産集約型再保険については、経済環境の変化が複数の出再先の健全性に与える影響も分析し、再保険契約に及ぼす影響として、リキャプチャーや再保険会社の破綻の複数発生と、それらに伴うソルベンシー・マージン比率や財務への影響(資産のリバランス、責任準備金積立の影響など)を考慮したストレスシナリオを設定しているか。」

として、新たなストレステストのシナリオ設定が明記されました。

再保険会社の破綻やリキャプチャー(再保険契約を解約し、関連する資産を回収した上で、以後のリスクを自己保有すること)を考慮するシナリオを求めています。

4 Ⅱ-3-10 再保険に関するリスク管理 Ⅱ-3-10-1 保有・出再に関するリスク管理 

以下のとおり管理の視点が追記されています。

「保険会社は、自社のリスク選好を踏まえて再保険のリスク・リターンを分析し、その結果を統制機能(注)で重要度に応じて評価し、最終的にその合理性を適切に機関決定する必要がある。再保険は複数の法域にまたがって取引されることも多い中で、再保険会社等との契約関係が非常に複雑となり、取引内容の理解が困難となるほか、特定の法域や再保険会社に取引が過度に集中するおそれがある。」

そこで、再保険契約の性質として、①出再先の健全性に関する基準、②再保険会社の属性毎、法域毎、エクスポージャーの集中に関する基準、③担保に関する方針、④リキャプチャーに関する方針について含まれていることが求められます。その他、再保険契約締結に際しての着眼点が詳細に記載されています。

なお、エクスポージャーの集中については、以下のような報道もどの地域に着目されているかについて参考になります。

国内の保険会社の間では、積極的な資産運用を手掛ける米ファンド系の再保険会社と契約を結び、保険契約の一部を移転するケースが増えている。金融庁は引受先の再保険会社が租税回避地の一つである英領バミューダに集中していることなどにも関心を持ち、昨年には実態調査に乗り出していた。

金融庁が再保険利用で生保の監督強化へ、リスク移転の厳格検証求める https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-04-08/TD64HFKJH6V500#gsc.tab=0

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長

2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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