コラム
【2025年5月30日 改正保険業法が成立!】改正保険業法附帯決議を読む

本日、参議院も通過し改正保険業法が成立しました。
改正の内容は原案のとおりですので、各条文の解説は過去のコラムから変更はありません。
今回は改正保険業法の附帯決議を確認したいと思います。
参議院では、衆議院の附帯決議と同じ内容(2つの項目を1つに合わせたものはあるが内容は同じ)でしたので、公表済みの衆議院の附帯決議(https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/zaimuC3F3B80A64AEB91249258C8B0005EE9C.htm)を確認します。
*附帯決議とは
法律案が可決された後、その法律案に対して附帯決議が付されることがあります。附帯決議とは、政府が法律を執行するに当たっての留意事項を示したものですが、実際には条文を修正するには至らなかったものの、これを附帯決議に盛り込むことにより、その後の運用に国会として注文を付けるといった態様のものもみられます。附帯決議には、政治的効果があるのみで、法的効力はありません。 こうして委員会で可決された法律案は、本会議に上程され同一会期に両院で可決されると、政府による公布手続を経て法律となります。
参議院のあらまし 委員会の活動(1)法律案の審査 https://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/keyword/katudo01.html
政府は、以下の事項について配慮することが求められます。
一 今般の保険金不正請求事案及び保険料調整行為事案の再発防止策が、本法による措置及び下位法令への委任のほか、顧客本位ではない比較推奨販売の禁止、代理店への過度な便宜供与の禁止及び企業内代理店規制の見直しなどの監督指針等による対応を含む多面的な構造となっていることに鑑み、当局のモニタリングを総合的に行う態勢を確立するほか、業界における顧客本位の業務運営の徹底をさらに促すことなどにより、当該再発防止策の実効性を担保すること。
金融当局のモニタリングを総合的に行う態勢を確立することが求められ、保険金不正請求事案と保険料調整行為事案の再発防止策の実効性の担保が求められました。
二 保険業界の不祥事への対応に当たって、必要十分な検査及び処分等が円滑に実施されるよう、金融庁及び財務局において必要な機構・定員を確保し、保険契約者等の保護を図ると共に、保険業に対する信頼性の確保及びその健全な発展に万全を期すこと。
今後、検査や処分を円滑に行うため、定員の確保が求められます。
三 今般の保険料調整行為事案の一因が、近年の自然災害の頻発・激甚化が火災保険金の支払いを増加させる一方、契約期間が長期であるなどの理由から保険料への反映が遅れることで、火災保険の危険差益を悪化させたことにあったことを踏まえ、このような火災保険の構造的な問題への対処のため、当該構造に係る分析を行い、持続可能なビジネスモデルの構築を損害保険業界に促すこと。
四 三の火災保険の危険差益の悪化への対応として、他の保険種別における収益移転が過度に起きることのないよう、保険商品の認可においては、保険商品の契約者間の公平性が確保されるような保険商品の認可に努めること。
火災保険の商品設計について言及がされています。今後、火災保険の構造分析がなされてくるものと思われます。
五 保険会社等の金融機関に対しては、法令やガイドライン等により、個人情報保護法よりも厳格に個人情報を管理することが求められていることに鑑み、昨今多発している、保険代理店における個人情報漏えい事案に対し、その再発防止に向けた、より一層の厳格な対応を行うこと。
保険代理店における個人情報漏えい事案に対し、その再発防止に向けた、より一層の厳格な対応を行うことが求められました。保険代理店は、個人情報保護委員会の出している注意喚起などを読み込んでおくことが求められます。
六 本法の基礎となる「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」及び「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」の取りまとめ後においても、保険業界においては不適切な行為が表面化し当局が立入検査を実施していることに鑑み、改めてこれを業界の問題として捉え、業界全体の実態解明に努めると共に、その結果を公表すること。
七 六の実態解明による問題への対処が本法による措置では不十分と判断される場合においては、附則第四条の検討規定に定める本法の施行後五年を目途とする時期を待つことなく、直ちに検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずること。
金融審議会WG後(2024年12月25日に報告書公表後)の立ち入り検査なども踏まえ、改めて金融庁から保険業界における不適切行為の実態解明とその結果が公表されると思われます。
併せて、その実態が今回の法改正では対応として不十分な場合には、5年を待たずあらたな検討を行うこととされました。
執筆者プロフィール

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株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、法務責任者として株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。
これまでに「金融機関の法務対策6000講(共著)」「ペット保険の法的課題(慶應大学保険学会)」『「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情2024.9.17)』を執筆し、日経新聞(2024.9.4朝刊金融経済面)にもコメントが掲載される。
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