コラム

2025年3月6日
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2025年2月26日改定の業務品質評価基準ガイドラインの公表─公的保険制度からSNS管理までの新たな取り組み

1 2025年度業務品質評価基準の変更点

生保協会において、第 17 回 代理店業務品質検討ワーキング・グループの資料が公表され、2025年度の変更点が明らかになりました。2月26日に、業務品質評価基準ガイドラインも改訂されておりhttps://www.seiho.or.jp/quality/pdf/guideline.pdf)、保険業法改正を前に、特に新設された項目などについて整理してみたいと思います。

https://www.seiho.or.jp/quality/wg/pdf/17_6.pdf

 

2 公的保険制度に関する情報提供の強化

応用事項ではありますが、新たに「公的保険制度の説明」を重視する項目が設けられました。保険募集に際して、担当募集人以外が公的保険制度の情報提供状況を定期的にチェックする仕組みづくりが求められています。

① 公的保険制度に関する情報提供を踏まえた保険募集の実施状況について、担当募集人以外が定期的に検証・確認を行うルールが記載された規程・マニュアル等

② お客さまへ公的保険制度に関する情報提供を踏まえた保険募集を行っていることがわかる資料(お客さま対応を記録した書面等(システム管理の場合は画面コピーで可)、サンプル、直近1年以内のものを1件以上)

③ 検証・確認態勢がわかる資料(検証・確認結果(サンプル)、システム管理の場合はその画面コピー等)

https://www.seiho.or.jp/quality/pdf/guideline.pdf 32p)

これは2024年度保険モニタリングレポートにおいて、公的保険制度を踏まえた保険募集について「各保険募集人による説明状況について、事後的に確認を行っている保険代理店は約6割に留まっているところ、実効性を高める取組みを進めていく必要がある。」と言及された点を踏まえた事項と思われます。

(参照:【法律のプロが解説】インシュアテック企業のインハウスローヤーが読む保険モニタリングレポート① https://hkn.jp/column/insurtech-report1/

 

3 特定保険契約の適合性確認を全件記録

適合性確認の全件確認の項目については、達成条件について注目すべき改定がなされます。

https://www.seiho.or.jp/quality/wg/pdf/17_2.pdf

これまでは達成条件として、「(紙で記録の場合)特定保険契約を募集する場合、保険会社所定の適合性確認書の取付けが必須となっているため、それを使用していること。」となっていましたが、この点が削除されました。その理由として、「「適合性確認は、そのお客さまに対し特定保険契約をお勧めしてよいかどうかの判断根拠となるものであるため~」と記載があるとおり、具体的な提案前に実施することが求められている所謂“狭義の適合性原則”における実施状況を全件記録する態勢が求められているものと理解しているため。当該主旨より、業務品質評価基準ガイドラインの達成条件として記載されている「特定保険契約を募集する場合、保険会社所定の適合性確認書の取付けが必須となっているため、それを使用していること。」という一文は削除すべきと考える。(一般的に、保険会社が提出を求める適合性確認書は、提案完了後の申込手続き直前に取り付ける「最終確認書面」と位置付けられていると考えられるため)」(https://www.seiho.or.jp/quality/wg/pdf/17_2.pdf 4p)と非常に説得力のある理由が説明されており、保険募集手続きの時系列を踏まえて適切な募集手続きを確認するための改定と思われます。

 

4 高齢者募集ルールの高度化

高齢者対応をさらに充実させるため、親族等の同席や複数回の募集機会を「特定保険契約を販売する際には原則とする」ことが明文化されました。これにより、一度きりの説明で契約手続きまで進むことを防ぎ、理解度を確かめるステップを確保しようとしています。

https://www.seiho.or.jp/quality/wg/pdf/17_11.pdf

 

5 Webサイト・SNS情報発信の適正管理の新設

https://www.seiho.or.jp/quality/pdf/guideline.pdf 75p)

代理店独自のWebサイトやSNSで募集活動を行うケースが増えるなか、情報の正確性や更新状況を誰がチェックし、どう管理しているかが必須要件として追加されました。誤認を与える広告や、承認切れのリンクをそのまま掲載していると、募集上の不適切行為になりうることを改めて注意を促す内容になっています。とくに募集文書に関しては「代理店が自社にて管理すべき対象 Web サイト等(「対象 Web サイト等」) について、掲載情報の適正性を確保・維持するための確認・検証が行われる仕組み、その実践状況が分かる資料があること(メール等によるやり取り、チェックリスト・チェックシート、管理ツール・マニュアル等、確認・検証に際しての様式や仕組み問わない)。」(「業務品質評価基準ガイドライン」75p https://www.seiho.or.jp/quality/pdf/guideline.pdf)とされ、代理店における募集文書管理の体制構築、高度化が求められます。

執筆者プロフィール

中村 譲
中村 譲
株式会社hokan 法務・コンプライアンス室長/弁護士
2008年慶應義塾大学法科大学院卒業、2009年弁護士登録(東京弁護士会)。
都内法律事務所・損害保険会社・銀行を経て、株式会社hokanに入社。
平成26年保険業法改正時には、保険会社内で改正対応業務に従事した経験を持つ。
これまでに「金融機関の法務対策6000講(共著)」「ペット保険の法的課題(慶應大学保険学会)」「「誠実義務」が求める保険実務におけるDXの方向性(週刊金融財政事情2024.9.17)」を執筆し、日経新聞(2024.9.4朝刊金融経済面)にもコメントが掲載。
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