コラム
【速報⑤】令和7年保険業法改正に係る内閣府令等の公布及びパブリックコメント結果の公表についてを読む③

内閣府令(保険業法施行規則)(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20260330/01.pdf)の続きです
Ⅱ 保険会社等による保険契約者等への過度な便宜供与の禁止(規則第232条の2、命令第94条の2、金サ令第60条の2関係)
№187
Q(4)保険会社等による保険契約者等への過度な便宜供与の禁止・保険契約者又は被保険者と密接な関係を有する者を規制対象に拡充について、憲法22条 営業の自由を阻害する範囲を拡大しており、改悪だと感じる。公金を使用するわけでもなく、売り手側の企業努力によるものを健全か否かまで調査せず、一律に規制している。そもそも、商品差を制限している保険商品に関して健全な便宜供与は認められるべき。健全か否かを審議するべきで、対象者を決めることは間違っている消費者のリテラシー向上にまず務めるべきであり、AI活用や商品差別化で営業自由を損なわずに市場を健全化できる余地があることをまずは検討してみては?
A 今般、保険商品・サービスの内容等に基づく競争環境の実現等を趣旨として、保険業法改正を行ったものです。ここでの禁止対象は、「取引上の社会通念に照らし相当であると認められないもの」であり、保険契約者又は被保険者と密接な関係を有する者に対して、一律に全ての便宜供与を禁止するものではありません。 その他の御意見については、貴重な御意見として承ります。
特別利益の提供の禁止について、その趣旨に「保険商品・サービスの内容等に基づく競争環境の実現等」が含まれることが明らかとされました。今後の特別の利益提供の禁止の解釈において重要なキーワードとなりそうです。
№190
Q 第232条の2保険会社又は保険募集人は、Ⅱ-4-2-2(8)①に照らして、社会通念に照らし相当であると認められない取引等ではないことを前提として、以下の対応は法違反とはならないという理解でよいか。
・保険募集を行うに際し、あらかじめ保険契約者若しくは被保険者の密接な関係者との取引の有無を確認しないこと
・取引等を行うに際し、あらかじめ当該取引の相手方が保険契約者又は被保険者と密接な関係を有する者に該当するか否かを確認しないこと
A 当該取引等が、監督指針Ⅱ-4-2-2(8)①に照らして、社会通念に照らし相当であると認められないもの等ではないという前提の下で、御理解のとおりです。
Ⅱ-4-2-2(8)①に照らして、社会通念に照らし相当であると認められない取引等ではないことを前提としている対応方法について回答されています。
事前に取引の相当性についてチェックした場合には、相手方についての確認が不要ということですから、Ⅱ-4-2-2(8)①の各項目の取引の相当性をチェックする仕組みの構築が求められます。
Ⅲ 保険仲立人の活用促進に向けた対応等(規則第117条、規則第212条の6、規則第220条)
№194
Q 施行規則改正案第220条第4項第3号について法第294条第1項 (情報の提供)について保険業法294条1項違反については、2016年5月29日付業法改正時の施行規則に関するパブコメ(12、13から16)において、件数にかかわらず届出が必要との回答が示されていることは認識しているが、不祥事件届出該当としての保険業法294条1項の情報提供義務違反については、「保険契約者等の保護」の視点から、 単純に外形的な違反(重要事項説明書の未交付等)だけで判断するのではなく、実質的な情報提供の状況に基づく判断は可能か。
例えば、顧客苦情等を契機として、保険業法307条1項3号後段違反としての「話法相違・説明不十分」が判明したときに、同時に保険業法294条1項の情報提供義務違反も問う、あるいは、主に新規契約について、契約概要と注意喚起情報やそれに代わる資料を交付せず、苦情があり契約取消になったケースなど、著しく契約者保護に欠ける行為は不祥事件に該当する可能性がある、といった考え方は可能か。
法第294条の2 (顧客の意向把握等)について2016年5月29日付保険業法改正時の施行規則に関するパブコメ(12、13から16)においては、保険業法294条の2違反については、件数にかかわらず届出が必要との回答が示されていることは認識しているが、不祥事件届出該当としての保険業法294条の2の意向把握・確認義務違反については、 「保険契約者等の保護」の視点から、単純に外形的な違反(意向把握・確認書面の不備)だけで判断するのではなく、実質的な意向把握・確認の状況に基づく判断は可能か。
例えば、保険業法307条1項3号後段違反としての「了解不十分」「話法相違・説明不十分」が判明したときに、同時に保険業法294条の2の意向把握・確認義務違反も問う、あるいは、契約者に意向を確認する機会を与えず、その結果として契約取消や大幅な条件変更が発生した場合には、不祥事件に該当する可能性がある、といった考え方は可能か。
A 保険業法等の法令違反がある場合には、ご指摘の法第294条第2項、第294条の2の規定に違反する行為がある場合を含めて不祥事件届出が必要となりますので、届出の要否については法令等に照らして適切に判断する必要があると考えます。
なお、規則第220条第4項第6号においては、保険仲立人の業務の健全かつ適切な運営に支障を来す行為又はそのおそれのある行為であって、規則第220条第4項第1号から第5号までに掲げる行為に準じるものに該当する行為を行った場合についても、届出が必要となる点にご留意ください。
不祥事件の届出についての回答です。実務では不祥事件の件数のカウントの仕方が非常に難しいケース(一つの行為の結果で複数の法令違反となる場合、同時に複数の顧客に被害を与える場合など)が多くあります。法令違反の数え方については実態を踏まえて、過少に申告することが無いように各社ごとによく検討をすることが求められます。
なお、不祥事件届出について、「不祥事件の発生を知った日から 30 日以内」に提出することとされ、法においては届出義務の時効は設けられておらず、民事上の規定を類推適用することはないと明記されました(№200)従いまして、10年前に起きた不祥事件であって、資料が散逸していても、発生していたことを知った日から30日以内に届出義務があることになります。
執筆者プロフィール

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株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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