コラム
代理店業務品質評価に関する第三者検討会(第2回)資料公開
執筆者プロフィール
-
株式会社hokan 法務・コンプライアンス室長/弁護士
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。
都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。
平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。
これまでに「金融機関の法務対策6000講(共著)」「ペット保険の法的課題(慶應大学保険学会)」「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情2024.9.17)」を執筆し、日経新聞(2024.9.4朝刊金融経済面)にもコメントが掲載。
関連記事
- 2024年11月8日「令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等に関するパブリックコメントの結果等について」が公表されました。
- 2024年10月31日【速報】金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第3回)視聴メモ
- 2024年10月23日代理店業務品質評価に関する第三者検討会(第2回)資料公開
- 2024年10月16日【法律のプロが解説!】金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第2回)視聴メモ
【関連記事】
- 【法律のプロが解説】損保協会においてガイドラインが複数公表されました
- 【法律のプロが解説】2024年事務年度金融行政方針「実績と作業計画」が公表されました
- 【法律のプロが解説】「保険仲立人の活用」の議論についていくために予習しておくこと
- 【法律のプロが解説!】金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第2回)視聴メモ
10月21日、損保協会において開催されている代理店業務品質評価に関する第三者検討会の第2回の配布資料が公開されました。
https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003trt-att/20241021_shiryo_0_shidai.pdf
その中から、資料2~5の要点を追いたいと思います。
- 資料2 「代理店業務品質評価に関する第三者検討会」に寄せられた意見概要および意見に対する考え方(案)について
- 資料3 代理店の業務品質に関する第三者評価制度について【事務局提案資料】
- 資料4 「代理店業務品質に関する評価指針(損害保険代理店向け)」(案)【事務局提案資料】
- 資料5 顧客本位の業務運営の観点からみた業務品質について
目次
第1 資料2 意見概要および意見に対する考え方(案)について
代理店業務品質評価に関する第三者検討会に寄せられた意見を以下の4項目に分類して紹介しています。
- 業界共通の評価基準を作り、損保協会で制度運営していく方向性の是非について
- 評価基準や項目を、どのように代理店手数料ポイント制度に組み込んでいくか
- 評価指標について
- その他
このなかでは、代理店手数料ポイントについて「代理店手数料ポイント制度は業界共通制度ではなく、各損保会社が営業政策の観点で独自に実施・運営しているものであるため、公正かつ自由な競争を確保する独禁法の趣旨も踏まえ、その内容については本検討会での議論の対象とはしません。ただし、有識者会議報告書の指摘に沿って、同ポイント制度における業務品質評価の考え方について、顧客本位の業務運営の観点で整理する第三者評価制度における評価基準と連動させることの重要性についても明確化する予定です。」との回答があることから、議論のスコープが明確にされた点が重要です。
また、「ご意見の点に関しては、金融庁の有識者会議報告書(7ページ下段)において、検討することが望ましいことの1つとして「損害保険会社において業務品質評価についての考え方を開示すること」が示されており、各損保会社にて必要な対応等が検討されていくものと認識しています。」との回答から、各損害保険会社の考える業務品質評価についての考え方が開示されてくることが重要と思われます。
第2 資料3 代理店の業務品質に関する第三者評価制度について【事務局提案資料】について
https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003trt-att/20241021_shiryo_3_daisansya.pdf
資料3がこの第2回検討会のアジェンダであり、7つの項目から構成されています。
- 第三者評価制度の位置づけ
- 評価基準のあり方および適用範囲の考え方
- 運営体制に関する検討
- 自己点検チェックの取組み
- 結果公表、監督当局との情報連携
- 通報等窓口の運用イメージ
- その他
第三者評価制度の位置づけについて、「基本的には「代理店指導等の延長」と位置づけられ、保険会社にあっては主体的な参画が求められる。」ものであって、「代理店自身の取組みによって完結する制度設計としない(保険会社の積極的な関与を求める)ため、代理店における「自主規制」の構図にはならない。」と述べられています。
そのうえで、作成される評価基準の在り方については、以下のように整理されています。
・「評価基準」は業界共通、すべての代理店に適用可能なもの
・評価基準(評価の項目及び指標)は、代理店の規模や特性に応じたものとして、画一的にはしない
・顧客本位の業務運営の観点で最低限必要な業務品質が確保されているかを判定できるようなものとする
https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003trt-att/20241021_shiryo_3_daisansya.pdf
ここで自己点検チェックを利用した業務品質検証というものがあります。自己点検チェックについては、これまでも代理店の自立的な取り組みとして実施されていますが、今後は積極的に活用されることとなり、それをもとに保険会社との対話が繰り返し実践されることが提案されています。
https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003trt-att/20241021_shiryo_3_daisansya.pdf
第3 資料4 「代理店業務品質に関する評価指針(損害保険代理店向け)」(案)【事務局提案資料】について
前回は骨子案が公表された評価指針ですが、今回はその本編の案文が公表されました。
注目点は以下の通りです。
- 意向把握義務、情報提供義務について
ここでの注目点は、損保型では求められてこなかった「振り返り」について言及がされています(Ⅱ―2-1-2-1-2(1)ウ)。今後損保における意向把握に関する実務に大きな影響を与えうる重要な論点になりそうです。
参考 募集コンプライアンスガイド(2024年2月版) 20頁
https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2023/pdf/boshuguide_202402.pdf
情報提供義務については、重要事項説明時に「募集人は、契約締結前に「契約概要」および「注意喚起情報」の内容を顧客が理解するための十分な時間を確保している。」ことが求められました。これはBM事件の行政処分に理由が求められます。
https://www.fsa.go.jp/news/r5/hoken/20240125/20240125.html
比較推奨販売では、「募集人は、形式的には客観的な基準・理由等に基づく商品の絞込みや提示・推奨を装いながら、実質的には代理店が受け取る手数料水準の高い商品に誘導するために商品の絞込みや提示・推奨を行っていない。」ことが求められます。実質的に、となっていることから、その判断には個別具体的な事情を加味することとなります。
- 対象代理店について
対象となる代理店について大規模代理店は必須とすることが検討されていましたが、基本的にすべての代理店を対象とし、対象外について検討することとされています。
- 自己点検チェック
自己点検チェックについては、各項目ができているかの確認とどまらず、それらの意義や真の意味での顧客本位の業務運営について対話を繰り返すこととされています。
第4 資料5 顧客本位の業務運営の観点からみた業務品質について
代理店側から見た業務品質についての意見がまとめられています。代理店の規模と業務品質、顧客への情報提供と業務品質、事故対応と業務品質、お客様の声と業務品質、その他の項目で整理されています。「規模と業務品質について」は特に議論が深まっていくことが期待されます。
https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003trt-att/20241021_shiryo_5_daikyo.pdf
また、「その他」の項目は保険募集など顧客との直接の関係がない事項についても業務品質に含めるべきとの意見であり、事業継続の観点などからすれば興味深い視点です。結論として「保険会社が重要と考える業務品質と代理店が重要と考える業務品質には、一定の差があるように思われる。」と整理されており、様々な切り口、立場から業務品質について検討を加えていくことは重要であり、継続的に続けられる必要があると思われます。
おすすめのセミナーをご紹介
概要
直近1年強の間に起きた保険業界の不祥事によって形成された会議体から、様々な切り口での提言が発信されてきました。現在もなお議論は続き、今後、保険代理店にとってこれまでない大きな変化が予想されます。今回のセミナーでは、この1年のトピックを振り返りながら、保険代理店が今後どのように対応していくべきと考えられるのか、解説してまいります。
本セミナーで分かること
・直近1年の損保業界の主要トピック振り返り
・保険金不正請求事案
・カルテル問題
・情報漏えい問題
・過度の便宜供与
・有識者会議やその後の金融庁動向から読み解く今後の損保態勢整備に求められるポイント
・ワーキンググループ(WG) 「乗合代理店規制」「ブローカーの活用」
・損保ガイドライン「出向制度の廃止による、自社でのガバナンス強化や営業推進」
・第三者評価制度(損保)「評議会の立ち上げ」「評価指針骨子案(顧客管理システム)」
・新たな損保態勢整備における実務イメージ
このような課題をお持ちの方におすすめ
・保険業界で直近1年に発生したトピックに関して認識が断片的で振り返りたい方
・迫る業法改正に向けて、現在公表されている情報を読み込む時間が取れない方
・損保の態勢整備について情報収集したい方
保険代理店が態勢整備について新たに気をつけるべきポイントを知ることで、今後の運用方法について改めて見つめ直すきっかけとなれば幸いです。
セミナー後に見逃し配信も用意しておりますので、当日参加できない方もぜひ視聴予約をいただければ幸いです。
皆様のお申し込みをお待ちしております。
登壇者紹介
中村 譲
株式会社hokan 法務・コンプライアンス責任者/弁護士
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、法務責任者として株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。
石野 太一
株式会社hokan カスタマーサクセスマネージャー
2017年関西学院大学卒業後、外資系生命保険株式会社に入社。その後営業部新潟支社に異動。様々な業態の代理店を担当。特に代理店における募集人育成人材採用面での課題解決に従事。その後2021年hokanに参画。お客様を変革と成功に導くカスタマーサクセス部門においてシステム導入〜利用定着支援まで幅広くサポート。
参加方法
申込後にwebinar@bizibl.tvより専用の参加リンクを送付いたします。
※迷惑メール対策などをされているかたは、迷惑メールボックスにご案内メールが入っている場合がありますので、ご確認下さいませ。
参加時の注意事項
■ 参加費
無料
■ 個人情報の取り扱いについて
株式会社hokanが取得した個人情報は、今後のイベントの企画・ご案内・告知・受付・お問合せ等対応および関連サービスのご案内のため、共同して利用させていただきますのでご了承ください。
事務局のプライバシーポリシーは以下のとおりです。
株式会社hokanの個人情報保護方針は下記HP記載しております。
https://www.corp.hkn.jp/privacy-policy