コラム
代理店業務品質評議会(第1回)議事概要を読む

7月17日、損保協会に設置された代理店業務品質評議会の(第1回 7月9日)の議事概要が公表されました。
https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/hyogikai.html
今回は、この議事概要から気になる点を追っていきたいと思います。
目次
1 自己点検チェックシートの本格運用に向けて
●トライアル運用期間の自己点検チェックの取組みについて、特に乗合代理店ではどのように取り組まれているのか。
(事務局)2025年度版のチェックシートを利用した取組みについて、既に代理店に案内している損保会社があり、すでに取組みを開始している代理店がある一方で、これから代理店に案内を実施予定とする損保会社もあり、未着手の代理店も一定数存在するものと思われる。
●乗合代理店の場合、業界共通のチェックシートについては、1つ回答すればよい運用になっているのか。
(事務局)本格運用開始後は、業界システム上で回答した結果がすべての乗合会社に連携されるため、代理店が1つ回答すればよい運用となる。トライアル運用期間では、従来どおりの自己点検の取組みとなることから、複数の損保会社に同一の回答を提出いただくこともあり得る。議事概要 3p https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003uts-att/hyogikai_1.pdf
乗合代理店において、自己点検チェックの取り組みへの着手が進んでいます。
気になるのは、乗合会社に対して複数回同じ回答をするかどうかですが、本格運用開始後はすべての乗合会社に連携されることから1つに回答すれば足りるとされました。トライアル段階では、複数社に同一の回答を求められることもあるようです。
●意見公募の対応方向性について、第1弾(2025年7月~8月)では、自己点検の取組みを開始していない代理店もあり、2025年度版のチェックシートに関する意見出しは難しい場合もあると思う。
(事務局)そういったケースも想定し、2段階での意見公募を実施する。
●今後、監督指針の改正等が行われることも踏まえ、10月頃にそれを反映したチェックシートの改定案を出すような形にせざるを得ないと理解した。議事概要 4p https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003uts-att/hyogikai_1.pdf
本日、自己点検チェックシートの意見公募
(https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2025/qt6qln0000000517-att/250728_01.pdf)が始まりました。
https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003uts-att/checksheet.pdf
こちらは監督指針の改正などに合わせて、2段階で公募されるものとされています。
2 トライアル運用期間のスケジュール(資料1)
https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003uts-att/trial.pdf
今年の7月から、第一期分のトライアルが開始しています。現在は特にインターネット募集等、対面募集とプロセスが異なる代理店について課題になっているようです。
3 保険会社との対話の実施(資料1別紙)
保険会社との対話についても公表されています。特に重要なのは課題認識の部分です。
https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003uts-att/taiwa.pdf
この中でも、自己点検チェックシートですべて「はい」で回答される場合も想定される、「できていない」と回答してもらうことが重要と認識している、との部分は今後も意識する必要があります。すべて「はい」にしないと受け取ってもらえないと認識している担当者がいることも否定できず、保険会社と保険代理店での「対話」がより深まることが求められます。
4 フォローアップ点検
トライアル運用の実施概要が公表されています。
https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003uts-att/followup.pdf
この点検項目から、比較推奨販売、過度な便宜供与の禁止、利益相反管理、苦情管理、個人情報管理が点検の対象であることがわかります。
点検の手順も、経営層へのヒアリングのあと資料提出、募集人へのヒアリングというように段階について事前に予告がなされています。
経営層にもヒアリングがなされることから、各代理店において改めて経営層への法改正情報の連携、法令遵守態勢についての再認識等が求められます。
ヒアリング内容は「アンケートへの回答に基づくもの」となっていますので、日ごろからの各代理店の態勢整備状況が回答によく反映されてくるのではないでしょうか。
5 業務品質評価運営における「最低品質検証」の考え方について(資料4)
この資料が今後もっとも参照されるかもしれません。「最低品質検証」というキーワードがでています。
https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003uts-att/quality.pdf
最低品質を目標とすることなく、未来志向で進めて言うことが表現されています。
チェックリストだけにとどまらない実質を全体として見ていく、というのは当然として、「見える化」もキーワードになっています。
https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/quality/g34l0i0000003uts-att/quality.pdf
顧客本位の業務運営と「見える化」は切っても切れない関係にあります。すでに銀行等での取り組みが進んでいる状況であり、取り組み方針や自主的KPIの設定など、参考になるものといえるのではないでしょうか。
令和4年9月28日金融庁「顧客本位の業務運営と見える化」 https://www.fsa.go.jp/policy/kokyakuhoni/kouen_220928.pdf
執筆者プロフィール
兼コンプライアンス室長
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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