コラム

2025年3月19日
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【保険業法改正の羅針盤⑧】 ホケンノミライ登壇とプロジェクト計画書のサンプル解説

1 はじめに

今回は、これまでのコラムのまとめとなるホケンノミライでの登壇講演を紹介します。共に登壇させていただいた篠原弁護士(森・濱田松本法律事務所)が、前回(2014年)の改正時に取り上げた論点や、今回の改正保険業法に関する注目点、実際のプロジェクト計画のサンプル事例を交えながら、具体的な進め方のポイントについても解説します。

2 2014年の保険業法改正の振り返り

2014年の改正においては、保険代理店の体制整備義務、意向把握義務・比較推奨販売の導入など、保険募集全般にわたる規制強化が行われました。とりわけ、顧客の意向を正確に把握して商品を提案する意向把握義務や、複数の商品を提示し最適な選択を支援する比較推奨販売がメインの改正事項であり、当時の研修資料をもとに篠原弁護士により詳しくお話しいただきました。

3 最近の行政処分事例と学び

近年、代理店管理の不備や適切でない販売手法が原因となり、行政処分を受ける事例(トヨタモビリティ東京やグッドスピードの事案)(【保険業法改正の羅針盤④】相次ぐ行政処分から学ぶ代理店に求められる保険募集管理態勢参照)が続いたことから、ポイントの解説を行いました。

4 比較推奨販売の現在地

比較推奨販売は、本来、顧客に対して複数商品を提案し、最善の利益を追求するうえで有用です。しかし、現在もテリトリー制のように特定保険会社の商品を優先的に推奨する慣行が根強く残っており、顧客の最善の利益の視点からも課題とされており、今後は顧客への提案理由を明確化し、証跡化することが不可欠です。(【保険業法改正の羅針盤⑥】比較推奨販売(特にいわゆるハ方式)の現在地①~③参照

 

5 便宜供与規制とDX化支援

保険会社が代理店に提供する各種の便宜供与は、顧客本位の業務運営を損ねるおそれがあるとの指摘がなされていますが、デジタル技術を活用したDX化による業務効率化やコンプライアンス向上の支援は、保険募集業務の品質向上のために有用であり、出向者の引き上げに代わるリソースの配分先として今後も推進が期待されます(【保険業法改正の羅針盤⑤】保険会社による保険代理店への便宜供与の規制とDX化支援のあり方参照)

 

6 今後の展望とスケジュール

今後は、さらなる規制強化と同時に、保険代理店の組織体制や業務プロセスの見直しが求められます。法律の公布から1年以内の施行が予定されており、特定大規模乗合募集人への法令遵守責任者の設置や企業内代理店の規制強化などが議論されています(【速報】国会に提出された保険業法改正案の概要

 

7 実際のプロジェクトの進め方と計画書のサンプル

講演後に特に反響をいただいたのが、保険業法改正に向けてどのようにプロジェクトを計画・推進していくかという具体的な進行方法でした。プロジェクトの進め方については概略をすでにコラムにて説明していました(保険業法改正の羅針盤①〜過去から学ぶ次のステップ〜)が、実際にどういった計画書を作成し、手を動かすのかについてお話しさせていただきましたので、計画書のサンプルについて解説します。このサンプルは、下記のリンクからダウンロードできるホワイトペーパーと併せてご活用いただくこと(ホワイトペーパーを社内会議の参考資料として活用することで、今回の改正の背景を把握でき、チェックリストに沿ってもれなく論点の把握が進むように整理しています)を想定していますので、ぜひホワイトペーパーもご利用ください。

スライド1

今回の法改正対応は半年以上に及ぶ事項であることから、プロジェクトとして管理していくことが望ましい。

スライド2
アジェンダとして、法改正に至る背景や、目指すべきゴール、社内の体制とスケジュールを設定します。

スライド3
保険業法改正の背景を社内で共有し、「どうして」「何が」もとめられているのかを社内で共有します。例えば、自動車修理業を営んでいる代理店の場合「① 兼業代理店(兼業特定保険募集人)、当社は自動車修理業を営んでいることから、代理店手数料をもらう保険代理店業務と保険金を支払いに充てる自動車修理業において利益相反の可能性があります。そのため、今回の法改正により、兼業特定保険募集人に該当することになり、利益相反管理の必要性があり・・・」など、各社ごとに具体的に整理します。

スライド4
KickOffMTGにおいて、本日のゴールとPJの最終ゴールを共有します。KickOffでは担当者と現状確認がメインです。最終ゴールでは成果物や決裁をもらうことというものが最終ゴールになります。

スライド5

体制については役割を明確にします。ガバナンス体制も問題になることから、取締役が参加することが望ましいと考えます。

スライド6
スケジュールは日付を記載するだけでは全体でイメージの共有ができないため、ガントチャートを引いて整理します。

スライド7
進め方のルールを決めます。コミュニケーションの取り方を明確にきめることが必須であり、議論が流れないように(チャットで流れないように)MTGを設定し、毎回議事録を作成することが望ましいです。

 

本記事に関連する【弁護士監修のお役立ち資料】ダウンロードはこちら

乗合代理店のための保険業法改正対応の手引き

企業内代理店のための保険業法改正対応の手引き

兼業代理店のための保険業法改正対応の手引き

保険会社のための保険業法改正対応の手引き

本コラムの計画書サンプルは、こちらのダウンロード資料に付属するチェックリストとともに活用することによって、今回の法改正の背景の共有と論点の洗い出しも行うことができるようになっております。ぜひ資料も合わせてご参照ください。

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社hokan 法務・コンプライアンス室長/弁護士
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。
都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。
平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。
これまでに「金融機関の法務対策6000講(共著)」「ペット保険の法的課題(慶應大学保険学会)」「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情2024.9.17)」を執筆し、日経新聞(2024.9.4朝刊金融経済面)にもコメントが掲載。
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