コラム

2024年10月31日
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【速報】金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第3回)視聴メモ

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社hokan 法務・コンプライアンス室長/弁護士
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。
都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。
平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。
これまでに「金融機関の法務対策6000講(共著)」「ペット保険の法的課題(慶應大学保険学会)」「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情2024.9.17)」を執筆し、日経新聞(2024.9.4朝刊金融経済面)にもコメントが掲載。

 

10月30日、金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第3回)(以下「WG」)が開催されました。前回までと同じく、youtubeにて配信された審議のなかで特に気になる点を整理したいと思います。

本日多くの意見が出たのは、保険仲立人の活用と保険金関連事業を兼業する保険募集人への対応の論点でした。

 

1 保険仲立人の活用に向けた施策

保険仲立人の活用については以下の5つが論点として挙げられています。

1、媒介手数料の受領方法
2、保証金の供託
3、保険代理店等との協業
4、海外直接付保
5、その他(不祥事件の届け出義務化)

これらの論点でも③~⑤については企業のグローバル化、適切な保険プログラムの構築、金融庁による監督の必要性等など理由を述べつつ、各委員からはおおむね受け入れられた印象です。

論点①、②については、リテールなのか企業保険の場面に限るのか、顧客の属性などが大きく異なってくることもあり、規制の仕方について各委員それぞれの認識のもとに発言がなされました。

論点①について

https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo_wg/siryou/20241030/1.pdf

企業保険のみをスコープとすべき委員もいれば、リテールも対象と考えて意見を述べた委員もおり、手数料について開示義務を設けるのか、開示請求権とするのか、保険会社に対しても手数料を開示すべきではないのか(保険料も含めて顧客のコストが高くならないようにすべきではないか)など、これからさらに詳細な検討、場合分けが必要となりそうです。もっとも、顧客側から報酬を受け取ること自体については多くの委員が説明義務を課すことを条件として認める方向に進みそうです。

論点②について

https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo_wg/siryou/20241030/1.pdf

保証金の金額について、これまで大きな問題がないことから引き下げる、という検討がなされるなか、そもそも保険仲立人が活用されていない現状にあって、大きな問題が生じていないことを所与の事実として扱ってよいのか、という議論がなされています。また、複数の委員から、将来的には賠償責任保険への加入に移行することも視野に入れるべきとの意見も出ました。

 

*保険仲立人のユーザーの活用動機等

保険仲立人のユーザーとして、主に高度な専門性が要求される企業保険が想定されます。ここに関連して、保険契約者の側におけるリスクマネージャーの活用が改めて意見として述べられました。この点については、適格リスクマネージャーのようなものを設けて、将来的に海外保険にかかる規制を緩和することも議事録に残されることで、今後の検討課題になってくるものと思われます。

 

2 保険金関連事業を兼業する保険募集人への対応

この論点については、中小規模の保険募集人も対象とする可能性があり、実務上影響が大きい論点と思われます。

議論の中心は態勢整備義務を課すか否かという以下の点でした。

□中小規模の保険募集人に対しても、何らかの対応を求めるとすれば、例えば、次のようなものが考えられるか。

- 兼業の弊害防止に関する一般的・理念的な規定に関して、現在、「顧客本位の業務運営に関する原則」に基づく取組方針を公表した保険募集人は一部にとどまっていることから、中小規模の保険募集人も含め、「顧客本位の業務運営に関する原則」の周知を図り、同原則の理念を踏まえた自主的な取組みを促す。

- 規模にかかわらず全ての保険募集人に対し、体制整備等を求める。また、これらの他に中小規模の保険募集人に求める対応として、何か考えられるものはあるか。

この点について、すでに金サ法が改正されて保険募集人も適用対象となっていること、顧客本位の業務運営の原則はすでにソフトローとして無視しえないものであることからすれば、利益相反に関する方針を定め、体制整備を求めるということは理念としてはすでに一定程度求められている状態とも考えられます。これが監督指針や法令で明文化されるかは要注目です。

 

3 その他の論点

https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo_wg/siryou/20241030/1.pdf

特別利益の提供は契約者の平等、実質的な割引、割り戻しを禁止する趣旨の規程ですが、今回は便宜供与の観点から議論の俎上に上がってきました。特別利益の提供として禁止される行為のなかに、「保険契約者からのサービスの利用や物品の購入、役務の提供等」のうち、保険契約締結の締結を左右するような趣旨のものを含めることが検討されています。これまでも特別利益の提供は実務的には日常的に検討が必要な論点であり、その境界については議論が尽きない分野ですが、これから新たな類型が追加されることによって、(この規程の趣旨が変わる可能性も含めて)大きな変革がなされる可能性があると感じます。

https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo_wg/siryou/20241030/1.pdf

第2回WGで議論された大規模な保険代理店への対応ですが、あらたに考え方が追加されました。ポイントは当局によるモニタリングの深度とリソースのバランス、機動的なモニタリングのための事業報告書の記載内容の充実などがあげられます。

まだ具体的な対象の確定までは至っていませんが、上乗せ規制をされる大規模代理店という枠組みの新設の方向で進むものと思われます。

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