コラム

2025年10月30日
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『補償されます』その一言が招いた悪夢。 私の同僚を救った”たった一つ”の証拠とは。

1. お客様の『できますよね?』に、あなたは100%の自信を持って答えられますか?

「こういった事故の場合は、補償されますよね?」
お客様からのこの一言に、もしあなたの隣の席の同僚が「はい、大丈夫です」と即答したとして、その背中を安心して見ていられるでしょうか。

これは、私の同僚であったAが実際に経験した、悪夢のような実話です。すべての保険募集人が日常的に直面する「言った言わない」のリスクがいかに恐ろしいか、そして、その恐怖から私たち自身をどう守るべきかを、彼の体験は生々しく物語っています。

2. 発覚した致命的な契約ミス、信頼が一瞬で崩れ落ちた日

150万円超の賠償事故、しかし保険は「対象外」

Aが担当していたのは、4年来のお付き合いがある倉庫業のお客様でした。もともとは懇意にしている生保営業マンからの紹介で、損害保険の分野で信頼を勝ち取ってきた大切なお客様だったといいます。

悪夢の始まりは、決算前の火災保険の更新面談。お客様がふと口にした質問でした。 「うちの倉庫で使うクレーン、万が一、操作ミスで建物を壊してしまった場合。これって、ちゃんと補償されますよね?」

対面での和やかな打ち合わせの中、Aは特に深く確認することなく、こう答えました。 「はい、もちろん補償されます」

彼の頭の中では、その補償(借家人賠償責任保険)は当然付帯されているはずでした。4年前の契約時からずっと続いているものだと、完全に思い込んでいたのです。しかし、そこには致命的な落とし穴がありました。4年前に保険商品を切り替えた際、「借家人賠償で破損も補償」するために提案途中でわざわざプランを急遽変更したのだから、当然その補償は付帯している。その「思い込み」こそが悲劇を招きます。

そして半年後、Aの携帯が鳴ります。 「クレーンをぶつけて、建物を壊してしまったんだが」

Aは、あの日の面談でのやり取りを瞬時に、そして鮮明に思い出したそうです。 「借家人賠償ですね!事故受付をいたします。」 そして情報を確認した結果、特約が付いていないことに気付きました。 「終わった…」。血の気が引いていくのが自分でも分かった、と彼は語ってくれました。

すぐに社長へ報告し、保険会社へ確認を入れますが、結果は非情にも「対象外」。損害額は150万円超。しかし、保険金は1円も支払われないという絶望的な事実が突きつけられました。

お客様は激怒、絶体絶命の状況で考えたこと

Aは震える手で、お客様に報告の電話を入れたといいます。
「誠に申し訳ありません。確認したところ、今回の事故は補償の対象外でして…」

電話口から返ってきたのは、これまで聞いたこともないような激しい怒号でした。
「『補償される』って言ったじゃないか!どうしてくれるんだ!」

築き上げてきた信頼が、ガラガラと音を立てて崩れ落ちる瞬間でした。
幸いだったのは、A自身も、そしてその面談に同席していたアシスタントも、お客様との会話をはっきりと記憶していたことです。「補償されると我々が伝えたのは間違いない。これは100%、こちらのミスだ」。責任の所在は明確でした。しかし、どうすればこの絶体絶命の状況を打開できるというのでしょうか。
参考:https://www.nihondaikyo.or.jp/agency04-02

3. 事態を好転させた「証跡」の力、なぜ保険会社は異例の対応に応じたのか

決め手となった設計書の控えと、当時のメモ

万事休すかと思われたその時、Aを窮地から救ったのは、彼が「当たり前」のように続けていた業務習慣でした。それは、当時の面談で使用した提案書の控え(PDF)と、彼自身が書き留めていた手書きのメモです。そのメモには、お客様からのヒアリング内容として「借家人賠償、必要」と、走り書きではあるものの、議論の事実が明確に記録されていました。

彼は普段から、お客様とのやり取りに関する資料をすべて保管していました。特別なことではなく、ごく当たり前の業務として。しかし、この「当たり前」が、彼のキャリアを救う命綱となったのです。

「遡及訂正」を可能にした、記録の客観性

Aと会社は、これらの「証跡」を手に、保険会社との交渉に臨みました。

まず、代理店としての責任を100%認め、謝罪した上で、保管していた提案書の履歴とメモを提示。「我々のミスで特約の付け漏れがあったが、お客様からは確かに補償を付けたいというご要望があり、特定のプランを再作成した際に、借家人賠償が抜け落ちていたことが確認できる証跡が残っている」という客観的な事実を証明したのです。

通常、事故発生後の「遡及訂正」など、認められるはずがありません。しかし、保険会社は、

  • 明確な証跡(提案書の履歴とメモ)が残っていること
  • ミスに至った経緯に合理的な理由があること
  • 代理店として具体的な再発防止策を提示したこと
  • そして、その代理店が日頃から信頼に足る活動をしていること

これらを総合的に判断し、「契約の遡及訂受」という、極めて異例の対応を承認してくれました。

結果、保険金は満額認定され、無事にお客様へお支払いすることができました。Aは、崩れ落ちた信頼を、本当にギリギリのところで繋ぎ止めることができたのです。

もし、あの記録がなかったらどうなっていたか?

Aは言います。「もし、あのメモがなかったら…」と。想像するだけで、今でも背筋が凍るそうです。保険会社の承認はまず下りず、お客様と会社の板挟みになっていたでしょう。待っているのは、150万円の損害賠償、契約解除、紹介者の顔に泥を塗り、会社からの評価も失墜する…という最悪のシナリオでした。

4. この事例から学ぶ、募集人が自分自身を守るための唯一の方法

人の記憶は曖昧だからこそ「記録」が最強の盾になる

同期Aのこの事例が、私たち同僚に突きつけた教訓は、たった一つです。
証跡を残せ。それも、時系列で、抜け漏れなく

どれだけ優秀なAでさえ、ヒューマンエラーは起こしました。「付いているはずだ」という思い込み、確認漏れ。人の記憶は、本当に曖昧です。だからこそ、お客様とのやり取りを客観的な「記録」として残すことが、万が一の際に自分自身と会社、そしてお客様を守るための、唯一にして最強の盾となるのです。

5. 結論:個人のスキルから「仕組み」による防衛へ

あなたの「万一」に備える、新しい常識とは

この一件以来、私たちの会社では業務フローを抜本的に見直しました。

  • 同様のミスがないか全件洗い出し
  • ダブルチェック体制の構築
  • 抜け漏れが起きやすい特約に対し、専用の管理シートの作成と標準化

これらはすべて、Aのような一個人のスキルや記憶力に頼るのではなく、「仕組み」によってミスを防ぎ、活動履歴を体系的に管理するという発想への転換です。

Aはこうも言っていました。「あの時、もし『hokan』のように、すべての活動履歴が顧客情報に紐づいて自動で記録されるシステムがあったなら、もっと早く証拠を提示できたし、精神的な負担も全然違ったはずだ」と。彼の言葉は、個人の努力だけでは限界があるという事実を物語っています。

同期Aの話は、決して他人事ではありません。私たち募集人全員にとっての警鐘です。あなたの「万一」に備え、日々の活動履歴を管理する仕組みを構築すること。それが、未来の自分を救う最も賢明な投資であることは間違いありません 。

執筆者プロフィール

千束 仁士
福田 隼 (Jun Fukuda)
株式会社hokan カスタマーサクセス
自動車ディーラーや保険会社の直販営業、生損保+不動産の兼業代理店の立ち上げに従事。
保険募集人として13年間活動し、「お客様のお金周りのご相談をワンストップで解決する」ことを目指して兼業代理店の創業に携わる。
お客様からのご紹介で多方面からお声かけをいただくのは大変ありがたかったものの、顧客増加に伴い急増する業務負荷により「自分の思い描く理想のお客様対応」ができなくなってしまう業界・業態の在り方に疑問を感じ、業界変革のアプローチが出来る株式会社hokanへ入社。
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