コラム
公募結果から読み解く「代理店業務品質評価指針」案

2024年3月28日に「代理店業務品質に関する評価指針(案)」に対する意見公募結果が公表されました。
https://www.sonpo.or.jp/news/release/2024/g34l0i00000075wa-att/250328_01.pdf
本稿では、損保協会の見解の特に気になる点を整理します。
・指針と保険会社施策の整合性
評価指針の方向性と各保険会社の取組みがずれる可能性が指摘されています。この点については、業務品質評価運営(代理店における業務が業界共通の業務品質基準に適合したものとなっているかどうかを確認・評価等する一連のプロセス)の中で、代理店業務品質評議会として適切に対処していくこととされます。そのうえで、本制度の目指すべきところは最低限の業務品質の達成に留まることなく、顧客本位の業務運営に資するよう、適切な代理店の業務品質評価を追求することとしています。
・代理店手数料ポイント制度との連動
手数料ポイント制度と評価指針をどの程度リンクさせるかについては、結論として、連動の方法・程度は各社判断となります。とはいえ、「規模・増収偏重から業務品質重視へ」という価値観を手数料算定に組み込むことが期待されています。
・評価基準の明確化・定量化
自己点検チェックシートに可能な範囲で具体化を図る方針が明示されました。一方で、代理店規模・ビジネスモデルの多様性を踏まえ、当初は限定的な定量指標とし、定性評価と組み合わせたハイブリッドな運用が推奨されています。
・法令等遵守・顧客本位の業務運営
単なる法令違反の有無ではなく、組織的な態勢整備を点検対象とする点が強調されました。評価としては、ガバナンス面での成熟度が重要ということになります。
・意向把握・確認義務
契約後フォローを含む意向確認の重要性について意見が出されています。この点については、すべての顧客に一律対応を求めるものではないものの、更新・更改時などの適切な確認プロセスが求められます。有効な取り組みとして以下の意見があります。
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・比較推奨販売における「自己」の定義
「募集人は、顧客等の最善の利益の勘案義務も踏まえ、自己の利益を優先させるこ となく、顧客に対して誠実かつ公正に商品を推奨している。」とある点の「自己」の概念について、募集人個人だけでなく代理店全体を含む概念として整理されました。法人代理店においても自己利益優先を排除し、顧客最善利益を勘案する義務が及ぶ点に留意が必要です。
・内部監査・自己点検
外形要件を満たすだけでなく、代理店の規模・特性に応じた実効性重視の体制構築が求められます。そして内部監査部門の設置は高度化要素と位置づけられました
・体制整備と評価運営
窓口責任者の設置や兼業代理店の利益相反管理など、まだ法令、監督指針で要件が明確化、具体化されていない段階であり、今後を見据えた課題が残されています。
現段階では代理店自身でこれらの対応について模索し、保険会社と対話することとなる見込みです。また、乗合代理店の不祥事件対応についても、業界全体で実務指針が示される予定です。
執筆者プロフィール

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株式会社hokan 法務・コンプライアンス室長/弁護士
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。
都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。
平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。
これまでに「金融機関の法務対策6000講(共著)」「ペット保険の法的課題(慶應大学保険学会)」「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情2024.9.17)」を執筆し、日経新聞(2024.9.4朝刊金融経済面)にもコメントが掲載。
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