コラム

2024年12月18日
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代理店業務品質評価に関する第三者検討会の議論を追う②

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社hokan 法務・コンプライアンス室長/弁護士
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。
都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。
平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。
これまでに「金融機関の法務対策6000講(共著)」「ペット保険の法的課題(慶應大学保険学会)」「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情2024.9.17)」を執筆し、日経新聞(2024.9.4朝刊金融経済面)にもコメントが掲載。

金融審議会と並行して第三者検討会の議論も進んでおり、第4回の配布資料が12月9日に公表されています。実務上大きな影響を与えると思われる部分を確認します。

1.資料2(別紙3)「代理店業務品質に関する評価指針(損害保険代理店向け)」(案)

( https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003trt-att/20241209_shiryo_2_betsu3.pdf )(以下、「評価指針案」)

(1)基本的考え方

評価指針案の解釈の仕方が最初の基本的考え方として説明されています。ポイントは、特に業務品質のうち顧客本位の業務運営に関する項目に絞って作成されていること、最低限必要な業務運営が確保されているか判定できるものとされていることです。

この業界共通の評価基準は、損保会社間の公正な競争を阻害することがないよう十分に留意したうえで、代理店の業務品質のうち顧客本位の業務運営に関する項目・内容に沿って構成し、かつ、最低限必要な業務運営が確保されているかを判定できるようなものとし、また、第三者による評価運営においても、損保会社による代理店指導等を補完する枠組みの中で、 顧客本位の業務運営の徹底に資するよう、適切な代理店の業務品質評価を追求していく。(評価指針案5p)

(2)具体的な評価項目及び評価指標について

①意向把握・意向確認

評価指標として、意向把握の「プロセス」について適切に実施していることが求められています。やはり当初意向と最終意向の比較および両者が相違している場合は相違点を確認している(いわゆる振り返り)ことが求められていることが実務の大きな変更点となります。

(評価指針案8p)

契約後のフォローについても「募集人は、契約後の顧客との接点を通じ、契約内容が意向と合致しているか、意向に変化がないか等を確認し、必要な商品・サービスを提案する取組みを行っている。」(Ⅱ-2-1-2-1-2(4))とされており、顧客の最善の利益をより追及した内容になっています。また、「店主等は、募集人が規定等を理解し、適切に意向把握・意向確認を行っていることを確認している。」(Ⅱ-2-1-2-1-2(6))として、証跡を残し検証を行う(単に意向把握・意向確認を行っていることの確認だけでなく、「適切に…行っていることの確認」をする)ことが求められます。

 

②比較推奨販売

(評価指針案10p〜11p)

比較推奨販売について、現在金融審議会のWG報告書案でも以下のように整理されています。

(12月13日版報告書案8p)
https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo_wg/siryou/20241213/1.pdf

この12月13日版報告書案からしますと、評価指針案Ⅱ-2-1-3-3-2(3)について、「募集人は、自店独自の方針(代理店・募集人側の理由・基準を含む)により特定の商品を提案する場合、その基準や理由等を丁寧に説明している。

※自店独自の方針は、合理的かつ、法令等に抵触しないものとする。

※提案する基準や理由等は、特定の保険会社との資本関係やその他の事務手続・経営方針上の理由に留まることなく、具体的でわかりやすいものとする。」としている施行規則第227条の 第3項第 4号ハ(いわゆるハ方式)の部分は今後変わってくる可能性がありますので、注視していきたいと思います。また、評価指針案Ⅱ-2-1-3-3-2(8)では「(8)店主等は、募集人が適切に比較推奨販売を行っていることを確認している。」とされ、募集人ごとに「適切に」比較推奨販売を行っていることの確認が求められます。

 

③兼業代理店に関する事項

兼業代理店については、特別利益の提供の禁止の点で記載がなされています。

  • Ⅱ-2-1-4-1-2(1)キ(代理店が他業を兼業している場合)他業のサービスの割引等の提供
  • Ⅱ-2-1-4-3-2(2)他業を兼業する場合、募集人は、他業の顧客に対して各種のサービスや物品等の提供を行う際に、それらサービス等の費用を保険会社や代理店が実質的に負担していないことを確認している。また、顧客への訴求方法等によって、保険契約の締結または保険募集に結びつくことがないことを確認している。

 

④不祥事件対応

(評価指針案36p)

不祥事件の対応について、乗合代理店は、乗合代理店の置かれた立場とすべての乗合保険会社の当該代理店に対する指導等の実効性上の必要性を踏まえ、すべての乗合保険会社に対応状況等を共有することが求められています。

これは、「乗合代理店において不祥事検討が発生した場合、ほかの乗合会社においても同様の事態が発生している可能性がある、あるいはその未然防止に向けた対応に役立てるため、顧客利益を害することの無い業務運営を行う観点から、特に情報共有を求めることとしています。」(資料1『「代理店業務品質評価に関する第三者検討会」に寄せられた意見概要および意見に対する考え方(案)について』の№13 https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003trt-att/20241209_shiryo_1.pdf )と趣旨が説明されています。

おそらく先般の情報漏えい事案が念頭にあるものと思われますが、不祥事件の届出をうけた乗合会社は、当該乗合代理店に対して監査や調査を行うことの要否、さらに自社での不祥事件届出の要否について検討を迫られることとになると思われます。

この点は、12月13日版報告書案においては「特定大規模乗合保険募集人」に対して課される義務として、保険会社に対して、「保険会社が保険代理店に係る不祥事件届出書を当局に提出した場合、同保険代理店自身が、同不祥事件届出書に係る情報を他の所属保険会社等に通知すること」(報告書案7p)としたことを受けたものなのか、それとも異なる役割なのか、今後の整理をよくよく読み込むことが必要になりそうな部分です。

 

2.資料3「代理店指導等の実効性向上に向けた取組み~保険会社の制度活用を促す施策~」(案)

https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003trt-att/20241209_shiryo_3.pdf

本資料では、具体的な施策が整理されています。

中でも自己点検チェックシート(https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003trt-att/20241209_shiryo_3_betsu.pdf)の見直しは実務に直結するものです。

現在公表されているサンプルから、第三者評価における考え方が垣間見えます。比較推奨販売の在り方や、過度の便宜供与などのサンプルが公表されており、一度目を通しておくことが有用です。

業務における取り組み内容を記述式で回答することを求めることとされており、具体的な対応状況の正確な記述と、丁寧な自己チェックが求められます。形式的なチェックでは回答ができず、深度のある対応が求められそうです。

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