コラム
代理店業務品質評議会(第2回)議事概要 を読む

代理店業務品質評議会(第2回)議事概要(https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003uts-att/hyogikai_2.pdf)が公表されました。
*評議会第2回配布資料の解説はこちら(https://hkn.jp/column/56/)
注目すべき発言を拾っていきます。
1 資料1「フォローアップ点検・トライアル運用(案)」について
●また、実際の点検は評価本部が実施し、点検において事実確認した内容に沿って評価本部が評価することになるため、評議会では、その事実確認に基づいた課題や改善点の内容を確認し、点検結果として通知するといった形が現実的かと思う。なお、本制度は評議会が代理店の業務品質についてお墨付きを与えるといったものではないと認識しており、あくまでも、点検対象とする特定の項目について、課題があれば指摘し、特段の課題が見当たらなかった場合であっても代理店がより良くなるための助言を可能な範囲で行うといった評価となるのではないか。
●点検結果については、代理店に一方的に通知するだけでなく、代理店としても見解を表明できる機会を設けることが公正であり、本制度への信頼にも繋がると思う。
評議会の役割について改めて確認的な議論がなされています。評議会としては、業務品質評価運営の全体を確認することが役割であり、個々の代理店を評価する制度ではないという位置づけが改めて意見として出ています。また、代理店からの見解を表明できる場が設けられる方向です。
●日頃の代理店との接点において、本制度に対する代理店の受け止めを耳にすることがあるが、前向きな声がある一方で、損保会社に都合のよい制度でしかないといった懐疑的な声や厳しい意見が多いと感じる。そういった実情も踏まえると、フォローアップ点検は、代理店が前向きに向き合えるような仕組みであることが重要であり、代理店が見解を表明できる機会を設けることは賛成である。
●評議会の役割は、中立的な第三者として業務品質評価運営が公正かつ適切に実施されているかを確認することであって、評議会として個々の代理店評価を結果通知する建付けには違和感がある。評議会では、たとえば、評価結果の異議申立てを取り扱ったり、評価本部において体制整備ができているか、信頼性のある業務が行われているかを確認し、そのフィードバックを行ったりといったことにより、第三者機関としての信頼を得ていくことも重要である。
2 資料2「損保会社の取組み準備状況について」について
保険会社に対するメッセージの色合いを強く感じます。保険代理店の管理・指導について、改めてその取り組み姿勢が問われます。
●代理店からは、損保会社によって温度差があるといった声や、経験の浅い営業担当者は何もわかっていないなどの声が多数寄せられているが、損保会社も代理店も共に取り組む問題であること、また、営業担当者だけでなく、会社や業界全体としてみられているという認識をもつ必要があると思う。損保会社の社員からも被害者意識のような声が聞こえるが、これだけ信頼が失われている業界はないのだから、しっかり制度と向き合い、フォローアップ点検も代理店を通じて損保会社が評価されているのだという意識になって欲しい。
●顧客から苦情が出ていなければよいという感覚が問題の背景にあると感じる。たとえば、一連の個人情報漏えい事案においても、顧客からの苦情が起点になったわけではないにも関わらず法律違反となっている。顧客本位の業務運営の考え方においては、正しい情報提供と適切な選択の機会があるかどうかが大事であり、顧客から苦情がなければよいということではない。本制度や現在の法規制で金融機関に何が求められているか、本質をうまく伝えていかなければ、余計なことをさせられているという被害者意識が消えないのではないかと感じる。
3 信頼の“媒介者”としての第三者機関
本制度の本質は、「第三者による評価」を導入することで、業界全体の透明性と健全性を高めることにあります。しかし、制度が持続的に機能するためには、単に形式的なチェック機構としてではなく、信頼を媒介する存在として根づく必要があります。
その「信頼」は、複数の切り口で見る必要があり、その輪郭として以下のような整理ができるのではないでしょうか。
- 消費者から見れば、代理店・損保会社のいずれに対しても安心できる環境を保証するものとして牽制の役割。
- 代理店から見れば、自社の努力や改善が正当に評価される公平な仕組み。
- 損保会社から見れば、指導や支援の妥当性を外部から検証してもらえる品質担保の機能。
これらの多機能な役割を求められる、非常に難しいバランスの舵取りがなされていく今後の議論も引き続き追っていきたいと思います。
執筆者プロフィール

- 株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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