コラム

2025年12月24日
Twitter Facebook LINE

【速報④】(特定大規模乗合保険募集人に対する体制整備義務の強化(保険募集の業務関連))令和7年保険業法改正に係る内閣府令(案)等に対するパブリックコメントの実施についてが公表されました

速報④は

(1)特定大規模乗合保険募集人(注)に対する体制整備義務の強化(保険募集の業務関連)

・特定大規模乗合保険募集人の要件
・営業所又は事務所ごとの法令等遵守責任者の設置
・本店又は主たる事務所への法令等遵守責任者を指揮する者(統括責任者)の設置
・苦情処理体制の整備

のつづきです。

  • 営業所又は事務所ごとの法令等遵守責任者の設置
  • 本店又は主たる事務所への法令等遵守責任者を指揮する者(統括責任者)の設置
  • 苦情処理体制の整備

なお、生保の条文は損保の条文を一つにまとめた形になっている(第215条の4)ことから、今回は条文ごとに分けている特定大規模乗合損害保険代理店をメインに確認します。

1 法令等遵守責任者

(特定大規模乗合損害保険代理店における法令等遵守責任者の設置)

保険業法施行規則 第二百二十七条の十七

特定大規模乗合損害保険代理店は、法令等遵守責任者(法第二百九十四条の四第一号に規定する法令等遵守責任者をいう。以下この条において同じ。)を、次の各号に掲げるところにより設置しなければならない。

一 新たに特定大規模乗合損害保険代理店に該当することとなった日から起算して六月以内に法令等遵守責任者を設置すること。

二 法令等遵守責任者として設置した者が欠けるに至ったときは、当該事由が発生した日から起算して三月以内に新たに法令等遵守責任者を設置すること。

三 法令等遵守責任者は、その業務を的確に遂行するに足りる能力を有する者であること。

四 法令等遵守責任者は、他の営業所又は事務所の法令等遵守責任者でないこと。ただし、法令等遵守責任者としての業務の実施に支障を及ぼすおそれがない場合は、この限りでない。

www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217/01.pdf

法令等遵守責任者についての定めです。ほかの営業所、事務所との兼務の可否については、「法令等遵守責任者は、他の営業所又は事務所の法令等遵守責任者でないこと。ただし、法令等遵守責任者としての業務の実施に支障を及ぼすおそれがない場合は、この限りでない。」とされました。なお、下記の監督指針案によると、「例えば、法令等遵守責任者が担当する営業所又は事務所の数や規模、当該営業所又は事務所における契約件数、当該営業所又は事務所に所属する保険募集人の数、営業所又は事務所間の地理的近接性等の要素も踏まえつつ、法令等遵守責任者としての業務が実効的に実施可能であり、役割や職責が十分に果たされているかに照らして判断する。」として実態で判断されます。

Ⅱ-4-2-15-3 特定大規模乗合保険募集人の保険募集に係る法令等遵守責任者等

(1) 法令等遵守責任者

特定大規模乗合保険募集人は、保険募集の業務を行う営業所又は事務所ごとに法令等遵守責任者を設置しているか(注)。 なお、法令等遵守責任者には、保険募集の業務を行う役員又は使用人に対し、これらの者が法令等を遵守して保険募集の業務を実施するため必要な助言又は指導を行うことができるように、法令や保険契約に関する知識等を有する人材が選任されているか。 また、法令等遵守責任者は、上記の助言又は指導を的確に実施するため、統括責任者による指揮の下、自らが担当する営業所又は事務所の保険募集の実態(保険会社等からの便宜供与の状況等を含む。)を把握し、その適切性について定期的な検証(便宜供与による比較推奨販売への影響の有無に係る確認・検証等を含む。)を行い、その結果を統括責任者に報告するとともに、不適切と認められる場合には、改善に向けて適切な措置を講じているか。 さらに、法令等遵守責任者は、自らが担当する営業所又は事務所の法令等遵守の状況等について、保険会社等又は当局の求めに応じて、適切かつ十分な説明を行っているか。

(注) 規則第215条の4第1号ニ及び規則第227条の17第1項第4号にいう「法令等遵守責任者としての業務の実施に支障を及ぼすおそれがない場合」に該当するか否かは、例えば、法令等遵守責任者が担当する営業所又は事務所の数や規模、当該営業所又は事務所における契約件数、当該営業所又は事務所に所属する保険募集人の数、営業所又は事務所間の地理的近接性等の要素も踏まえつつ、法令等遵守責任者としての業務が実効的に実施可能であり、役割や職責が十分に果たされているかに照らして判断する。 

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217-2/01.pdf

法令等遵守責任者の具体的な業務内容が定められています。以下のように特に便宜供与と比較推奨販売の関係については、法令等遵守責任者が把握し、確認、検証をすることが求められています。

  • 法令等遵守責任者は、上記の助言又は指導を的確に実施するため、統括責任者による指揮の下、
    • 自らが担当する営業所又は事務所の保険募集の実態(保険会社等からの便宜供与の状況等を含む。)を把握し、
    • その適切性について定期的な検証(便宜供与による比較推奨販売への影響の有無に係る確認・検証等を含む。)を行い、
    • その結果を統括責任者に報告するとともに、不適切と認められる場合には、改善に向けて適切な措置を講じているか。
  • 法令等遵守責任者は、自らが担当する営業所又は事務所の法令等遵守の状況等について、保険会社等又は当局の求めに応じて、適切かつ十分な説明を行っているか。

2 統括責任者

(特定大規模乗合損害保険代理店における統括責任者の設置)

保険業法施行規則 第二百二十七条の十八

特定大規模乗合損害保険代理店は統括責任者(法第二百九十四条の四第二号の助言又は指導を行う者をいう。以下この条において同じ。)を、次の各号に掲げるところにより設置しなければならない。

一 新たに特定大規模乗合損害保険代理店に該当することとなった日から起算して六月以内に統括責任者を設置すること。

二 統括責任者として設置した者が欠けるに至ったときは、当該事由が発生した日から起算して三月以内に新たに統括責任者を設置すること。

三 統括責任者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する者であること。

イ 統括責任者としての業務を的確に遂行するに足りる能力を有すること。

ロ 統括責任者としての業務を適切に実施することができる管理的又は監督的地位にあること。

ハ 保険募集に現に従事していないこと。

ニ 第二百十五条の四第一項第一号又は前条に規定する法令等遵守責任者でないこと

www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217/01.pdf

重要なのは、3号です。統括任者として、保険募集に現に従事していないこと、また、法令等遵守責任者との兼務はできないこととされました。なお、監督指針案では「その職務の性質を踏まえれば、これに加えてコンプライアンス部門や監査部門での業務に従事した経験を有することが望ましい。」とされました。

Ⅱ-4-2-15-3 特定大規模乗合保険募集人の保険募集に係る法令等遵守責任者等

(2) 統括責任者

特定大規模乗合保険募集人は、営業部門からの独立性を確保した上で統括責任者を設置するとともに、統括責任者がその業務を適切に遂行できるよう、必要な人員の配置を含めた体制整備を行っているか。 なお、統括責任者には、法令等遵守責任者を指揮するとともに、役員又は使用人に対し、これらの者が法令等を遵守して保険募集の業務を実施するため必要な助言又は指導を行うことができるように、法令や保険契約に関する知識等を有し、業務を適切に実施することができる管理的又は監督的地位にある人材が選任されているか(注)。 また、統括責任者は、上記の助言又は指導を的確に実施するため、法令等遵守責任者等を通じて、自社の保険募集の実態(保険会社等からの便宜供与の状況等を含む。)や法令等遵守責任者の業務の内容を把握し、その適切性について定期的な検証(便宜供与による自社の比較推奨販売への影響の有無に係る確認・検証等を含む。)を行うとともに、不適切と認められる場合には、改善に向けて適切な措置を講じているか。 さらに、統括責任者は、自社の法令等遵守の状況等について、取締役会等の経営陣へ定期的に報告しているか。また、保険会社等又は当局の求めに応じて、適切かつ十分な説明を行っているか。

(注) 規則第215条の4第1項第2号ハ及び第227条の18第1項第3号においては、保険募集に現に従事している者や特定大規模乗合保険募集人の法令等遵守責任者ではないことが求められているが、その職務の性質を踏まえれば、これに加えてコンプライアンス部門や監査部門での業務に従事した経験を有することが望ましい。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217-2/01.pdf

統括責任者が、法令等遵守責任者と大きく異なるのは「営業部門からの独立性を確保した上で統括責任者を設置するとともに、統括責任者がその業務を適切に遂行できるよう、必要な人員の配置を含めた体制整備を行っているか」とされ、営業部門からの独立と組織としての人員配備まで求められている点、「統括責任者は、自社の法令等遵守の状況等について、取締役会等の経営陣へ定期的に報告しているか。」とされている点です。経営陣への啓蒙が役割として強く期待されています。

3 苦情の処理に関する措置

(特定大規模乗合損害保険代理店における苦情の処理に関する措置)

保険業法施行規則 第二百二十七条の十九

法第二百九十四条の四第三号及び第四号ロに規定する内閣府令で定める措置は、次に掲げるものとする。

一 苦情を受け付けたときは、遅滞なく、当該苦情に係る事項の原因を究明すること。

二 前号の規定による原因の究明の結果に基づき、改善が必要な場合には、所要の措置を講ずること。

三 苦情を申し立てた者から求めがあった場合には、第一号の規定による原因の究明の結果及び前号の規定により講じた措置について説明を行うこと。

 四 苦情を受け付けるための窓口を設置し、その連絡先を公表すること。

2 特定大規模乗合損害保険代理店は、前項各号の規定により苦情を処理したときは、次に掲げる事項を記載した記録を作成し、その作成の日から五年間保存しなければならない。

一 苦情を申し立てた者の氏名及び連絡先(氏名又は連絡先が明らかでない場合は、その旨)

二 苦情を受け付けた日時及び場所並びに苦情を受け付けた者の氏名

三 苦情の内容

四 苦情に係る事項の原因の究明のための調査の内容及び結果

五 苦情の受付から申し立てた者への説明に至るまでのやり取りの経緯

六 前項第二号の規定により講じた措置の内容

七 前項第三号の規定により苦情を申し立てた者に説明したときは、当該者に説明した内容及び日時

3 特定大規模乗合損害保険代理店は、前二項の措置に関する社内規則等(社内規則その他これに準ずるものをいう。)を整備しなければならない。

4 第一項及び前項の規定にかかわらず、第一項及び前項の措置にあっては、新たに特定大規模乗合損害保険代理店に該当することとなった日から起算して六月間は、当該措置を講じなくてもよい。

www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20251217/01.pdf

苦情処理についての態勢整備が厳格に求められます。施行規則レベルですので、態勢整備違反があると大きな問題となります。

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長

2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
Twitter Facebook LINE
1分でわかる
hokan®︎の資料はこちら!

コラム一覧