コラム

2025年5月13日
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【速報】令和7年5月12日公表「保険会社向けの総合的な監督指針」(案)を読む①

金融庁から、今回の保険業法改正に関連して、監督指針の改正案が公表されました。
改正が行われる事項は以下のとおりです。

・損害保険会社による保険代理店に対する指導等の実効性の確保
・保険代理店等に対する過度な便宜供与の防止
・保険代理店等に対する不適切な出向の防止
・代理店手数料の算出方法適正化
・顧客等に関する情報管理態勢の整備
・政策保有株式の縮減
・仲立人の媒介手数料の受領方法の見直し

それぞれの項目についてのポイントは以下のとおりです。

1 損害保険会社による保険代理店に対する指導等の実効性の確保

Ⅱ-4-2-1 (4)

保険会社においては、営業面への影響の大きさにかかわらず、保険代理店における体制整備や保険募集等の適切性について、日常的な教育・管理・指導に加え、代理店監査等を通じて検証し、課題等が認められた場合には期限を定めて改善を求めるなど、保険代理店に対する指導等が適切に行われるよう、その実効性を十分に確保しているか。

・「営業面への影響の大きさ」にかかわらず、というのは、規模の大きな代理店に忖度が働いていた保険金不正請求事案等が念頭にあると思われます。
・「日常的な教育・管理・指導に加え」というのは、個別の問題事案だけでなく、日常の体制整備を確認することを求めています。
・「代理店監査等を通じて検証し、課題等が認められた場合には期限を定めて改善を求める」というのは、監査の方法を具体的に指示しており、改善を求める場合には期限を求めることとしています。これはなんら対応をしないで期限を徒過した場合には、代理店委託契約上の債務不履行となるように指導に実効性を持たせる趣旨と思われます。

 

Ⅱ-4-2-1 (4)③ウ

監査等の手法として、代理店による自己点検のみに依拠することなく、無予告での訪問による監査等を実施できる態勢を整備しているか。

「代理店による自己点検のみに依拠することなく」というのは、保険会社の行う監査の手法として、各保険会社、損保協会、生保協会等がそれぞれ公表・提供している自己点検チェックシート等を代理店が活用し、所属保険会社へ提出する方法だけでは監査として不十分という趣旨と解され、今後は、これらを参考に保険会社と代理店での対話を行っていくことが望まれます。

 

Ⅱ-4-2-1 (5)

保険会社による特定保険募集人に対する指導等の状況については、保険会社に対する深度あるヒアリング等のオフサイトモニタリングを行うことや、必要に応じて法第 128 条に基づく報告を求めること、法第 129 条に基づく立入検査の実施を通じて把握することとする。その上で、重大な問題があると認められる場合には、法第 132条に基づき行政処分を行うものとする。

本項は、「保険代理店に対する金融庁及び財務局のモニタリングについても、これまでは、人員の制約等により、一部の保険代理店に対するヒアリングや苦情分析にとどまっていたが、今般の事案を踏まえ、損害保険会社による保険代理店に対する指導等の状況についても、損害保険会社や保険代理店への立入検査を通じて検証するなど、金融庁及び財務局によるモニタリングを強化すべきである。」(有識者会議報告書6p)を受けて、これまでは一部の代理店へのヒアリングと苦情分析にとどまっていたモニタリングの対象を変更することと示しています。

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社hokan 法務・コンプライアンス室長/弁護士
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。
都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。
平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。
これまでに「金融機関の法務対策6000講(共著)」「ペット保険の法的課題(慶應大学保険学会)」「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情2024.9.17)」を執筆し、日経新聞(2024.9.4朝刊金融経済面)にもコメントが掲載。
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