コラム

2026年1月5日
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【速報⑤】((兼業業務関連)特定大規模乗合損害保険代理店に対する体制整備義務の強化)令和7年保険業法改正に係る内閣府令(案)等に対するパブリックコメントの実施についてが公表されました

速報⑤は特定大規模乗合損害保険代理店に対する体制整備義務の強化(兼業業務関連)です。

(2)特定大規模乗合損害保険代理店に対する体制整備義務の強化(兼業業務関連)

・対象となる特定大規模乗合損害保険代理店

・兼業業務に係る体制整備等

・苦情処理体制の整備

・内部監査・社内通報等に関する体制の整備

今回のポイント

1.体制整備義務の対象となる兼業業務が明確化
今回の改正では、体制整備義務の対象となる兼業は、「保険金の支払に不当な影響を及ぼすおそれがある業務」に限定され、施行規則により自動車修理業務およびこれに付随する業務と明確に特定された。

2.特定大規模乗合損害保険代理店に対し、兼業業務に対して独立の体制整備が義務化
対象代理店には、兼業業務について、対象業務の特定、監視体制の構築、監視責任者の設置、社内規則の整備、方針の策定・公表、記録の保存といった包括的な体制整備が求められます。

3.監視責任者の設置と見積の適切性に関する証跡管理・説明可能性
特に、自動車の損傷状況や修理内容、見積額の適切性に関する証跡を記録・保存し、定期的に検証する体制と、それを担う実効性ある監視責任者と人員配置が求められます。

4.考え方は特定大規模乗合代理店にとどまらず、他の損害保険代理店にも影響
保険金を原資として対価を得る業務を行う代理店については、規模・特性に応じて、特定大規模乗合代理店に準じた体制整備を行うことが望ましいとされ、業界全体への規律の一般化が示唆されています

1 兼業業務関連の対象となる特定大規模乗合損害保険代理店

まずは改正保険業法の条文(保険業法第二百九十四条の四第4号)を確認します。

(特定大規模乗合損害保険代理店の業務運営に関する措置)

第二百九十四条の四

特定大規模乗合損害保険代理店(損害保険代理店のうち、二以上の所属保険会社等を有する法人であって各事業年度における所属保険会社等から保険募集の業務に関して受領した手数料、報酬その他の対価の額が内閣府令で定める額以上であることその他内閣府令で定める要件に該当するものをいう。第二号及び第四号において同じ。)は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる措置を講じなければならない。

(略)

4.       第百条の二の二第二項に規定する兼業特定保険募集人である特定大規模乗合損害保険代理店にあっては、次に掲げる措置

イ)   その行う保険募集の業務以外の業務(第百条の二の二第二項に規定する保険募集の業務以外の業務をいい、保険金の支払の請求に関するものに限る。以下この号において同じ。)が保険金の支払に不当な影響を及ぼさないよう適切に監視することその他の当該特定大規模乗合損害保険代理店が行う保険募集の業務以外の業務により当該特定大規模乗合損害保険代理店又はその所属保険会社等が行う保険関連業務に係る顧客の利益が不当に害されることを防止するために必要な措置として内閣府令で定める措置

ロ)   その行う保険募集の業務以外の業務に係る苦情を受け付けるための体制の整備、当該苦情の処理に関する記録を作成しこれを保存することその他の当該特定大規模乗合損害保険代理店が行う保険募集の業務以外の業務に係る苦情の適切かつ迅速な処理を確保するために必要な措置として内閣府令で定める措置

5.       その他内閣府令で定める措置

兼業特定保険募集人を定める保険業法第百条の二の二第二項は以下のとおり

2前項の「兼業特定保険募集人」とは、第二百七十六条に規定する特定保険募集人のうち、第二百九十四条の三第一項に規定する保険募集の業務以外の業務(当該業務の対価にその所属保険会社等から保険契約に基づき支払われる保険金が充てられる業務であって当該保険金の支払に不当な影響を及ぼすおそれがある業務として内閣府令で定めるものに限る。)を行う者をいう。

今回公表された施行規則案第五十三条の十四の三、この内閣府令にあたります。

(保険金の支払に不当な影響を及ぼすおそれがある業務)

第五十三条の十四の三

法第百条の二の二第二項に規定する内閣府令で定めるものは、自動車の修理業務及びこれに付随する業務とする

www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217/01.pdf

したがって、今回の法改正の対応が必要となる兼業は、自動車修理業及びこれに付随する業務と明確になりました。

2 兼業業務に係る体制整備等

(特定大規模乗合損害保険代理店における保険募集の業務以外の業務により顧客の利益が害されることを防止するための措置)

第二百二十七条の二十

法第二百九十四条の四第四号イに規定する内閣府令で定める措置は、次に掲げる措置とする。

一 対象業務(当該特定大規模乗合損害保険代理店が行う保険募集の業務以外の業務(保険金の支払の請求に関するものに限る。次条第一項第六号において同じ。)をいう。以下この項において同じ。)を特定するための体制の整備

二 対象業務がその所属保険会社等による保険金の支払に不当な影響を及ぼさないよう適切に監視すること。

三 前号の監視のための責任者の設置、社内規則等(社内規則その他これに準ずるものをいう。)の整備その他の体制の整備

四 対象業務の全部又は一部を委託する場合は、その委託先の監督に際して、当該特定大規模乗合損害保険代理店又はその所属保険会社等が行う保険関連業務に係る顧客の利益が不当に害されることを防止するための体制の整備

五 第二号から前号までに掲げる措置の実施の方針の策定及びその概要の適切な方法による公表

六 次に掲げる記録の保存

イ 第一号の体制の下で実施した対象業務の特定に係る記録

ロ 第二号の対象業務の監視に係る記録

ハ 第三号及び第四号の体制の整備に係る記録

2 前項第六号に規定する記録は、その作成の日から五年間保存しなければならない。

3 第一項の規定にかかわらず、同項(第六号を除く。)の措置にあっては、新たに特定大規模乗合損害保険代理店に該当することとなった日から起算して六月間は、当該措置を講じなくてもよい。 https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217/01.pdf

兼業業務にかかる体制整備として、以下が定めされました。

  • 対象業務を特定するための体制整備
  • 保険金の支払に不当な影響を及ぼさないよう対象業務の適切な監視
  • 上記監視のための責任者の設置、社内規則等の整備
  • 対象業務の全部又は一部を委託する場合の委託先の監視体制の整備
  • 上記の実施の方針の策定及びその概要の適切な方法による公表

特にこの監視のための責任者の設置は注意が必要となりそうです。

監督指針改正案では以下のとおり。

Ⅱ-4-2-15-5 兼業特定保険募集人である特定大規模乗合損害保険代理店が講ずべき態勢整備等(規則第227条の20関係)

兼業特定保険募集人である特定大規模乗合損害保険代理店は、規則第227条の20に基づき、当該特定大規模乗合損害保険代理店による自動車修理費等の過大な見積りに基づく保険金不正請求等のように、法第100条の2の2第2項にいう保険募集の業務以外の業務(その所属保険会社等に対する保険金の支払の請求に関するものに限る。以下「対象業務」という。)が、保険金の支払いに不当な影響を及ぼすことがないよう、以下の点も踏まえた態勢を整備しているか。

(1) 対象業務がその保険会社による保険金の支払に不当な影響を及ぼさないよう、その確認・検証を行う責任者(以下、Ⅱ-4-215-5において「当該責任者」という。)を設置するとともに、当該責任者の関与の下、以下の観点も含め適切な措置を講じるための体制を整備しているか。 また、上記の体制整備に当たっては、当該責任者がその業務を適切に遂行できるよう、必要な人員の配置を行っているか。

① 自動車の損傷状況や修理内容など、見積額の適切性に係る証跡を適切かつ十分に記録・保存すること。また、当該責任者は、その記録・保存の状況や、修理費等の過大な見積り等の保険金不正請求につながり得る事案がないか、定期的に調査・検証すること。

② 保険会社からの求めに応じて、上記①により記録・保存している証跡を提出し、その内容について適切かつ十分に説明できる体制を整備すること。

(2) 当該責任者が保険金不正請求につながり得る事案を把握した場合には、速やかに保険会社及び取締役会等の経営陣に対して報告を行うとともに、経営陣の適切な指示・関与の下で、以下の観点も含めて適切な措置を講じるための体制を整備しているか。

① 深度ある調査・分析や関係者へのヒアリング等を実施すること。

② 複数回の調査を経ても保険会社との間で見解の相違が存在する場合等には、必要に応じて事案の解明に向けて第三者の関与も含めるなど、透明性・客観性を確保すること。

(3) 規則第227条の20第1項第5号により公表する実施方針の概要については、その趣旨が明確に現れているものとなっているか。 また、公表方法は、例えば、店頭でのポスター掲示やホームページへの掲載など、顧客等に対して十分に伝わる方法となっているか。

(4) 見積額の適切性に係る証跡や(1)①に掲げる定期的な検証に係る記録のほか、(1)及び(2)に掲げる体制整備に係る記録について、規則第227条の20第2項に基づき保存し、その適切性を事後的に検証できる体制を整備しているか。 また、対象業務の全部又は一部を委託する場合であっても、同条に基づく記録の保存も含め、上記(1)及び(2)に係る措置を適切に実施するための外部委託先管理を行う体制を整備しているか。

(5) 対象業務に係る苦情処理体制について、Ⅱ-4-2-15-4(2)と同様の体制を整備しているか。

(6) 対象業務に係る内部監査及び内部通報体制について、それぞれⅡ-4-2-15-4(3)及び(4)と同様の体制を整備しているか。

(7) 上記(1)から(6)に掲げる措置((3)を除く。)に係る社内規則等を策定し、社内に周知しているか。

www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217-2/01.pdf 

監視責任者の設置と、十分な業務が遂行できる必要な人員の確保が求められており、これは兼業業務の部署などにけん制を働かせるために一定のパワーバランスが必要という配慮からと思われます。

なお、監視すべきは重点として「自動車の損傷状況や修理内容など、見積額の適切性に係る証跡」を保存の上、検証することとされました。

また、対象業務にかかる苦情処理体制、内部監査及び内部通報体制について整備が求められます。

この内部監査と内部通報体制については、施行規則案でも定められています。対象業務を内部監査する責任者の設置が求められます。

(その他特定大規模乗合損害保険代理店の業務運営に関する措置)

第二百二十七条の二十一

法第二百九十四条の四第五号に規定する内閣府令で定める措置は、次に掲げる措置とする。

(略)

六 兼業特定保険募集人である特定大規模乗合損害保険代理店にあっては、次に掲げる措置

イ 保険募集の業務以外の業務に係る内部監査を定期的に行うための責任者の設置、社内規則等の整備その他の体制の整備 ロ 特定大規模乗合損害保険代理店の役員又は使用人による保険募集の業務以外の業務に係る通報及び相談に応じ、適切に対応するための責任者の設置、社内規則等の整備その他の体制の整備

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217/01.pdf

3 兼業特定保険募集人における態勢整備等

この点が一番重要かもしれません。

特定大規模乗合損害保険代理店のみならず、保険会社から支払われる保険金を原資として対価を得る業務を行う全ての損害保険代理店に対して上記に準じた態勢整備を行うことが望ましいとされました。この点について、「保険金の支払に不当な影響を及ぼすおそれがある業務」と敢えて記載を分けている点がパブリックコメントなどで明確にされてくることが期待されます。

Ⅱ-4-2-16 兼業特定保険募集人における態勢整備等

保険代理店が、保険会社から支払われる保険金を原資として対価を得る業務を行う場合において、自らの利益を得るために不正な費用を見積り、これによって過大な保険金の支払いが発生する可能性は、兼業特定保険募集人である特定大規模乗合損害保険代理店に限られない。 この観点からは、保険会社から支払われる保険金を原資として対価を得る業務を行う全ての損害保険代理店において、その規模・特性に応じて、「Ⅱ-4-2-15-5 兼業特定保険募集人である特定大規模乗合損害保険代理店が講ずべきその他の体制整備等(規則第227条の20関係)」に準じた態勢整備がなされることが望ましい(注)。 (注) 規模・特性に応じた態勢整備の検討に当たっては、「顧客本位の業務運営に関する原則(特に原則3「利益相反の適切な管理」)を踏まえることも考えられる。 

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217-2/01.pdf

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長

2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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