コラム
【速報⑧】(保険会社等に対する体制整備義務の強化①特定大規模乗合保険募集人に業務を委託する場合)令和7年保険業法改正に係る内閣府令(案)等に対するパブリックコメントの実施についてが公表されました

今回からは保険募集人ではなく、(監督指針の本来の名宛人である)保険会社向けの部分です。
(3)保険会社等に対する体制整備義務の強化
・特定大規模乗合保険募集人に業務を委託する場合の措置
・兼業業務を行う特定保険募集人(兼業特定保険募集人)に関して損害保険会社に求める措置
今回は特定大規模乗合保険募集人に業務を委託する場合の措置を見ます。
今回のポイント
- 保険会社は
- 特定大規模乗合保険募集人に委託する場合の方針を策定する義務がある。
- 特定大規模乗合保険募集人に該当するか否か、該当しなくなった場合はその背景まで確認する義務がある。
- 特定大規模乗合保険募集人における保険業法その他保険募集に関する法令等(法令又は法令に基づく行政官庁の処分をいう。)の遵守状況を検証するため、管理責任者を選任するとともに、管理責任者がその業務を適切に遂行できるよう、必要に応じて適切に人員の配置を行う必要がある。
- 管理責任者は法令等や保険契約に関する知識を有するのみならず、コンプライアンス部門や監査部門での業務や代理店監査等に従事した経験を有することが望ましい。
特定大規模乗合保険募集人に業務を委託する場合の措置
1 保険業法施行規則改正案
(委託方針の策定)
第五十三条の十三
生命保険会社は、特定大規模乗合生命保険募集人(生命保険募集人のうち、二以上の所属保険会社等を有する法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)であって各事業年度における所属保険会社等から保険募集の業務(法第二百九十四条の三第一項に規定する保険募集の業務をいう。第五十三条の十四の二第一項第一号及び第百三十三条の五第一項第一号において同じ。)に関して受領した手数料、報酬その他の対価の額が第二百十五条の三第一項に規定する額以上であることその他同条第二項各号のいずれか又は第三項の規定に該当するものをいう。以下同じ。)に保険募集を行わせるときは、当該特定大規模乗合生命保険募集人による保険募集の事業の規模を背景とする当該生命保険会社に対する影響力により当該生命保険会社の業務の健全かつ適切な運営及び公正な保険募集が損なわれることのないよう、当該特定大規模乗合生命保険募集人から第二百十五条の四第一項第八号に規定する通知を受けた日から起算して一月以内に、当該特定大規模乗合生命保険募集人への委託に関して方針を定めなければならない。
2 損害保険会社は、特定大規模乗合損害保険代理店(法第二百九十四条の四に規定する特定大規模乗合損害保険代理店をいう。以下同じ。)に保険募集を行わせるときは、当該特定大規模乗合損害保険代理店による保険募集の事業の規模を背景とする当該損害保険会社に対する影響力により当該損害保険会社の業務の健全かつ適切な運営及び公正な保険募集が損なわれることのないよう、当該特定大規模乗合損害保険代理店から第二百二十七条の二十一第一項第五号に規定する通知を受けた日から起算して一月以内に、当該特定大規模乗合損害保険代理店への委託に関して方針を定めなければならない。
(管理責任者の設置)
第五十三条の十三の二 生命保険会社は、特定大規模乗合生命保険募集人に保険募集を行わせるときは、当該特定大規模乗合生命保険募集人の業務の適切な運営を確保するため、当該特定大規模乗合生命保険募集人から第二百十五条の四第一項第八号に規定する通知を受けた日から起算して一月以内に、当該特定大規模乗合生命保険募集人における法その他保険募集に係る法令等(法令又は法令に基づく行政官庁の処分をいう。次項において同じ。)の遵守状況を検証るための責任者を設置しなければならない。 2 損害保険会社は、特定大規模乗合損害保険代理店に保険募集を行わせるときは、当該特定大規模乗合損害保険代理店の業務の適切な運営を確保するため、当該特定大規模乗合損害保険代理店から第二百二十七条の二十一第一項第五号に規定する通知を受けた日から起算して一月以内に、当該特定大規模乗合損害保険代理店における法その他保険募集に係る法令等の遵守状況を検証するための責任者を設置しなければならない
施行規則改正案において、保険会社は、特定大規模乗合保険募集人に対する委託に関する方針を定めることが求められることとなりました。また、管理責任者の設置も施行規則案で求められています。
2 監督指針改正案
Ⅱ-4-2-15 特定大規模乗合生命保険募集人及び特定大規模乗合損害保険代理店に対する保険募集の委託
Ⅱ-4-2-15-1 特定大規模乗合生命保険募集人及び特定大規模乗合損害保険代理店に対する保険募集の委託・管理
(1) 特定大規模乗合生命保険募集人及び特定大規模乗合損害保険代理店(以下「特定大規模乗合保険募集人」という。)に対して保険募集の委託を行うにあたり、保険会社において、その業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保する観点から、以下の措置が講じられているか。
① 特定大規模乗合保険募集人に該当する旨は、新たに該当することとなったとき又は特定大規模乗合保険募集人が新たに所属保険会社等を有することとなったときに、特定大規模乗合保険募集人から保険会社に対して通知されるため、当該通知を受けた場合には適切に対応すること。特に、当該通知は初年度のみになされることを踏まえ、特定大規模乗合保険募集人に該当する保険代理店を適切に教育・管理・指導するとともに、毎年その状況を確認し、特定大規模乗合保険募集人に該当しなくなったことが判明した場合には、その理由や背景等に疑義がないか(不適切な行為に起因するものではないか等)を確認すること。 また、二以上の所属生命保険会社等又は所属損害保険会社等から受領した手数料、報酬、その他の対価の額の総額(以下「手数料等の総額」という。)が規則第215条の3第1項及び第2項又は規則第227条の16第1項及び第2項に定める額である20億円に満たない事業年度(以下「基準未達事業年度」という。)の翌事業年度及び翌々事業年度(以下「翌二事業年度」という。)の間においても、規則第215条の3第3項又は規則第227条の16第3項に基づき、以下ア.及びイ.の区分に従い、特定大規模乗合保険募集人として取り扱うこと。
ア. 基準未達事業年度の前事業年度の手数料等の総額が20億円以上であり、基準未達事業年度に二以上の所属保険会社等(特定大規模乗合生命保険募集人の場合は所属生命保険会社等、特定大規模乗合損害保険代理店の場合は所属損害保険会社等に限る。以下①において同じ。)から受け取る手数料等の総額が10億円以上20億円未満である場合は、当該基準未達事業年度の翌事業年度
イ. 基準未達事業年度の前事業年度の手数料等の総額が20億円以上であり、基準未達事業年度及びその翌事業年度に二以上の所属保険会社等から受け取る手数料等の総額がそれぞれ10億円以上20億円未満である場合は、翌二事業年度までの間
② 特定大規模乗合保険募集人への委託に関して、規則第53条の13に基づき以下の内容を含む方針を定め、当該方針に沿った対応を実施すること。また、当該方針については、定期的に検証を行い、必要に応じた見直しを行うこと。
ア. 特定大規模乗合保険募集人への委託の考え方
イ. 特定大規模乗合保険募集人に対する教育・管理・指導や代理店監査等の実施方法・頻度等に関する考え方(注)
(注) 特定大規模乗合保険募集人における法令等遵守態勢(法令等遵守責任者や統括責任者の配置状況を含む。)や法令等遵守状況の定期的な検証方法のほか、法令等遵守に不備が認められた場合の対応方針及び具体的な対応方法を含む。また、特定大規模乗合保険募集人において顧客の適切な商品選択の機会を阻害するおそれがあり、適切な改善が図られないと見込まれる場合の対応方針及び具体的な対応方法も含む。
ウ. 特定大規模乗合保険募集人に対する便宜供与に関して、Ⅱ-4-2-12(1)①を踏まえて講じる措置の内容
エ. 特定大規模乗合保険募集人への委託にあたって、法令等遵守責任者や統括責任者に求める要件
③ 規則第53条の13の2に基づき、特定大規模乗合保険募集人における保険業法その他保険募集に関する法令等(法令又は法令に基づく行政官庁の処分をいう。)の遵守状況を検証するため、管理責任者を選任するとともに、管理責任者がその業務を適切に遂行できるよう、必要に応じて適切に人員の配置を行うこと。 なお、管理責任者には、特定大規模乗合保険募集人に設置が義務付けられる統括責任者を主たる相手方として特定大規模乗合保険募集人の法令等遵守態勢(法令等遵守責任者や統括責任者の配置状況を含む。)や法令等遵守状況を確認・検証し、保険会社による教育・管理・指導の実効性を向上させることが求められる。この観点からは、管理責任者は法令等や保険契約に関する知識を有するのみならず、コンプライアンス部門や監査部門での業務や代理店監査等に従事した経験を有することが望ましい。
④ 上記②イにより定めた方針に沿って、特定大規模乗合保険募集人における法令等遵守態勢や法令等遵守状況について、適切な頻度により定期的に検証を行い、不備が認められる場合には是正を求めること。
⑤ 保険会社による特定大規模乗合保険募集人の業務運営との関連性が認められる費用の負担や代理店手数料の設定について、「Ⅱ-4-2-12 保険代理店等に対する便宜供与」及び「Ⅱ-42-14 代理店手数料の算出方法」を踏まえたものであるかの検証を行うこと。
⑥ 規則第215条の4第1項第4号及び規則第227条の21第1項1号に基づき特定大規模乗合保険募集人が定める保険募集指針の内容を確認し、当該保険募集指針に沿った対応がなされていない場合には、改善を促すこと。
(2) 監督手法・対応 監督当局は、上記(1)に係る取組状況について、必要に応じて法第128条に基づき報告を求めるとともに、重大な問題があると認められる場合には、法第132条又は第133条に基づき行政処分を行うものとする。
特に、特定大規模乗合保険募集人該当性について目を配る必要があります。
特定大規模乗合保険募集人に該当する旨の通知は、「当該通知は初年度のみになされることを踏まえ、特定大規模乗合保険募集人に該当する保険代理店を適切に教育・管理・指導するとともに、毎年その状況を確認し、特定大規模乗合保険募集人に該当しなくなったことが判明した場合には、その理由や背景等に疑義がないか(不適切な行為に起因するものではないか等)を確認すること。」とされました。このまま読むと、特定大規模乗合保険募集人に該当する場合、すべての乗合保険会社から、一斉に教育・管理・指導を行われることになりますので、乗合保険会社によって違う内容で教育、管理、指導された場合の対応が実務上問題となりそうです。
また、特定大規模乗合保険募集人に該当しないとなった場合、その理由や背景に疑義がないかもすべての乗合保険会社が確認することになりますから、各社の対応の進め方が今後議論されると思われます。
その他、「保険会社による特定大規模乗合保険募集人の業務運営との関連性が認められる費用の負担や代理店手数料の設定について、「Ⅱ-4-2-12 保険代理店等に対する便宜供与」及び「Ⅱ-4-2-14 代理店手数料の算出方法」を踏まえたものであるかの検証を行うこと。」とされた点も重要です。これも各保険会社ごとに異なる検証結果が出た場合、どういった対応が必要なのか、悩ましい問題です。手数料に関する条項(Ⅱ-4-2-14)についても、Ⅱ-4-2-14は損害保険会社宛ての条項となっていますが、生命保険会社もこの条項を考慮に入れることが必要と思われます。
執筆者プロフィール

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株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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