コラム

2024年7月1日
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【法律のプロが解説!】令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等の公表について、保険会社向け監督指針の改正案が公表されました。

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社hokan 法務・コンプライアンス室長/弁護士
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。
都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。
平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。
これまでに「金融機関の法務対策6000講(共著)」「ペット保険の法的課題(慶應大学保険学会)」「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情2024.9.17)」を執筆し、日経新聞(2024.9.4朝刊金融経済面)にもコメントが掲載。

令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等の公表について、保険会社向け監督指針の改正案が公表されました。

令和6年6月27日、金融庁「令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等の公表について」の中で別紙13として、「保険会社向けの総合的な監督指針 新旧対照表」が公表されました。

https://www.fsa.go.jp/news/r5/shouken/20240627/13.pdf

*本改正案はパブリックコメント終了後、所要の手続を経て公布、施行の予定となっています。パブリックコメントの期限は令和6年7月27日(土曜)17時00分(必着)までとなっており、公表されるパブリックコメントにも注視が必要です。

今回の改正案では、監督指針に「顧客の最善の利益を勘案した誠実公正義務(金融サービス提供法第2条)」が明記されます。

【新設】
Ⅱ-4-4-1 顧客の最善の利益を勘案した誠実公正義務(金融サービス提供法第2条)

(1) 主な着眼点
保険会社が、その業務を通じて、社会に付加価値をもたらし、同時に自身の経営の持続可能性を確保していくためには、顧客の最善の利益を勘案しつつ、顧客に対して誠実かつ公正にその業務を行うことが求められる。そこで、保険会社が、必ずしも短期的・形式的な意味での利益に限らない「顧客の最善の利益」をどのように考え、これを実現するために自らの規模・特性等に鑑み、組織運営や商品・サービス提供も含め、顧客に対して誠実かつ公正に業務を遂行しているかを検証する。また、保険募集人についても上記に準じて検証することとする。

(2) 監督手法・対応
日常の監督事務や、不祥事件届出書等を通じて把握された保険会社の誠実・公正義務上の課題については、深度あるヒアリングを行うことや、必要に応じて法第 128 条の規定に基づく報告を求めることを通じて、保険会社における自主的な業務改善状況を把握することとする。保険会社の業務の健全かつ適切な運営の確保又は顧客保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、法第 132 条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。さらに、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、法第 133 条の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。また、保険募集人についても上記に準じて必要な対応を検討するものとする。

出典:https://www.fsa.go.jp/news/r5/shouken/20240627/13.pdf

ポイント

⚪︎ 保険会社のみならず、保険募集人ついても顧客に対して誠実かつ公正に業務を遂行しているかが検証されることとなること

⚪︎ 誠実・公正義務上の課題については、深度あるヒアリングを行うこと、必要に応じて法第 128 条の規定に基づく報告を求めること

⚪︎ 重大な問題があると認められる場合には、法第 132 条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行い、さらに、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、法第 133 条の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討すること

保険業法ではなく、金融サービス提供法の観点から、ヒヤリングが実施されること、業務改善命令や業務停止命令が出されることが明記されていることは重要と思われます。

また、保険募集人についても保険会社に「準じて」検証するとされているため、保険代理店、保険募集人においても誠実義務に関して今後注意を払っていくことが求められます。

 

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