コラム
【速報⑪(パブコメ№386~468)】令和7年8月28日公表 「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について を読む

13 Ⅴ 保険仲立人関係(№386~468)
Ⅴ 保険仲立人関係
Ⅴ-4 他の募集人等との関係 Ⅴ-4-4 顧客との関係(1) 再保険契約以外の保険契約の締結の媒介に係る手数料等の請求方法
① 企業分野の保険契約の締結の媒介に係る手数料等の請求
保険仲立人は、企業分野の保険契約の締結の媒介に関する手数料等について、顧客や引受保険会社等に請求できるが、請求を行うにあたっては、以下のいずれの事項も遵守しているか。なお、保険仲立人が、顧客のみに対して手数料等を請求する場合にあたっては、例えば、保険契約の媒介に係るコストを大幅に下回る手数料等を設定するなど、不当な競争を招くおそれが生じないよう、留意する必要がある。
(注) 「企業分野の保険契約」とは、Ⅴ-4-4(1)において、保険契約者及び被保険者が事業者の保険契約を指す。ただし、事業活動に起因して生じた損害をてん補する第二分野の保険においては、被保険者が当該保険契約者の役職員である場合を含む。なお、当面の間、自動車損害賠償保障法(昭和三十年法律第九十七号)及び地震保険に関する法律(昭和四十一年法律第七十三号)に基づく保険契約を除く。ア. 保険会社等にのみ手数料等を請求する場合
(ア) 保険仲立人は、顧客の求めに応じて、顧客に対して、当該保険契約の引受保険会社等から受領する手数料等の金額又は保険料に占める割合を開示しているか。
(イ) 保険仲立人は、顧客に対して、当該保険仲立人と保険会社等又は保険持株会社との間で人的・資本的関係又は利害関係がある場合には、その旨をあらかじめ開示しているか。イ. 顧客及び保険会社等の双方に手数料等を請求する場合
保険仲立人は、ア.(ア)及び(イ)に加えて、顧客が保険会社に対して支払う保険料を適切な水準にする観点から、以下の事項を遵守しているか。
(ア) 媒介業務に係る契約の締結前に、顧客に対し、顧客及び保険会社等の双方に手数料等を請求することを説明しているか。
(イ) 保険会社において保険料を決定する前に、保険会社等に対しても、適切な方法により顧客から受領する手数料等の金額を開示しているか。
② 企業分野以外の保険契約の締結の媒介に係る手数料等の請求個人顧客との間には情報の非対称性等から生じる交渉力の優位性が総じて残りやすいことを踏まえ、当面の間、上記①の手数料等の請求方法については、企業分野の保険契約のみを対象とし、これ以外の保険契約については、保険仲立人は、手数料等を、保険会社等に請求するものとする。(2) 手数料等以外に受領するサービスの対価
保険仲立人は、上記手数料等とは別に顧客のために行ったサービスの対価については、顧客がその支払いを事前に承諾している場合には、これを受け取ることができるが、この場合、保険仲立人が、当該サービスの提供前に書面その他適切な方法によりその明細を顧客に開示しているか。
- 保険仲立人は、保険契約の媒介に関して、顧客にのみ手数料等を請求することも可能。なお、顧客にのみ請求する場合については、保険業法等の関連法令等を遵守することに加え、Ⅴ-4-4(1)①にもあるとおり、例えば、保険契約の媒介に係るコストを大幅に下回る手数料等を設定するなど、不当な競争を招くおそれが生じないよう留意する必要がある(№392)
- Ⅴ-4-4(1)に関しては、保険契約の媒介に関連する手数料等を受領した場合を想定しており、同(2)に関しては、その他保険契約の媒介に関連しないリスクコンサルティングサ-ビス等を想定している(№395)が、保険契約の締結の媒介とリスクマネジメント関連のサ-ビスが一体化している場合には、Ⅴ-4-4(1)における手数料等として取扱う(№464)
- 代理店手数料に関しては、例えば、代理店手数料ポイントに基づき、保険代理店が提供するサ-ビスの質や量に応じて調整して決定されている(№396)
- 保険契約の媒介に係るコストを大幅に下回る手数料等を設定するなどの、「大幅に下回る」か否かや、「保険契約の媒介に係るコスト」については、個別具体的な事案に即して実質的に判断されるが、例えば、保険仲立人が顧客に請求する手数料等が、保険契約者間の公平性も踏まえ、保険契約の媒介に係るコストと比較して、社会通念上妥当と認められる範囲を超える場合に該当する(№403)
- 保険会社がその負担する媒介手数料の多寡に応じた付加保険料設定を行うことに関して、料率三原則(保険業法第 5 条第1 項第 4 号)違反や、特別利益の提供(保険業法第 300 条第 1 項第 5 号)に該当するかどうかは、個別具体的に実態に即して実質的に判断されるべきものと考えます。その上で、例えば、合理的な根拠や客観的な基準に基づかずに割増引きを行い、付加保険料に差を設けることは、料率三原則に適合していないおそれや、特別利益の提供に当たるおそれがある(№410)
- 「企業分野の保険契約」とは、Ⅴ-4-4(1)において、保険契約者及び被保険者が事業者の保険契約を指す。ただし、事業活動に起因して生じた損害をてん補する第二分野の保険においては、被保険者が当該保険契約者の役職員である場合を含む。」。なお、被保険者が事業者だけでなく、その役職員である保険契約も含まれており、企業分野の損害保険の大部分を対象としていることから、今般の定義であっても、保険仲立人の活用促進に資する(№431)また、「事業者」には個人事業主を含む(№433)
- 保険仲立人は、顧客が保険会社に対して支払う保険料水準を適切にする観点から、保険料を決定する前に、保険会社に対して、手数料等の正確な金額を開示することが必要であり、保険料を決定する前に手数料等の正確な金額を開示することが困難な場合には、保険会社と協議の上、例えば、具体的な手数料等の計算方式を伝える必要がある(№455)
- 再保険契約の締結の媒介に関しては、外国の再保険会社との契約も想定されるところ、その商慣習は各国によって異なるものと考えられるため、再保険契約の手数料等の請求方法については、特段の規制を設けない。したがって、再保険契約の締結の媒介に係る手数料等の請求方法については、Ⅴ-4-4(1)の規定は適用されない(№463)
№422
Q.保険仲立人が顧客に請求する媒介手数料は、保険料には該当しないという理解でよいか。消費税の課税有無や、保険料債権に関する短期消滅時効(保険法 95 条 2 項)の適用有無などに影響があると考えられるため、確認したい。また、当該事項は顧客にとって重要と考えられるため、保険仲立人から顧客への説明を要する事項とすることをご検討いただきたい。
A.貴見のとおり、保険料には該当しないと考えます。
なお、保険仲立人は、顧客が保険仲立人を選択する際の判断に影響を与える情報に関しては、顧客に対して十分な説明を行うことが求められると考えます。
媒介手数料は保険料に該当しないことが解釈上の疑義が生じないように回答されたものと思われます。
№428
Q.Ⅴ-4-4 (1)①(注)では、企業契約の保険契約について「第二分野においては、自動車損害賠償保障法および地震保険に関する法律に基づく保険契約を除く」としており、これは、第二分野(損害保険)における特定の保険契約を除外する趣旨であるため、第一分野(生命保険)や第三分野(医療・介護等)を除外している趣旨ではないと理解して良いか。
A.Ⅴ-4-4(1)①の(注)に記載のとおり、企業分野の保険契約は、保険契約者及び被保険者が事業者の保険契約を指し、これに該当する第一分野又は第三分野の保険契約があれば、除外されるものではないと考えます。
企業分野の保険契約の範囲について、第一分野(生命保険)や第三分野(医療・介護等)を除外している趣旨ではないことが確認がなされました。
№442
Q.Ⅴ-4-4(1)①ア(イ)に関して、開示すべき「人的・資本的関係又は利害関係」として、具体的にどのような関係を想定しているか。開示の要否に係る基準があればご教示いただきたい。
A.「人的・資本的関係又は利害関係」は、個別具体的な事案に即して実質的に判断されますが、例えば、以下のような場合には、顧客に対して開示することが必要と考えられます。
・保険会社又は保険持株会社との間で出向者が存在する場合
・保険会社又は保険持株会社から出資を受けている場合
・保険会社又は保険持株会社から広告出稿料等を受け取っているといったような取引関係がある場合
出資だけにとどまらず、広告出稿料を受け取っている場合も対象になるとされました
執筆者プロフィール

- 株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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