コラム
2025年7月保険モニタリングレポートを読む②

3 乗合代理店向け保険商品の販売手数料等に関するモニタリング
https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250704/01.pdf
ここでは、販売手数料フラット化の取り組みが高く評価されています。
金融機関代理店における外貨建一時払保険の販売について、初年度の販売手数料を減額し、契約者へのフォローアップ等を充実すべく次年度以降の手数料を増額する取組み(以下「販売手数料フラット化」)が、生命保険会社及び代理店において 2025 年度から進展している。顧客本位の業務運営における顧客の最善利益を追求する観点から、各生命保険会社等においてこのような取組みが進展していくことが望ましい。
販売手数料フラット化の取り組みと併せて、契約初期費用や解約控除も併せて引下げることが考えられています。
これは、脚注118において「生命保険においては、初年度販売手数料やシステム開発費等の新契約費を、長期の保険契約期間にわたって平準的に回収する設計となっている。顧客の都合により短期(概ね 10 年以内)で解約する場合には、当該新契約費の未回収額の一部を解約返戻金から「解約控除」として回収する仕組みとなっている。」とその仕組みが説明されており、「顧客の最善利益の追求の観点から、既に契約初期費用や解約控除を引下げた社やその引下げを決定している社が確認された一方で、保険商品改定やパンフレット改定に伴うコスト等に鑑み、その引下げについては今後の検討課題としている社が見受けられた。」(本文57p)とあります。
ここで重要なのは、上記は金融機関代理店の話であり、一般乗合代理店については別途検討がなされているということです。
顧客本位の業務運営の観点から、前述の金融機関代理店向けの初年度販売手数料引下げと同時に一般乗合代理店(金融機関代理店ではない保険代理店を指す。)向けの初年度販売手数料も引き下げる社も確認された。一方で、金融機関代理店と一般乗合代理店とでは手数料構造が異なるとの理由や、初年度販売手数料引下げは金融機関代理店に限定された取組みであり一般乗合代理店は販売チャネルが異なるとの理由から、一般乗合代理店については初年度販売手数料を据え置いている社が見受けられた。2025 事務年度、顧客本位の業務運営の観点から一般乗合代理店における販売手数料フラット化の取組みについて、引き続きモニタリングを実施していく。
さらに、一般乗合代理店においては、外貨建一時払保険以外の様々な保険商品が販売されている。前述の提言に基づき「代理店手数料と保険会社の収益の関連性」や「代理店手数料と比較推奨販売の関係性」といった点について、モニタリングを検討していく。
今後のモニタリングの対象として、「代理店手数料と保険会社の収益の関連性」や「代理店手数料と比較推奨販売の関係性」が明示されていますので、このモニタリング結果は別の機会に公表されるものと解されます。
4 保険業界の信頼の回復と健全な発展に向けた対応
https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250704/01.pdf
一連の不適切事案への対応がなされました。この概要でおおむね本文のポイントがまとめられていると感じます。
そして、これらへの対応を踏まえた2025 事務年度に向けて、保険代理店に関するモニタリングの部分は大変重要です。
今般の法改正により、特に大規模な乗合損害保険代理店に対して、兼業業務の適切な実施に必要な体制整備が求められること等も見据え、保険代理店に対するモニタリングに責任を負う室長級のポストを新設するほか、担当部局の検査官を増員し、モニタリング体制強化を図ることとしている。これを踏まえ、保険代理店の態勢整備状況等を重点的にモニタリングし、必要に応じ適時適切に行政処分を含めた対応を講じていく。
また、今般の不適切事案では、営業優先の観点等から、保険会社による保険代理店管理が適切に機能しなかったという問題が認められたことを踏まえ、保険会社に対して、保険代理店への不適切な出向や便宜供与の見直しを求める監督指針改正案の公表を行ったところである。今後は、保険代理店の規模、特性を踏まえて適時適切にリスクを検知し対応を図るための管理態勢を構築しているかなど、保険代理店管理の実効性に着眼したモニタリングに取り組んでいく。
「保険代理店の規模、特性を踏まえて適時適切にリスクを検知し対応を図るための管理態勢を構築しているかなど、保険代理店管理の実効性に着眼したモニタリングに取り組んでいく。」とされた点は、中小規模の保険代理店に対するメッセージです。適時適切にリスクを検知し、対応を図ることということは、常に情報のアップデートが求められます。
今回の法改正は特定大規模乗合代理店に対する体制整備義務が脚光を浴びていますが、規模を問わず、保険代理店全体がいま注目を浴びているという意識が必要です。
執筆者プロフィール

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株式会社Hokanグループ 弁護士/パブリック・アフェアーズ室長
兼コンプライアンス室長
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情 2024.9.17)」、「実務担当者のための今日から始める保険業法改正対応」(保険毎日新聞 2025.5.15~7.3)等を執筆。
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