コラム
【速報】国会に提出された保険業法改正案の概要

1 国会への法律案の提出
2025年3月7日、保険業法の一部を改正する法律案が閣議決定され、国会に提出されました。
https://www.fsa.go.jp/common/diet/217/01/gaiyou.pdf
本改正案は、有識者会議、金融審議会WGを踏まえ、損害保険代理店に対する体制整備義務の強化、保険会社に対する態勢整備義務の強化、保険会社等から保険契約者等への過度な便宜供与の禁止を含んでいます。
保険業法改正案の提案理由
保険業に対する信頼性の確保及びその健全な発展を図るため、特定大規模乗合損害保険代理店の業務運営に関する体制整備義務を創設するほか、保険会社等による顧客の利益の保護のための体制整備義務の範囲を兼業特定保険募集人が行う取引に拡大し、保険契約の締結等に関する禁止行為に物品の購入、役務の提供その他の取引であって取引上の社会通念に照らし相当であると認められないものの提供等を追加する等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
https://www.fsa.go.jp/common/diet/217/01/houritsuanriyuu.pdf
2 損害保険代理店・保険会社に対する体制整備義務の強化
https://www.fsa.go.jp/common/diet/217/01/setsumei.pdf
代理店への体制整備義務、保険会社の体制整備義務について、保険業法294条の4、保険業法第100の2の2、第193条の2および271条の21の3関係が改正されます。
https://www.fsa.go.jp/common/diet/217/01/youkou.pdf
3 保険契約の締結等に関する禁止行為の範囲の拡大
https://www.fsa.go.jp/common/diet/217/01/setsumei.pdf
https://www.fsa.go.jp/common/diet/217/01/youkou.pdf
保険募集における禁止行為を定めた保険業法300条が改正され、300条1項5号の特別利益の提供の禁止に関する条文が修正されます。これまで「その他特別の利益の提供」に当たるかについて監督指針(監督指針Ⅱ―4-2-2-(8)①)にある程度の考え方は示されていましたが、保険業法上の明文上であらためて禁止の対象となるものを列挙したものと考えられます。
この点については、たしかに、保険契約者等からの「物品の購入」それ自体が特別の利益の提供に該当する可能性を検討するよう明示することは、今回問題になった「過度の便宜供与」におけるニギリやノルマを禁止するために、非常に効果的と解されます。
4 附則
この附則は今回の保険業法改正の特徴とも思われます。
https://www.fsa.go.jp/common/diet/217/01/youkou.pdf
公布から施行まで1年以内とされたことにより、2026年4月~6月頃の施行ということが予想されます。
さらに、見直しについて言及されています。
この点について、法律案と同日に公表された保険業に対する信頼性の確保及びその健全な発展を図るための措置(令和7年3月7日公表)に以下の記載があります。
https://www.fsa.go.jp/seisaku/r6ria/20250307_03.pdf
施行後5年を目途として見直しが図られることとなり、見直しのスパンまで公表されていることは今回の改正の実効性を金融庁として集中的に見ていくという意思の表れだと感じます。
執筆者プロフィール

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株式会社hokan 法務・コンプライアンス室長/弁護士
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。
都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。
平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。
これまでに「金融機関の法務対策6000講(共著)」「ペット保険の法的課題(慶應大学保険学会)」「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情2024.9.17)」を執筆し、日経新聞(2024.9.4朝刊金融経済面)にもコメントが掲載。
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