コラム

2025年12月23日
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【速報③】令和7年保険業法改正に係る内閣府令(案)等に対するパブリックコメントの実施についてが公表されました

速報③は

(1)特定大規模乗合保険募集人(注)に対する体制整備義務の強化(保険募集の業務関連)

・特定大規模乗合保険募集人の要件
・営業所又は事務所ごとの法令等遵守責任者の設置
・本店又は主たる事務所への法令等遵守責任者を指揮する者(統括責任者)の設置
・苦情処理体制の整備

です。このうち特定大規模乗合保険募集人の要件を確認します。

1 保険業法施行規則の改正

(委託方針の策定)
第五十三条の十三

生命保険会社は、特定大規模乗合生命保険募集人(生命保険募集人のうち、二以上の所属保険会社等を有する法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)であって各事業年度における所属保険会社等から保険募集の業務(法第二百九十四条の三第一項に規定する保険募集の業務をいう。第五十三条の十四の二第一項第一号及び第百三十三条の五第一項第一号において同じ。)に関して受領した手数料、報酬その他の対価の額が第二百十五条の三第一項に規定する額以上であることその他同条第二項各号のいずれか又は第三項の規定に該当するものをいう。以下同じ。)に保険募集を行わせるときは、当該特定大規模乗合生命保険募集人による保険募集の事業の規模を背景とする当該生命保険会社に対する影響力により当該生命保険会社の業務の健全 かつ適切な運営及び公正な保険募集が損なわれることのないよう、当該特定大規模乗合生命保険募集人から第二百十五条の四第一項第八号に規定する通知を受けた日から起算して一月以内に、当該特定大規模乗合生命保険募集人への委託に関して方針を定めなければならない。

2 損害保険会社は、特定大規模乗合損害保険代理店(法第二百九十四条の四に規定する特定大規模乗合損害保険代理店をいう。以下同じ。)に保険募集を行わせるときは、当該特定大規模乗合損害保険代理店による保険募集の事業の規模を背景とする当該損害保険会社に対する影響力により当該損害保険会社の業務の健全かつ適切な運営及び公正な保険募集が損なわれることのないよう、当該特定大規模乗合損害保険代理店から第二百二十七条の二十一第一項第五号に規定する通知を受けた日から起算して一月以内に、当該特定大規模乗合損害保険代理店への委託に関して方針を定めなければならない。 

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217/01.pdf

ここから定義規程を探しますと、

特定大規模乗合生命保険募集人(生命保険募集人のうち、二以上の所属保険会社等を有する法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)であって各事業年度における所属保険会社等から保険募集の業務(法第二百九十四条の三第一項に規定する保険募集の業務をいう。第五十三条の十四の二第一項第一号及び第百三十三条の五第一項第一号において同じ。)に関して受領した手数料、報酬その他の対価の額が第二百十五条の三第一項に規定する額以上であることその他同条第二項各号のいずれか又は第三項の規定に該当するものをいう。以下同じ。)

として、乗合かつ、手数料等の額が第二百十五条の三第一項に規定する額以上であることその他同条第二項各号のいずれか又は第三項の規定に該当するものとなります。

*特定大規模乗合損害保険代理店は、法第二百九十四条の四に規定する特定大規模乗合損害保険代理店をいうとされており、こちらは(特定大規模乗合損害保険代理店の要件)  第二百二十七条の十六 が新設されています。

そこで、第二百十五条の三をみます。

(特定大規模乗合生命保険募集人の要件) 第二百十五条の三

令第四十条に規定する内閣府令で定める額は、二十億円(第三項の規定が適用される場合にあっては、十億円)とする。

2 令第四十条に規定する内閣府令で定める要件は、次の各号のいずれかに該当することとする。

一 当該生命保険募集人が損害保険代理店でない場合にあっては、当該事業年度の直前の事業年度(次号及び次項において「判定事 16 業年度」という。)における二以上の所属生命保険会社等(所属保険会社等のうち生命保険会社又は外国生命保険会社等をいう。同号、第二百二十七条の十六第二項第二号ロ及び第二百三十六条の二第一号において同じ。)から保険募集の業務(法第二百九十四条の三第一項に規定する保険募集の業務をいう。以下この編において同じ。)に関して受領した手数料、報酬その他の対価(次号において「手数料等」という。)の額が前項に規定する額以上であること。

二 当該生命保険募集人が損害保険代理店である場合にあっては、判定事業年度における二以上の所属生命保険会社等から保険募集の業務に関して受領した手数料等の額が十億円以上であり、かつ、次のイ及びロに掲げる額の総額が前項に規定する額以上であること。

イ 当該手数料等の額

ロ 判定事業年度における二以上の所属損害保険会社等(所属保険会社等のうち損害保険会社又は外国損害保険会社等をいう。第二百二十七条の十六第二項及び第二百三十六条の二第二号において同じ。)から保険募集の業務に関して受領した手数料等の額

3 当該事業年度(以下この項において「対象事業年度」という。)に係る判定事業年度において前項各号のいずれかに該当する生命保険募集人は、対象事業年度の翌事業年度及び翌々事業年度に係る各判定事業年度において同項各号のいずれにも該当しない場合であっても、第二百三十六条の二第一号ロに該当するとき(当該翌々事業年度に係る判定事業年度にあっては、当該翌事業年度に係る判定事業年度において同号ロに該当したときに限る。)は、当該各判定事業年度において同項各号のいずれかに該当するものとみなす。

www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217/01.pdf

これまで論点になっていた手数料の額は「二十億円」とされました。もっとも、その計算方法が非常に複雑です。

① 当該生命保険募集人が損害保険代理店でない場合

当該事業年度の直前の事業年度(次号及び次項において「判定事 16 業年度」という。)における二以上の所属生命保険会社等(所属保険会社等のうち生命保険会社又は外国生命保険会社等をいう。同号、第二百二十七条の十六第二項第二号ロ及び第二百三十六条の二第一号において同じ。)から保険募集の業務(法第二百九十四条の三第一項に規定する保険募集の業務をいう。以下この編において同じ。)に関して受領した手数料、報酬その他の対価次号において「手数料等」という。)の額が前項に規定する額以上であること。

②当該生命保険募集人が損害保険代理店である場合

判定事業年度における二以上の所属生命保険会社等から保険募集の業務に関して受領した手数料等の額が十億円以上であり、かつ、次のイ及びロに掲げる額の総額が前項に規定する額以上であること。

イ 当該手数料等の額

ロ 判定事業年度における二以上の所属損害保険会社等(所属保険会社等のうち損害保険会社又は外国損害保険会社等をいう。第二百二十七条の十六第二項及び第二百三十六条の二第二号において同じ。)から保険募集の業務に関して受領した手数料等の額

上記では、この手数料額の判定において、生保、損保合算されることになります。また、以下の場合(3項)は、特定大規模乗合保険募集人の要件となる手数料の額は「十億円」となります。

3当該事業年度(以下この項において「対象事業年度」という。)に係る判定事業年度において前項各号のいずれかに該当する生命保険募集人は、対象事業年度の翌事業年度及び翌々事業年度に係る各判定事業年度において同項各号のいずれにも該当しない場合であっても第二百三十六条の二第一号ロに該当するとき(当該翌々事業年度に係る判定事業年度にあっては、当該翌事業年度に係る判定事業年度において同号ロに該当したときに限る。)は、当該各判定事業年度において同項各号のいずれかに該当するものとみなす

ここにいう第二百三十六条の二第一号ロは以下の条文です。慎重な条文操作が必要になります。

(規模が大きい特定保険募集人) 第二百三十六条の二

法第三百三条に規定する内閣府令で定めるものは、毎事業年度末において次の各号のいずれかに該当するものとする。

一 次のイ又はロに該当するもの

イ 所属生命保険会社等の数が十五以上であるもの

ロ 当該事業年度において二以上の所属生命保険会社等から受けた手数料、報酬その他の対価の額の総額が十億円以上であるもの

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217/01.pdf

次に損保の第二百二十七条の十六を見ます

(特定大規模乗合損害保険代理店の要件) 第二百二十七条の十六

法第二百九十四条の四に規定する内閣府令で定める額は、二十億円(第三項の規定が適用される場合にあっては、十億円)とする。

2 法第二百九十四条の四に規定する内閣府令で定める要件は、次の各号のいずれかに該当することとする。

一 当該損害保険代理店が生命保険募集人でない場合にあっては、当該事業年度の直前の事業年度(次号及び次項において「判定事業年度」という。)における二以上の所属損害保険会社等から保険募集の業務に関して受領した手数料、報酬その他の対価(同号において「手数料等」という。)の額が前項に規定する額以上であること。

二 当該損害保険代理店が生命保険募集人である場合にあっては、判定事業年度における二以上の所属損害保険会社等から保険募集の業務に関して受領した手数料等の額が十億円以上であり、かつ、次のイ及びロに掲げる額の総額が前項に規定する額以上であること。

イ 当該手数料等の額

ロ 判定事業年度における二以上の所属生命保険会社等から保険募集の業務に関して受領した手数料等の額

3 当該事業年度(以下この項において「対象事業年度」という。)に係る判定事業年度において前項各号のいずれかに該当する損害保険代理店は、対象事業年度の翌事業年度及び翌々事業年度に係る各判定事業年度において同項各号のいずれにも該当しない場合であっても、第二百三十六条の二第二号ロに該当するとき(当該翌々事業年度に係る判定事業年度にあっては、当該翌事業年度に係る判定事業年度において同号ロに該当したときに限る。)は、当該各判定事業年度において同項各号のいずれかに該当するものとみなす。 

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217/01.pdf

生保と同じ構造になっています。そして、ここにいう第二百三十六条の二第二号ロは以下の条文です。

(規模が大きい特定保険募集人) 第二百三十六条の二

法第三百三条に規定する内閣府令で定めるものは、毎事業年度末において次の各号のいずれかに該当するものとする。

二 次のイ又はロに該当するもの

イ 所属損害保険会社等の数が十五以上であるもの

ロ 当該事業年度において二以上の所属損害保険会社等から受けた手数料、報酬その他の対価の額の総額が十億円以上であるもの

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217/01.pdf

2 監督指針の改正

以下のとおり、特定大規模乗合損害保険募集人は、特定保険募集人のなかに含まれる概念であることがわかります。

Ⅱ-4-2-11 事業報告書

特定保険募集人の事業報告書(別紙様式第25号の2及び第25号の3)については、生命保険、損害保険、少額短期保険いずれかの業態のみ特定保険募集人に該当する場合において、該当していない業態についても、報告の対象となることに留意する。 なお、外国法人の場合は、日本における業務に係るものについて作成するものとする。

(1) 特定大規模乗合生命保険募集人及び特定大規模乗合損害保険代理店への該当要件

特定保険募集人のうち、特定大規模乗合生命保険募集人及び特定大規模乗合損害保険代理店に該当する場合の要件は、それぞれ規則第215条の3及び規則第227条の16を参照することとする

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217-2/01.pdf

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長

2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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