コラム
登壇とブース訪問@InsurtechInsightsAsia2024
執筆者プロフィール
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株式会社hokan 法務・コンプライアンス室長/弁護士
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。
都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。
平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。
これまでに「金融機関の法務対策6000講(共著)」「ペット保険の法的課題(慶應大学保険学会)」「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情2024.9.17)」を執筆し、日経新聞(2024.9.4朝刊金融経済面)にもコメントが掲載。
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12月4日、香港で開催されたInsurtech Insights Asia 2024で登壇しました。いくつか訪問したブースについて、これから保険業法改正を迎える我々にとっても示唆に富む経験でしたので、今回はそのイベントを振り返り、今後に繋げたいと思います。
1 Insurtech Insights Asia 2024
https://www.insurtechinsights.com/asia/
hokanでは、保険業界の最前線を体感し、メンバーの視座を高めるため、Insurtech Insights Asia 2024に6名で参加しました。このイベントは、保険業界とテクノロジーで活躍する専門家たちが一堂に会し、未来を形作るイノベーションについて議論するアジア最大級のカンファレンスです。AIやデータ分析、ブロックチェーン、そして顧客体験のデジタル化といった最新のトレンドが報告、議論されました。
2 スピーチの概要
香港でのスピーチでは、日本の保険業界が直面する課題と法改正、デジタル化の進展が当社(hokan)にとって追い風であること、保険の流通過程の特徴として欧米では主流であるブローカーではなく、代理店が重要なチャネルであることを報告しました。現地ではほとんど日本人に出会うことがありませんでしたので、このような場で日本の保険業界の視点を共有できたことは大きな意義があったと思っています。
https://www.corp.hkn.jp/news/category/press/241205
3 訪問したブースの報告
イベントでは報告の前にいくつかブースを訪問しました。それぞれが非常に興味深いものでしたが、特に以下の3社について注目したいと思います。
1、bolttech
Bolttechはグローバル規模で保険流通プラットフォームを提供しています。Bolttechのブースでは法務担当と簡単にあいさつし、「ブローカーがユーザーと保険会社をダイレクトにつなぐプラットフォームを提供している。日本市場にも興味があるけど言葉の壁があるのでレギュレーションがあまりよくわからない」とのことでしたが、今後日本ではブローカーの活用が促されますから、未来の顧客体験を支える仕組みとして導入されていく可能性を強く感じました。
Eazy Digitalは中小規模の保険事業者向けに手軽に導入できる保険管理システムを提供しているタイのスタートアップです。当社(hokan)と類似したサービスであり、保険代理店とブローカーのプラットフォームサービスで、Harprem Doowa CEOは「hokanのことは知っている。そっくりなサービスだよね。私たちも日本では東京海上と一緒にやっていて、日本語のチラシもあるんだ」といって今後の日本での展開も進んでいくのではないかと思います。
3、FormX.ai
FormX.aiは、AIを活用した書類処理の自動化ソリューションを提供しています。特にOCR技術を用いたデータ抽出において優れており、紙ベースの業務が多い保険業界にとって大幅な効率化を実現できる可能性を秘めています。
ブースではインボイスを読み込んでChatGPTのAIで読み込むことができると大きなパネル展示されていて、多くのユーザーが見学に訪れていました。
実際にデモを見させてもらいましたが、保険診療明細を撮影するだけで請求書が作成されていくので、保険会社に対する保険金支払請求を行うサポートツールとして大変有効と思いました。
ただ、日本ではサービス提供者が海外企業である場合、個人情報の活用の関係から導入には時間がかかりそうと感じます(この点については、詳細な検討はしていませんがサービス提供者が日本企業の場合、データの保存方法がクラウド利用であるとの整理であれば、ユーザーが自ら自身の個人情報を入力して請求書を作成するだけともいえそうで、自身の情報の形式を整えるツールともいえそうとも思われます)し、また診療明細の書式が日本語でも十分な精度で読み込めれば、すぐに実現できそうな技術との印象であり、革新的なものとまでは感じませんでした。
4 全体の感想と未来への展望
Insurtech Insights Asia 2024を通じ、アジアの保険市場におけるデジタル化の進展とその勢いを肌で感じました。私自身、弁護士としてまずは法規制の範囲内で考えてしまうところがありますが、こうして新しいプロダクトを見ることで、日本市場に新しい技術や知識をどのように導入し、未来に向けたサービスを構築していくかを改めて考える機会となりました。
保険業法改正の議論も多くの海外の制度を参考にしていますし、法改正によるブローカーの活用によって、日本企業が海外の保険会社を活用する機会も増えてきますから、今回の経験を活かし視座を高めて業界の発展に貢献していきたいと思います。