コラム

2025年9月9日
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募集コンプライアンスガイド(2025年9月版)を読む

損保協会は、9月5日、募集コンプライアンスガイド2025年9月版(第17版)(https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2025/pdf/boshuguide_202509.pdf)を公表しました。

2025 年8 月に施行した「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正を受けて、2024 年 12 月に作成した「募集コンプライアンスガイド(第2 版)」の内容を統合し、「過度の便宜供与に係る体制整備」の項目を新設しました。さらに、関連法令の改正等を踏まえた所要の見直しを行い、構成等を全面的に刷新しました。

https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2025/qt6qln0000000fkk-att/250905_01.pdf

過度の便宜供与に係る体制整備として、監督指針をふまえて以下の通り加筆されています(123p)

過度の便宜供与の禁止に係る体制整備については、次の留意点が定められています。
ア.社内規則等の策定
代理店は、その規模や業務特性に応じ、過度の便宜供与に係る判断基準の社内規則等を策定することが求められます。
イ.適切な教育・管理・指導の実施
上記ア.で定めた社内規則等に沿った健全かつ適切な運営を確保するため、代理店は自店に所属する募集人に対し、保険会社等による便宜供与の要求および受入れの制限に関する適切な教育・管理・指導を行うことが必要です。
ウ.自社への影響の有無に係る確認・検証
顧客の適切な商品選択の機会を確保するために、代理店は、保険会社等からの便宜供与による自店の比較推奨販売への影響について、確認・検証を実施することが求められます。
エ.経営陣における評価・対応の検討
上記ウ.の確認・検証結果を踏まえ、代理店の経営陣には過度の便宜供与解消に向けた評価や対応の検討が必要になります。
オ.適切な解消措置の実施および改善に向けた態勢整備
自店の比較推奨販売への影響が生じていると認められる場合、代理店は、適切な解消措置の実施や改善に向けた態勢整備が求められます。

また、過度の便宜供与の適正化については、ガイドラインと事例集が公表されています。代理店は、これらを踏まえて(保険会社向けに書かれているので、代理店側に読み替えて)規定の作成などを行っていくことが求められます。

 

 

なお、このガイドラインにおける判断基準と、監督指針、パブリック・コメントにおける過度の便宜供与の考え方は、若干書きぶりが異なります。

時系列からして、監督指針改正案を踏まえて作成されたガイドラインですから、ガイドラインの方が監督指針の要件をより詳細にしたものと言えそうです。

また、事例集は今後事例を集めて更新されていく予定とのことで、常に更新されたものを手元に置いておくことが必要になるでしょう。

 

https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=1&n_m_code=123&ng=DGKKZO91193840Y5A900C2EE9000

これに関連して、9月9日、生保協会もガイドラインを作成する旨の報道がなされました。
パブリックコメント№57では、速やかな体制整備が8月28日から求められています。

https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250828/01.pdf

各保険会社はこれらのガイドラインも参照して、「債務不履行責任や顧客保護上の問題が生じるなどやむを得ない事情がある場合」であれば、解消に向けて可能な限り適切な対応を進め、この時点で対応が不十分な場合には、速やかに体制整備を進めることが必要になるでしょう。

 

執筆者プロフィール

中村 譲

中村 譲
株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長

2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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