コラム

2026年3月23日
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【速報】保険業法改正と少額短期保険規制 ― 横展開の中で強化された共同保険ルール ―

19日に保険業法改正に伴う少額短期保険業者向け監督指針の見直しが公表されています。

全体としてみれば、保険会社向け監督指針の考え方を横展開したものです。
比較推奨販売や特別利益提供規制などの主要論点は、いずれも既存の枠組みと同一の構造に基づいて整理されており、規律の「新設」というよりも、これまで保険会社に求められてきた水準を少額短期保険にも適用したものと思われます。

しかし、その中にあって一つ、性質の異なる重要な改正があり、それが、共同保険契約に関する規律の新設です(https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20260319-3/20260319-3.html)。

 

Ⅱ-3-16 共同保険契約

Ⅱ-3-16-1 意義

少額短期保険業者が他の少額短期保険業者と共同保険契約を引き受ける場合、自らの引受け分以外の部分について、連帯責任を負うものではないことから、共同保険契約の保険金額の上限は、各参加者の引受限度額を合計した保険金額まで認められている。 他方で、共同保険契約は、元来、単独での引受けが困難な大きなリスクに対応する等のリスク分散・平準化のための行為であることから、少額短期保険業者の事業規模や引受保険金額に上限を設けた趣旨に反しないよう留意する必要がある。 例えば、共同保険契約を引き受ける複数の少額短期保険業者が、実質的に一体として経営や業務運営をしている場合においては、少額短期保険業者が引き受けられる保険金額に上限を設けた趣旨に反する蓋然性が高い。 さらに、少額短期保険持株会社や少額短期保険主要株主等が、複数の少額短期保険業者を傘下に置き、傘下の少額短期保険業者間において共同保険契約を引き受ける場合には、グループ単位で見ると、個社ごとのリスクが遮断されていないおそれがあることから、適切に共同保険契約を引き受けるための態勢を整備することが重要である。 

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20260319-3/01.pdf

これまでも少額短期保険において実務上、複数の少額短期保険業者が共同保険として契約を引き受けることで、法令上の保険金額の上限を実質的に増やすことが可能と解されてきました 。これは各引受会社が連帯せず、自らの引受割合に応じた個別の責任のみを負うという性質を利用したもので、各社の責任額が法定限度内であれば、合算して限度額を超える保障を提供しても差し支えないと解釈されているものです 。例えば、上限1,000万円の損害保険を2社が50%ずつ共同で引き受ければ、計2,000万円の保障が可能となります 。通常は同一グループ内の会社間で運用されており、限度額を遵守しつつ顧客ニーズに応える手法として確立されていました (藤嶋・山本「少額短期保険の実務」(きんざい 2022年7月)65p)。今回の監督指針改正案は、この実務上の運用を大きく変えるものです。

Ⅱ-3-16-2 主な着眼点

(1) 少額短期保険業者が、上記意義を踏まえ、他の少額短期保険業者と共同保険契約を引き受ける場合、下記について検証することとする。

① それぞれの少額短期保険業者が、経営管理、人的構成、財務の観点から独立し、リスクを遮断できているか。

(注) 少額短期保険持株会社が、経営管理業務(法第272条の38第1項)や共通・重複業務(法第272条の38の2第1項)として行うものなど、グループにおけるガバナンスの確保又は業務の一体的かつ効率的な運営を行う上で合理的な理由がある場合には、個別具体的に判断するものとする。

② 少額短期保険業者において、共同保険契約に関し、適切な保険募集を行う態勢が整備されているか。 例えば、保険募集時において、セーフティネットがないことの説明に加え、募集資料等により、共同保険契約であること、自らの引受け以外の部分について連帯責任を負うものではないこと、さらに、他の少額短期保険業者が破綻した場合、必要な保障・補償額が得られない可能性があることを保険契約者等に明示し、説明するなど、共同保険契約に係るリスクも含めた商品内容を適切に説明する態勢を整備しているか。

(2) 少額短期保険持株会社や少額短期保険主要株主等が、複数の少額短期保険業者を傘下に置き、傘下の少額短期保険業者間において共同保険契約を引き受ける場合、下記について検証することとする。

① 少額短期保険持株会社又は少額短期保険主要株主において、共同保険契約に関する保険引受リスクをグループ全体として適切に管理できる体制や、傘下の少額短期保険業者を必要に応じて指導できる態勢が構築されているか。

② 少額短期保険持株会社又は少額短期保険主要株主において、傘下の少額短期保険業者に対して、グループでのリスク集積を踏まえた増資等の十分な資金援助ができる財政基盤があり、実際に資金援助等が必要となる場合に継続的に対応し得るか。

(注) 上記(2)に該当しない少額短期保険業者が共同保険契約を引き受ける場合においても、当該少額短期保険業者の株主その他資本関係等を考慮しつつ、上記に準じて取り扱うものとする。 

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20260319-3/01.pdf

とりわけ問題となるのは、グループ内での共同保険です((2)の場合)。

形式上は複数の少額短期保険業者が引き受けている場合であっても、経営や財務が実質的に一体であれば、リスクは分散されておらず、単なる見かけ上の分散にとどまります。このため改正案は、各社の独立性やリスク遮断性に加え、持株会社等によるグループ全体でのリスク管理体制や資本支援能力の有無まで踏み込んで検証対象としています。

さらに、この論点は募集実務にも影響がある点が重要です。すなわち、共同保険契約であること、自社が他社分について責任を負わないこと、さらには他社が破綻した場合に必要な保障が得られない可能性があることなどについて、契約者に対する明確な説明が求められることとなります。

パブリックコメントの締め切りが4月19日とされており、実務の運用に影響がある上記の論点には多くの質問が寄せられるのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長

2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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