コラム

2025年2月21日
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【保険業法改正の羅針盤⑥】比較推奨販売(特にいわゆるハ方式)の現在地①

1.はじめに

比較推奨販売は、消費者が自身に最適な保険商品を選択できるようにするための販売手法です。従来、保険代理店は特定の保険会社の商品を中心に販売することが一般的であったが、近年の消費者保護の強化に伴い、比較推奨販売の重要性が高まっています。本コラムでは、特に比較推奨販売(特にいわゆるハ方式)の課題について解説します。

2.比較推奨販売の意義と法的枠組み

比較推奨販売とは、乗合代理店において、複数の保険商品の特徴や価格等を比較し、消費者に適した保険を提案する情報提供のことを言います。これは、保険業法における「適合性の原則」や「説明義務」と関連し、保険募集人には意向把握義務とともに、適切な情報提供が求められるものです。

金融審議会WGにおいても「現行の保険業法令上、保険会社、保険募集人及び保険仲立人には、保険契約の締結に際し、顧客に保険契約の内容その他保険契約者等に参考となるべき情報を提供する義務が課されている。その際、乗合代理店に対しては、複数の保険商品を比較する、又は特定の保険商品を推奨して販売する(以下「比較推奨販売」という。)場合においては、その販売方法に応じた説明を行うことが義務付けられている。」(WG報告書7ページ)とされています。

この比較推奨販売は、前回の保険業法改正で下図の通り整理されていました。

https://www.yuseimineika.go.jp/iinkai/dai151/siryou151-2-3.pdf

さらに、改正金サ法により、保険募集人を含む全ての金融サービス提供事業者に対し、「顧客等の最善の利益を勘案して誠実かつ公正に業務を遂行する義務」が明記されたこともあり、乗合代理店においても、それに沿った適切な比較推奨販売を行うことが、より法的な義務として重要性を帯びるようになりました(なお、これまでも、法律上の義務ではなくとも、顧客本位の業務運営の原則においては言及されていました。)。今回の保険業法改正においては、比較推奨販売の「適正化」が大きな論点となっています。

WG第4回事務局資料
https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo_wg/siryou/20241115/2.pdf

 

「【保険業法改正の羅針盤⑥】比較推奨販売(特にいわゆるハ方式)の現在地②」へ続く

 

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社hokan 法務・コンプライアンス室長/弁護士
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。
都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。
平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。
これまでに「金融機関の法務対策6000講(共著)」「ペット保険の法的課題(慶應大学保険学会)」「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情2024.9.17)」を執筆し、日経新聞(2024.9.4朝刊金融経済面)にもコメントが掲載。
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