コラム
【速報①】令和7年保険業法改正に係る内閣府令(案)等に対するパブリックコメントの実施についてが公表されました

2025年12月17日、令和7年保険業法改正に係る内閣府令(案)等に対するパブリックコメントの実施についてが公表されました。改正事項は多岐にわたります。
(1)特定大規模乗合保険募集人(注)に対する体制整備義務の強化(保険募集の業務関連)
・特定大規模乗合保険募集人の要件
・営業所又は事務所ごとの法令等遵守責任者の設置
・本店又は主たる事務所への法令等遵守責任者を指揮する者(統括責任者)の設置
・苦情処理体制の整備
(2)特定大規模乗合損害保険代理店に対する体制整備義務の強化(兼業業務関連)
・対象となる特定大規模乗合損害保険代理店
・兼業業務に係る体制整備等
・苦情処理体制の整備
・内部監査・社内通報等に関する体制の整備
(3)保険会社等に対する体制整備義務の強化
・特定大規模乗合保険募集人に業務を委託する場合の措置
・兼業業務を行う特定保険募集人(兼業特定保険募集人)に関して損害保険会社に求める措置
(4)保険会社等による保険契約者等への過度な便宜供与の禁止
・保険契約者又は被保険者と密接な関係を有する者を規制対象に拡充
(5)保険仲立人の活用促進に向けた対応等
・海外直接付保に関する手続き及び海外直接付保の許可に係る保険媒介における保険仲立人の活用
・保険仲立人の不祥事件の届出義務の新設に伴う届出事項等の整備
(6)乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保
・情報の提供に係る規定の改正
- (注)特定大規模乗合生命保険募集人及び特定大規模乗合損害保険代理店をいう。
初回は特に注目すべき
(6)乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保
・情報の提供に係る規定の改正
を読みます。
1 保険業法施行規則の改正案
(情報の提供)
第二百二十七条の二 [略]
2 [略]
3 保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、法第二百九十四条第一項の規定により保険契約の内容その他保険契約者等の参考となるべき情報の提供を行う場合には、保険契約者及び被保険者に対し、次に掲げる方法により行うものとする。
[一~三 略]
四 二以上の所属保険会社等を有する保険募集人(一以上の所属保険会社等を有する保険募集人である保険会社等又は外国保険会社等(イ及びロにおいて「保険募集人保険会社等」という。)を含む。ロ、第二百二十七条の十二、第二百二十七条の十四及び第二百三十四条の二十一の二第一項第二号において同じ。)にあっては、次のイ又はロに掲げる場合における当該イ又はロに定める事項の説明
イ [略]
ロ 二以上の所属保険会社等(保険募集人保険会社等にあっては、一以上の所属保険会社等及び当該保険募集人保険会社等。)が引き受ける保険(第二百二十七条の十二、第二百二十七条の十四第二項及び第二百三十四条の二十一の二第一項第二号ロにおいて「二以上の所属保険会社等が引き受ける保険」という。)に係る二以上の比較可能な同種の保険契約の中から保険契約の締結又は保険契約への加入をすべき一又は二以上の保険契約(以下「提案契約」という。)の提案をしようとする場合 当該二以上の所属保険会社等を有する保険募集人が取り扱う保険契約のうち顧客の意向に沿って当該二以上の所属保険会社等を有する保険募集人が選別した比較可能な同種の保険契約の概要及び当該提案の理由
これまであった「ハ」が完全に削除され、ロ方式に一本化されることが明らかとなりました。
2 監督指針の改正案
比較推奨販売に関連する部分(Ⅱ-4-2-9 保険募集人の体制整備義務(法第294条の3関係))が大きく改正されています。
(5)乗合代理店における比較推奨販売 乗合代理店(規則第227条の2第3項第4号及び規則第234条の21の2第1項第2号に規定する二以上の所属保険会社等を有する保険募集人をいう。以下、(5)において同じ。)は、金融サービス提供法(同法第2条第1項)に基づく顧客等に対する誠実公正義務の趣旨も踏まえ、顧客の最善の利益を勘案しつつ、適切な比較推奨販売(規則第227条の2第3項第4号及び規則第234条の21の2第1項第2号に規定する保険契約への加入の提案をいう。以下、同じ。)を行わなければならない。 このため、以下の点に留意しつつ、法第294条第3項に基づき、あらかじめ所属保険会社等の商号等を明らかにした上で、法第294条第1項(規則第227条の2第3項第4号及び規則第234条の21の2第1項第2号)に基づき、保険契約の内容、その他保険契約者等の参考となるべき情報を提供し、わかりやすく説明しているか。 また、乗合代理店の健全かつ適切な業務運営を確保するための措置が講じられているか。
① 比較推奨販売の方法
A.複数の保険契約の契約内容を比較して説明する場合(比較説明)の情報提供義務(法第300条第1項第6号、Ⅱ-4-2-2(9)②参照)
乗合代理店が取り扱う複数の保険契約の契約内容を比較して説明する場合には、規則第227条の2第3項第4号イの規定の趣旨を踏まえた上で、保険募集の実務や募集形態等に応じて、以下の事項を遵守しているか。
(a) 複数の保険契約の契約内容を比較する場合には、比較する事項やその内容を適切に説明しているか。
(b) 顧客が保険契約の契約内容について、正確な判断を行うに必要な事項を包括的に示しているか。
(c) 特定の保険契約の優位性を示すために他の保険契約と比較を行う場合には、当該他の保険契約についても、その全体像や商品特性を顧客に対して正確に示すとともに自らが勧める保険契約の優位性の根拠を説明しているか。
https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217-3/01.pdf
Aは、イの方法による場合、すなわち顧客の意向により商品を絞り込むのではなく、「乗合代理店が取り扱う複数の保険契約の契約内容を比較して説明する場合」の説明方法が記載されています。
もっとも注目を集めているロ方式についてはBに記載があります。
B. 二以上の比較可能な同種の保険契約の中から顧客の意向に沿って保険契約を選別し、提示・推奨する場合(推奨販売)の情報提供義務
乗合代理店が二以上の比較可能な同種の保険契約の中から顧客の意向に沿って保険契約を選別することにより、保険契約を提示・推奨しようとする場合には、規則第227条の2第3項第4号ロの規定の趣旨を踏まえた上で、保険募集の実務や募集形態等に応じて、以下の事項を遵守しているか。
また、顧客の意向に沿って保険契約を選別する場合には、事前に商品特性や保険料水準などの顧客が重視する事項を丁寧かつ明確に確認する必要があることに留意する。
(a) 乗合代理店が二以上の比較可能な同種の保険契約の中から顧客の意向に沿って保険契約を選別し、一又は二以上の保険契約を提示・推奨する場合には、当該提示・推奨する保険契約の概要及び顧客の求めに応じて契約内容並びに当該提示・推奨する基準や理由等を説明しているか。 特に、顧客の意向に沿って選別した保険契約の中から、商品特性等により、特定の保険契約を推奨する場合には、顧客の最善の利益を勘案したものとして、保険募集人や乗合代理店の都合によることなく、合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由等を説明しているか。その場合、推奨する特定の保険契約以外の保険契約もある旨及び顧客の求めに応じて、それらの保険契約の概要又は契約内容を説明する旨を説明しているか。
(注1) 保険契約を提示・推奨する基準や理由等について、合理的かつ一定の具体性を有する説明をしているように装いながら、実質的には、例えば、乗合代理店が受け取る手数料水準の高さや乗合代理店への便宜供与等の実績など、乗合代理店の都合による保険契約の選別や提示・推奨を行うことのないよう留意する。
(注2) 提示・推奨する本来の基準や理由等を告げない行為、提示・推奨する基準や理由等が複数ある場合に主たるものを告げず、他の基準や理由等を告げる行為を行うことのないよう留意する。
(b) 顧客の意向が不明確な場合であっても、保険契約の選別に当たっては、例えば、顧客が特に重視すると考えられる事項を例示するなど、可能な限り顧客の意向を把握した上で、上記(a)に基づき対応しているか。
(注3) 顧客が特に重視すると考えられる事項を例示するに当たっては、顧客の意向を顧みず営業上の理由から恣意的に特定の保険契約へ誘導することのないよう留意する。なお、恣意的に特定の保険契約へ誘導するその行為が、内容や態様等によっては、法第300条第1項第1号及び第6号に抵触するおそれがあることに留意する。
重要なポイントは、以下の2つです。
- 顧客の意向に沿って保険契約を選別する場合には、「事前に商品特性や保険料水準などの顧客が重視する事項を丁寧かつ明確に確認する必要がある」とされ、顧客の意向が不明確な場合(b)であっても、保険契約の選別に当たっては、例えば、顧客が特に重視すると考えられる事項を例示するなど、可能な限り顧客の意向を把握することが求められます。
- 「商品特性等により、特定の保険契約を推奨する場合」に「推奨する特定の保険契約以外の保険契約もある旨及び顧客の求めに応じて、それらの保険契約の概要又は契約内容を説明する旨を説明しているか」とされた点と思われます。これは、顧客からの求めがなくとも、推奨する特定の保険契約以外の保険契約もある旨は説明する必要があると読めるからです。
パブリック・コメントで、顧客が特に重視すると考えられる事項の例示の具体例や、求めがなくとも説明すべきほかの保険契約についての説明内容の例は明確にされてくるように思われます。
② 比較推奨販売に係る体制整備関係
比較推奨販売を適切に行うための措置について、以下のような点を含めて、法第294条の3の規定の趣旨を踏まえた上で、乗合代理店自身の規模や業務特性を踏まえつつ、定期的かつ必要に応じて、その実施状況を確認・検証する態勢が構築されているか。 また、確認・検証に当たっては、保険代理店等に対する便宜供与(Ⅱ-4-2-12)や保険代理店に対する出向(Ⅱ-4-2-13)により、顧客の適切な商品選択の機会を阻害していないか否かも含めて確認する必要があることに留意する。
ア.上記①における提示・推奨する基準や理由等について、社内規則等に規定しているか。
イ.上記ア.の社内規則等を踏まえた、適切な比較推奨販売を行うための教育・管理・指導を実施しているか。
ウ.比較推奨販売の適切性等の確認・検証に必要となる記録や証跡等の保存期間等を社内規則等にて定めた上で、比較推奨販売の適切性に関して、効率的かつ効果的に確認・検証しているか。
(注) 証跡等の保存に当たっては、顧客保護等(Ⅱ-4-4)の規定も踏まえつつ、顧客の意向や属性に応じた比較推奨販売に係る説明が適切に行われているか確認・検証できるものであること。
エ. 上記ウ.における確認・検証結果を踏まえ、必要に応じて比較推奨販売方法の見直しや改善を行っているか。
特にウが重要です。「比較推奨販売の適切性等の確認・検証に必要となる記録や証跡等」の保存が明確に、その内容まで「顧客の意向や属性に応じた比較推奨販売に係る説明が適切に行われているか確認・検証できるものであること」が求められています。
なお、施行日について以下のように書かれており、(6)が外されています。
比較推奨販売に関する改正時期は、ほかの事項とは異なる時期となりそうです。
執筆者プロフィール

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株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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