コラム

2025年9月3日
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【速報⑨(パブコメ№280~354)】令和7年8月28日公表 「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について を読む

10 Ⅱ-4-2-14 部分(№280~354)

Ⅱ-4-2-14 代理店手数料の算出方法
個々の代理店手数料の算出方法については、代理店委託契約に基づき、損害保険会社と保険代理店との間の協議・合意により決定されている。この算出方法について、保険代理店に保険募集に関する業務の健全かつ適正な運営を阻害する不適切なインセンティブを与え、不適切な保険募集を誘引することがないよう、以下の点に留意するとともに、これらの潜脱が防止されているか。なお、代理店への手数料の算出に当たっては、保険募集に関する業務の健全かつ適正な運営を確保する観点から、コンプライアンス上不適切な事案の発生状況等を考慮しているか。
(1) 損害保険会社による評価項目としては、「規模・増収率」に偏ることなく、「業務品質」を重視しているか。
(2) 業務品質評価の具体的な指標について、損害保険会社の事務効率化にとどまらず、顧客にとってのサービス向上や法令等遵守に資するものとなっているか。
(3) 乗合代理店におけるシェアの拡大・維持や、保険代理店の新設や乗合いの承諾を得るなどの営業上の目的で、他の損害保険会社の代理店手数料の割増引率に追随するなどの例外的な運用を行っていないか。
(4) 業務品質評価割合の考え方を開示しているか。 

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/02.pdf

(1)柱書部分

  • 本項は、「主に「代理店手数料ポイント制度」を指して、代理店手数料算出方法の適正化に係る着眼点を示したものではありま
    すが、「潜脱の防止」について規定しているとおり、保険募集に関する適正な運営を確保する趣旨に鑑み、保険商品別の代理店手数料率についても、代理店に不適切なインセンティブを与えるような運用がなされないよう留意する必要がある(№280)
  • 一般論としては、生命保険会社等においても、代理店手数料の算出方法が保険代理店に保険募集に関する業務の健全かつ適正な運営を阻害する不適切なインセンティブを与え、不適切な保険募集を誘引することがないよう注意する必要がある(№282)
  • 「コンプライアンス上疑義のある事案」を一律に「疑義」の段階で評価するのではなく、発生事象の実態に応じ、問題であることが確定してから評価するなどの対応も想定され得る点を明確化するため、「コンプライアンス上不適切な事案」に修正(№296)
  • コンプライアンス上不適切な事案の発生状況等を考慮する場合には、保険会社は、保険代理店との丁寧な対話を行う等、恣意的な運用や優越的地位の濫用を行わないよう十分に留意する必要があると考えます。このような条件が満たされているのであれば、保険代理店の責めに帰すべき苦情が著しく多く発生している状況を考慮することはあり得る(№293)
  • コンプライアンス上不適切な事案には、「確定判決・行政処分等がなされたものに限らず、コンプライアンス上の疑義が生じていると保険会社が合理的に判断する事案や、保険会社からの要請にも関わらず保険代理店が保険会社に対する情報提供を拒むなど、解明が困難な事案も含まれる」(№294)

(2)(1) 損害保険会社による評価項目としては、「規模・増収率」に偏ることなく、「業務品質」を重視しているか。

  • 保険会社による代理店の評価に基づいて代理店手数料率に較差を設けない場合、直ちに「規模・増収率」に偏っているとはいえない(№301)

(3)(2) 業務品質評価の具体的な指標について、損害保険会社の事務効率化にとどまらず、顧客にとってのサービス向上や法令等遵守に資するものとなっているか。

  • 「顧客にとってのサービス向上や法令等遵守に資するものとなっているか。」との記載における「法令等」についても、一義的には保険契約者等の利益を保護するために遵守が必要な保険業法等の各関係法令を指す(№310)

№311

Q. 何をもって「損害保険会社の事務効率化」「顧客にとってのサービス向上」「法令遵守」に資するとするかは、一律に定まるものではなく、業務品質評価に係る具体的な指標は、保険会社が顧客本位の業務運営を実現するうえで適切と考えるものを採用することが認められるという理解でよいか。

A.貴見のとおりです。
なお、その際には、顧客との接点となっている保険代理店の意見も十分に踏まえる必要があると考えます。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/01.pdf

業務品質評価に係る具体的な指標は、保険代理店の意見も十分に踏まえて保険会社が採用するものとされました。

№315

Q.現在、保険会社の業務品質は、ドラレコ付帯率・お客様専用ページの登録・顧客アンケートの回収率など保険会社都合の内容が多く決して顧客本位の品質は言えない。代理店業務品質評価に関する第三者検討会が作成した、自己点検チェックシートが標準の業務品質となると考えて良いのか。

A. 業務品質評価に係る具体的な指標については、保険会社において、顧客本位の業務運営を実現する観点に基づいて検討の上決定するものであり、一概に適否を述べることは困難です。なお、自己点検チェックシートについては、保険代理店が体制整備に関する PDCA を主体的・自立的に推進するツールの1つとして日本損害保険協会が作成・公表しているものと承知しておりますが、各保険会社の代理店手数料との連動については、各社において検討されるものと考えます。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/01.pdf

活用が議論されていた自己点検チェックシートについて、各保険会社の代理店手数料との連動については、各社において検討されるものとされました。

(4)(3) 乗合代理店におけるシェアの拡大・維持や、保険代理店の新設や乗合いの承諾を得るなどの営業上の目的で、他の損害保険会社の代理店手数料の割増引率に追随するなどの例外的な運用を行っていないか。

  • シェアの拡大・維持等の営業上の目的をもって、保険契約単位で代理店手数料の加算を行うことも、恣意的な運用を招く恐れが生じるため、改正案で示す「例外的な運用」に該当し得る(№328)
  • Ⅱ-4-2-14(3)にいう 「例外的な運用」に該当すると考えられる事例としては、あらかじめ定めた評価の枠組みで決定された代理店手数料ポイントを適用せずに、例外的な運用によって、実際には別の手数料ポイントを適用するような事例が該当する(№329)

№325

Q.Ⅱ-4-2-14(3)の 「例外的な運用」とは特定の保険代理店にのみに適用する恣意的な上乗せ代理店手数料を指しているものであり、顧客にとってのサービス向上等に資する基準を設定したうえで、その基準をクリアした保険代理店に上乗せ代理店手数料が適用されることは問題ないという理解でよいか。また、そのような理解でよい場合、基準をクリアする保険代理店が全体の何%程度であれば恣意的とはみなされないという目安はあるか。

A.貴見のとおりです。
その上で、御質問のとおり、保険募集に関する業務の健全かつ適正な運営を阻害しないよう、業務品質を重視して客観的かつ公平に設定した基準・ルールを適切に適用している場合には、基準を充足する保険代理店の割合が論点になることはないと考えます。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/01.pdf

これは非常に示唆的な回答です。特定の一社しか基準を満たさないような客観性、公平性を欠くような基準・ルールの設定は問題になり得ると思いますが、本回答によれば、客観的かつ公平に設定した基準がハードで、その基準を超える代理店が、結果として1社であっても、そのこと自体が論点になるものではないと解されます。

№327

Q.Ⅱ-4-2-14(3)に関して、お客様のニーズに応じて個別に補償内容を設計する保険契約のうち、汎用的に販売している保険契約と比べて、保険募集にかかるコストが大きく異なる等の合理的な理由があるものについては、保険商品別の代理店手数料率とは異なる代理店手数料率を適用するケースがあるが、同一の条件下で代理店間で適用代理店手数料率に差を設けるものでなければ、ここでいう「例外的な運用」には該当しないという理解でよいか。 

A.貴見のように、合理的な理由により通常とは異なる代理店手数料率を適用する場合、保険募集に関する業務の健全かつ適正な運営を阻害しないよう、業務品質を重視して客観的かつ公平に設定した基準・ルールに基づいて、適切に適用するものであれば、「例外的な運用」には該当しないと考えます。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/01.pdf

合理的な理由により通常とは異なる代理店手数料率を適用する場合の具体例と解されます。これに対して、乗合代理店については以下の№331を確認することが必要です。

№331

Q.乗合代理店の比較推奨販売において、商品は顧客が決定するものである。保険会社ごとに代理店手数料の割増引率が大きく異なると、代理店経営上、保険会社を絞り込むことにつながり、結果として顧客の選択肢を狭める恐れがある。Ⅱ-4-2-14 (3)の規定は、適正な募集管理態勢が確立されていると認められる乗合代理店に対して、市場での商品普及のため、また市場での健全な競争に参画するために他の損害保険会社の代理店手数料の割増引率に追随することは否定していないとの理解でよいか。

A.Ⅱ-4-2-14 (3)は、特定の保険代理店に対し、シェア拡大・維持等の営業上の目的で他の損害保険会社の代理店手数料の割増引率に追随するなどの恣意的な運用が行われることで、保険代理店における業務品質向上に向けたインセンティブを阻害することがないよう求めるものです。Ⅱ-4-2-14 で「潜脱の防止」について規定しているとおり、保険募集に関する適正な運営を確保する趣旨に鑑み、御質問にあるような乗合代理店に対しても、他の損害保険会社の代理店手数料の割増引率に追随するのではなく、保険代理店の「業務品質」を重視した客観的な基準に基づき、代理店手数料が算出される必要があると考えます。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/01.pdf

市場での商品普及のため、また市場での健全な競争に参画するために他の損害保険会社の代理店手数料の割増引率に追随することは、「潜脱の防止」から問題があるものと解されます。

(5)(4) 業務品質評価割合の考え方を開示しているか。 

  • Ⅱ-4-2-14(4)の「業務品質評価割合の考え方」とは損害保険会社が「規模・増収率」や「業務品質」といった代理店評価に基づいて代理店手数料率を算定する場合に、「業務品質」の評価割合をどのような考え方で、どのように設定しているか等を指す(№341、342)
  • 「開示の方法」については、顧客本位の業務運営の観点から、保険会社のホームページ及びディスクロージャー誌といった、顧客の目に触れる媒体での開示が望ましい(№343、344)

▼【速報⑩】令和7年8月28日公表 「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について を読む
https://hkn.jp/column/

執筆者プロフィール

中村 譲

中村 譲
株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長

2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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